何故かステータスが測れませんでした。
「まず冒険者になるためには職業がほぼ必須になりますがよろしいですか?ルール上は職業がなくても問題ありませんが……」
受付の人が言う。
「俺は大丈夫です」
そう言った瞬間、エッシェルがつんつん、と俺の肩をつつく。
「そんな部下みたいのじゃなくて、もっとかっこいい言い方した方が冒険者っぽくて良いと思うよ!」
小声でエッシェルが言う。敬語が嫌いなのか?
よく分からないがこの世界では敬語はダメなのかもしれない。従っておくか。
「分かった」
「そちらの方は?」
受付の人がエッシェルを見る。
「あ、私も大丈夫だよ」
「あれ?お前職業あったか?」
エッシェルに小声で聞く。
「もちろん持ってるよ!これでもタケルよりずっと年上だからね!!」
年上?……言われてみればあんなに昔のことを知ってたってことは……いや、考えないでおこう。
性格はともかく、雰囲気的に俺と同い年くらいだしそう思ってよう。
「それではこの石板に手を触れて下さい」
「これは?」
「この石板は表の面に手の平を触れた者の職業、魔力、使用可能属性が分かるものです」
ふむふむ………!?!?
あれ、もしかして俺の職業の多さがバレたら終わるんじゃね??
それにエッシェルだってもしかしたらデーモンってバレるかもしれないし……
初日で街から追い出されるとかは嫌なんだが……
俺は焦りを表に出さないようにエッシェルをゆっくり見る。
「なあエッシェ…」
小声でエッシェルに話しかけようとするが、エッシェルは完全に硬直していた。
エッシェルも事の重大さに気がついたようだ。
「どうかしましたか?」
「い、いや、なんでもない!!!!」
もうなるようになってしまえ!!
俺は勢い良く石板の上に手を置く。
「お、置いたぞ……」
「それでは手を離して下さい。」
俺は石板に表示された文字を見るのが怖くなり、目を逸らした。
「これは……」
受付の人が言葉を詰まらせる。
あー。終わったー。
きっと異常な職業の多さがバレてしまったんだろう。
「ど、どうかしたか?」
俺はゆっくり石板を見ると。
その石板は何も文字を表示しないまま、砕けていた。
「あれ?」
予想外の事態に俺も言葉を詰まらせる。
「う、うわー!?タケル壊したー!!」
エッシェルが言う。
「あ、いや、強く叩きすぎたかな?」
「いえ、石板が壊れるなんて今までに一度も無かったのですが……きっと故障でしょう。こちらの新しい石板をどうぞ。」
受付の人が石板を出す。
そして俺はその石板にゆっくり手を乗せる。
「それでは離して下さい。」
受付の人に言われるがまま、手を離す。
石板はまた砕けていた。
「……?」
受付の人が困った顔をして石板を眺める。
「えー、とりあえずそちらの方からお願いします。」
受付の人がエッシェルを見ながら、新しい石板を出す。
「え?あ、う、うん。」
エッシェルが緊張しながら石板に手を置く。
「それでは離して下さい。」
受付の人に言われた通り、エッシェルが手を離す。
また石板が砕けていた。
俺とエッシェルの異常さがバレなくて本当に良かった。
「ちょ、ちょっと待ってて下さいね。」
受付の人が急いで裏に行く。
「ギルド長ーーー!!ちょっと来て下さいよーー!!!」
裏から微かに声が聞こえる。
「なーにー?」
裏から出て来たのは、スタイルの良い、頭から兎耳のようなものが生えているメガネをかけた美しい女性だった。
耳は本物のようだし…こういう種族もやはり居るのだろうか。
「この人たちが手を乗せると石板が壊れちゃうんですよ!」
受付の人が兎耳の人に言う。どうやらこの兎耳の人がギルド長のようだ。
「そんなことがあるわけ……」
ギルド長も砕けた3つの石板を見て固まる。
「えっと失礼。私は冒険者ギルド全体のギルド長をしているシェスタ・ヘラルーナよ。気軽にシェスタって呼んでくれていいわよ」
全体ということは冒険者ギルドの中でもトップの人なのか。
「ギルド長がどうしてこの街に?」
まさかこの街に本部があるなんてことはあり得ないだろう。
「ちょうど色々な街のギルド支部を見て回ってたの。まあこの町にはちょっと事情があって来たのだけれど、ところであなた達がこの石板を触ったら砕けたって本当?」
「ああ。ゆっくり触っても壊れた」
「ちょっとこっちに来てくれるかしら」
シェスタは裏に俺たちを連れて行き、裏にあるテーブルの右側の二つの席に俺とエッシェルを座らせ、シェスタはその対面側に座った。
「あなた達、もう一度この石板に触れてみてくれるかしら?」
そういって出された2枚の石板に、俺とエッシェルがそれぞれ手を乗せ、数秒後に離す。
すると、2つとも石板が砕けていた。
「あらま。本当ねー」
シェスタは砕けた石板を眺める。
「とりあえずこの件は私たちが調べておくわ」
そう言いながら、砕けた石板を布の袋に入れる。
「とりあえず石板が使えないから、その代わりに私が口頭であなた達の情報を調べるわね」
「ああ」
石板を使わないと知り、少しほっとする。
「まずはあなたからね」
シェスタが俺を見る。
「まず名前は何て言うの?」
「タケル・ミズタニだ」
「はいはい、タケル・ミズタニね」
そう言いながら、シェスタは手元の紙に記入する。
「職業は?」
うーむ、何と言うべきか。
「ま、魔術師です」
「魔術師ね」
よかった。魔術師という職業は存在するようだ。
「それじゃあ魔力を測るから手を出して」
シェスタが透明な石を出す。
「分かった」
俺は手を出す。
「置くわよ」
そう言いながら、シェスタは俺の手のひらに石を置く。
パキッ
石が砕けた。
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