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俺、キレました。(1)

「うぐっ……」


強い力で地面に押し付けられているリリアがうめき声を漏らす。


少女にこんな魔法を使うのは気がひけるが、俺も死にかけたわけだし仕方がない。


前にギルド長であるシェスタがあんなにすごいと言っていた古代魔法だから、かなり警戒して3回撃たせてから古代魔法で応戦したわけだがわざわざ死にかけてまで全部使わせる必要は無かったかもしれないな。

重力操作とあの翼と光線なら上位職の攻撃魔法を連発するかもっと早く水分操作を使っていればもっとすんなり勝てたかもしれない。

まあしかし結果勝てたから良かった。


「それで、なんで俺を襲ったんだ?」


改めてリリアに問う。


「私たち魔人四天王は1000年前の戦いの生き残りで、魔王城に住んでる」


魔人四天王……ってことはあと3人いるのか……


「けど私たち魔人は生きるのに魔王城と魔王の魔力が必要で、今までは魔王の魔力を増幅させてたけど、もうそれが尽きてきた」

「だから私たちは寿命を伸ばすために人間、ヒューマンの負の力を利用しようとした」


あの襲撃もそのためだったのか。


「だからって人を襲っていいわけないだろ……」


「ゼノア以外は人を恨んでるわけじゃ無かったけど、それでもみんな昔いきなり攻められて散々な思いをしてきたから、人を襲うことにした」

「私たちが生きてないと魔族が滅んじゃうかもしれないから仕方ない」


いきなり攻められた?


「ちょっと待て、いきなり攻められたってどういうことだ」


「文字通り、いきなり戦争を仕掛けられた」


「俺はお前ら魔族側が最初に攻めたって聞いたぞ?」


「それは間違いなく情報操作」


「まじかよ」


何やらすごく深い闇を感じるぞ……


「でも、最近魔王が見つかって人を襲う必要がなくなったから魔王から魔力を引き出すことにした」


「やはりお前らの狙いは魔王か!!」


エッシェルを守っている俺の存在が邪魔だったから消しにきた、と。

しかし俺がいなくてもシエラとユティナとノールドがいるから多分大丈夫だとは思うが……


「でももう魔王は捕まえたみたい」


「何!?」


エッシェルが捕まっただと!?


「まあ私は貴方を倒すことはできなかったけど」

「もう話せることは全部話したから早くとどめを刺して」


リリアが仰向けになり、脱力する。


「別に俺はお前にとどめを刺す気なんてーー」


そう言った瞬間、リリアの胸元が紫色に激しく光る。


「ぎゃあああああああ!!!!」


水分操作の拘束すら無視し、リリアの体が謎の力によって浮き上がる。


よく見るとリリアの首からかかっているネックレスの先についている紫色の結晶が激しく光っていた。


「なんだ!?」


「そんな……アザゼル……なん……で……」


苦しみに悶えながらリリアが紫色の光に侵食されていく。


まずい。これは間違いなくまずい!


「大丈夫か!?」


「あああぁあぁ……」


声をかけるも、苦しみによってか返事がこない。


明らかに様子が変だ!これは助けなくては!

何かいい魔法はないのか!?


咄嗟に頭の中に語りかけ、魔法を思い浮かべようとする。


ー陰陽師・解呪 消費MP:5000ー


触れたら呪いの類を消せる魔法か!!


瞬時に頭の中に情報が浮かんできて、それを理解する。


ダンッ!!!


すぐに地面を蹴ってリリアの肩に触れる。


「解呪!!!」


パリィン!!!!!


呪文を唱えると、リリアを包んでいた紫色の光がガラスが割れたように砕け散った。

ネックレスに付いていた結晶も砕けていた。


「おぉっと」


宙から落ちたリリアを受け止める。


「大丈夫か!?」


「え!?あ、大丈夫……だけどなんで私を助けたの」


「そりゃいきなり目の前で女の子が苦しみ始めたら助けるだろ」


「女の子……」


「それで、今のはなんなんだ?」


「今のは私の仲間のアザゼルの魔法だけど、どうしてアザゼルが……」


仲間の魔法だと?一体何が目的なんだ。


俺はそっとリリアを立たせる。


「それより仲間の心配をした方がいい」


「ああ、言われなくても今すぐ行く!!」


ー音速剣士・超加速ー


150秒間速度が3倍。


ー歴戦の斧使い・速度強化ー


2分間速度が2倍。


ー時空戦士・時間圧縮ー


100秒間速度が5倍。


ー勇者・加速術ー


3分間速度が2.5倍。


ー疾風の双剣使い・疾風加速ー


2分間速度が4倍。


「収納空間」


俺は大量に出した泉の水を収納する。


そして、俺がシエラ達と別れた場所に向けて走り出そうとすると。


ぐいっ


強い力で袖を掴まれる。


「ん?」


振り向くと、リリアが俺の袖を掴んでいる。


「まずい!!!完全に忘れてたけどリリア敵だった!!!」


俺が戦闘態勢を取ろうとした瞬間。


「私も手伝う」


「…………」


「…………………え?」


数秒の沈黙の後、急な意味不明な発言により俺の思考回路はショートする。


一体何を言っているんだこの人は。


「私も手伝う」


聞き間違いではないようだ。


「一体なぜ???」


「私はもう一回貴方に殺されたようなものだし、さらに一回命を助けられた」

「だからもう仲間」


???????


