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試験を受けることになりました。

「そんな……魔石が……」


砕けた石を見て、シェスタが言う。


「す、すまん。高価なやつだったのか?」


「いや……魔石はそんな簡単に砕けないはずなのだけれど……」


「そ、そうだったのか」


「それじゃあそちらのお嬢さん、えっと、名前いいかしら?」


「エッシェルだよ」


「エッシェルさんにも置くわね」


シェスタが同じ石を出し、エッシェルの手の平の上に置く。


パキッ


再び石が砕ける。


「………………」


シェスタが砕けた魔石を眺め、沈黙する。


「もしかして貴方達、魔力値が2000以上あったりしないわよね……?魔力値が2000を上回る宮廷魔術師などは魔石が砕けると聞いたのだけれど」


「2000くらいなら俺たち二人とも超えてるぞ」


「そうよねー。超えてるわけがーー」


「ってえええええええええええええええええ!?!?!?」


シェスタが驚く。


「そんなに驚くことか?」


「驚くわよ!!!」


「そ、そうか。」


「ちなみにお二方は何属性が使えるのかしら?」


「私は火と地と闇だよー!」


シェスタの質問に、エッシェルが元気に答える。


「俺は……」


使える属性の数はどれくらいが普通なんだろうか。


俺はシェスタの手元の紙を見る。そこに書かれていた属性の欄は4つだった。


「えっと、火と水と風と地だ」


とりあえず上から4つ言っておけば無難だろう。


「………………」


シェスタが何故かなにも言わない。


「どうした?」


「どうしたじゃないですわよ!!普通属性って1つしか使えないわよ!?なんで貴方達そんなに使えるの!?!?」


シェスタが再び驚く。


くそっ、欄の数に騙された……


「流石に冗談よね?」


「本当だ。そっちこそ冗談なんじゃないのか?」


そう答えると、シェスタがしばらく間を置き、言う。


「分かったわ……」


「とりあえず、ちょうど明日からある実技試験で本当かどうか見極めるわ。本当はその試験は最低ランクのGランクからFランクに上がるための試験なのだけれど……いいかしら?」


シェスタが冷静さを取り戻し、言う。


やはりランクもあるのだな。まあ手っ取り早くFランクまで上がれるならいいだろう。


「ああ」


「分かった!」


「数日間かかる試験だからしっかり準備をしておいてくださいね」


「おう」


「はーい!」


そして俺たちは実技試験を受けることとなった。




「なんとか冒険者になれそうだね!」


冒険者ギルドを出た後、エッシェルが言う。


「ああ。石板が壊れたのは意外だったが、結果助かったな」


「ひやひやしたよー!」


「おっ、もう夕方かー」


俺はオレンジ色になった空を見上げ、言う。


「ほんとだー!今日は一日いろいろあったねー!」


「きっと明日だって……ん?」


俺は重要なことに気がつく。


「俺たちどこで泊まるんだ?」


「宿に行くんじゃないの?」


「エッシェル、お前お金もってるか?」


俺がエッシェルに聞くと、エッシェルが固まる。


「まさかタケル、お金もってない……?」


「ない。」


「うえええええええ!?!?」


街道の真ん中でエッシェルが叫び、周りの人の視線を一瞬集める。


「どうしたものか…」


俺が悩んでいると、頭にふと浮かんでくる。


ー錬金術師・錬金術ー


まさかこの魔法って……


俺は周りの屋台にあるお金を眺める。


「ちょっとこっち来い」


小声でエッシェルを路地裏に連れて行く。


「どうしたの?」


エッシェルが小声で言う。


「ちょっと見てみろ」


俺は街道に背を向け、人から見られないように左手の手の平を出す。


「錬金術、銀貨」


そう唱えると、手の平の上から十数枚の銀貨が手の平に向けて出て来た。


「ええええええ!?!?」


エッシェルが小声で叫ぶ。


「すっごいけど……これって悪いことだよね?」


エッシェルが言う。


「もうやらないから他の人には黙っててくれ……」


自分でやっといて何だか罪悪感がすごい。完全に犯罪だからな。

今日は仕方ないが、次からはもうこれは使わないようにしよう。




「いらっしゃいませにゃー!」


街の宿に入ると、猫耳の生えた少女が受付から出迎えてくれた。


町並みを歩く人もそうだったが、こういう種族も意外とこの世界には多く存在しているようだ。


料金は…


俺は受付の上の看板の料金表を見る。


「一泊500ピリカか。思ったよりかなり安いな」


「さっきまでの私たちじゃ全然泊まれなかったけどね!」


「もうその話はやめてくれ」


俺は受付カウンターまで歩いて行く。


「とりあえずこれで4泊頼む」


俺は銀貨を2枚懐から出し、料金を支払う。


「はーい!この宿は朝食がサービスににゃっていて、1階の机で食べれるにゃ!お部屋は204を使うといいにゃ!」


受付の猫耳娘が鍵を出す。


「その語尾って天然なのか……?」


何かのキャラクターのような語尾だな。


「私たちの種族はみんな自然とこうなっちゃうにゃ!なってない子は多分練習してるにゃ!」


天然だったのか。方言と同じ感覚なのだろう。


そして俺たちは部屋に行き、小さなテーブルのそばにある二つの椅子にそれぞれ腰をかけた。


「宿使えてよかったねー!」


エッシェルが椅子の上で全身の力を抜き、だらんとしたまま言う。


「ああ。街にきた初日から野宿は流石に嫌だからなー」


「ねえタケル、もう疲れたし寝ない?」


エッシェルが言う。


俺は窓の外を見る。すると周りはもう暗くなっていた。


「そうだな」


俺たちはそれぞれベッドにうつ伏せになった。


「あっ!」


エッシェルがいきなり起き上がる。


「そ、その!タケルはここからこっちに来ちゃダメだからね!!」


エッシェルが二つのベッドの間のちょうど真ん中のあたりに手で線を作る動作をする。


「ああ、もちろんだ」


「それじゃあおやすみー」


エッシェルがばさりと倒れる。


「お、おやすみ」


俺が返事した時には、エッシェルは既に寝ていた。


「いや寝るの早すぎだろ」


俺はベッドに再び横になり、目を閉じた。

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