魔人ってもしや特殊な価値観をお持ちなのだろうか。


「それに魔王が連れ去られた魔界には魔人がいないと入れない」


「な、なるほど、よく分からんが今は手伝ってくれ!!」


なぜ急に仲間になると言ったのか分からないが、エッシェルを助けるために必要ならなんだっていい!!


「行くぞ!!」


「待って!!」


「え!?」


急に止められ、俺の体が倒れそうになる。


「なんだ!?」


「タケルって呼んでいい?」


「今かよ!?!?」


急に意味のわからない質問が飛んできて再び俺の体が倒れそうになる。


「別にいいから行くぞ!!」


そう言うと、今度はおとなしく頷いた。


ダァン!!!!!


そして俺はすぐにリリアの腕を掴み、走り始めた。









そしてすぐに、シエラ達と別れた場所に着く。


そこは少し前に見た状態よりボロボロになっていた。


「一体何が……」


周りを注意深く見渡すと、ボロボロになって倒れているシエラとユティナ姫を見つける。

シエラは見た感じ大きな傷はないが、ユティナ姫は腹部から血が出ている。


「大丈夫か!?!?」


改めて仲間が傷ついているところを見て、俺の心がズキンと痛む。


話に聞くより実際に見るとすごく心に響くものがある。


前まで仲間がいなかった俺が初めて抱く痛みだ。


「神の恩恵!!」


以前ギルドで使った魔法ですぐにシエラ達を回復させる。


「ありがとう、ボクはなんとか大丈夫だよ」


「ええ、私も大丈夫よ」


ひとまず二人が無事で良かった。

が、エッシェルがいないせいで俺の心は全く落ち着かない。


「でも……エッシェルが……」


シエラが俯きながら言う。


「エッシェルが私たちをかばって連れ去られたのよ」

「ノールドが魔人だったの」


ユティナ姫が言う。


なんだと!?


「ボクたちは一人魔人を倒すことはできたけど、でもエッシェルの力には全然なれなかったんだ!」

「もっとボクに力があれば!!エッシェルを守れたかもしれないのに!!!」


シエラが半分泣きながら叫ぶ。


「大丈夫だシエラ!お前のせいじゃない!」


俺はシエラを抱きしめる。

シエラは何も悪くない。むしろシエラとユティナ姫が無事で良かった。




しかし、エッシェルはここにはいない。



ふと、エッシェルとの思い出が蘇ってくる。


エッシェルは俺が一番最初にこの世界で出会った人で。

一番俺を元気付けてくれた人で。

俺を孤独から抜け出させてくれた人で。

俺と冒険してくれた人で。

俺にこの世界のことを教えてくれた人で。

そして、俺の手を初めて取ってくれた人で。


もし俺がエッシェルと出会ってなかったら俺はシエラともユティナ姫とも出会っていないし、あの街を守ることすらできていないし、あまつさえ生きてさえいなかったかもしれない。


どんどん頭の中がエッシェルのことでいっぱいになる。


エッシェルとの思い出一つ一つがかけがえのないもので、まだ出会ってそんなに経っていないのにもう前の人生よりも価値のあるものになっている。


そして俺はすぐに気がついた。


前の世界では俺には生きる理由も明るい未来もなくて、そしてそのまま俺は死んだ。

前の世界は全く楽しくなかった。

けど今はもう違う。

俺はこの世界がすごく楽しいし、生きがいを感じている。

それは生きる理由が見つかったからだ。

そして、その生きる理由は前の世界には一人もいなかった、大切な人の存在なんだ。

俺の生きがいは、エッシェルそのものなんだ。



再びエッシェルのいない荒野を見渡すと、俺の心がさらにズキズキと痛んでくる。


『タケル!!』


『ねえねえ見て見て!!』


エッシェルとの思い出が頭の中に響く。


心の痛みに手足が震える。


だんだん息が荒くなってくる。





そして、俺の中でプツッと何かが切れた。





「あいつら……絶対許さねえ」


今まで抱いたことのない大きさの怒りに、すぐに隣にいたリリアが気がつく。


「タケル、怒りに身を任せちゃだめ……!」


「安心しろ、不思議とすごく頭は冴えてる」


理性は全く失っていない。しかし怒りの大きさは理性なんて砕けて無くなりそうなレベルの大きさだ。

理性を失うレベルの怒りをとっくに通り越して、理性すら怒りに震えているのだろうか。


「リリア、すぐにエッシェルの元まで送ってくれ」


「わかった」


そう言うと、空間に紫色の穴、まるで大きな収納空間の入り口みたいな穴が開く。

魔人はこんな簡単に魔界と出入りできるのか。


「ボクたちも行くよ」


「私も行くわ」


「じゃ、私も」


三人が俺についてこようとする。


「いや、お前らはここで待っていてくれ」


「え?」


シエラがきょとんとする。


「もう大切な人が傷つくのを見たくないんだ」


それに、一人なら遠慮なくアザゼルとかいう奴をぶっ潰せる。


「安心しろ、負けない」


負けてたまるものか。

今まではよくわかっていない古代魔法に警戒するだとか周りを驚かせないようにするだとか職業の多さを隠すとかで自重や出し惜しみをしてきたが、そんなことはもうしない。



もう、手加減なんてしてやる気は全くない。



アザゼル、お前の敗因はただ一つ。





俺を怒らせたことだ。





俺は魔界へと足を踏み入れた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 一番いい所で終わった〜! 残念です。もう何年間も、更新されて無いから待つだけ無駄ですかね?完結まで読みたかったです!
[一言] 続きお願いします
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