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古代魔術師と戦いました。(2)

くそっ!!


ガガガガガガガガキュン!!!!


剣を地面に突き立て、それを傾けながらなんとか凄まじい速度で飛んでくる平行四辺形の翼を防ぐ。


が。


ズサッ!!!


ぐはっ……


死角から飛んできた翼が背中に刺さる。


「まだまだっ!!」


リリアが両手を挙げると、そこら中の空間が歪み始め、真っ黒の球体がいくつも出現する。


その球体は半径30cmくらいの大きさになり、周りのものを吸い込み始める。


まさかこれはブラックホールか!?


しかし俺は重力で地面に押し付けられてるから吸い込まれない……一体何が目的なんだ?


「これが古代魔法、重力操作の奥義!」


リリアがそう言うと、今まで直線で俺に何度も飛んできていた翼たちが、ブラックホールの吸引力により軌道を変え、変則的な動きで襲ってくる。


「これならいくらあなたでも防げない!」


なるほど、翼の軌道を変則的にする目的だったのか!!


翼の数がさらに増え、襲ってくる、が。


キュン!!、キュンキュン!!


俺は重力に押さえつけられながら、飛んでくる翼を最小限の動きで避け、的確に弾く。


「なんで!?」


やっぱりそうだ。

この数の翼を一つ一つリリアは操っているわけではない。

そりゃこんな数を意識的に操っていたら話なんてする余裕がないからな。

この翼たちはすべて予め設定された通りの動きをしているだけなんだ。


俺が弾いた翼は3.5秒後に俺から距離を約20メートル取り、そのまま直線的に俺に攻撃してくる。

そして俺が避けた翼は約20メートル離れた位置で軌道を変え、再び俺に直線的に向かってくる。

翼が地面に刺さりそうになると、地面から約20センチのところで急旋回し、上に飛んでいく。

この法則を見つけ出すまでに一度死角から翼を受けてしまったがな。


こんな重力の球が増えたところで、高校物理の計算でどうとでもなる!


「はあああっ!!」


リリアが翼の数をどんどん増やすが、俺は最小限の動きでそれを避け、そして弾き続ける。


キュンキュン!!!


ただひたすら、俺は弾いて避けてを繰り返す。



それから数分が経過した後。


「こうなったら、疲れちゃうけど……本気で行くよ」


このままでは俺を倒せないと思ったのか、リリアの表情が真面目になる。


ドガァン!!!


突如俺を押さえつけていた重力の向きが逆になり、地面が砕け、俺は宙に浮く。


そして、翼がいきなり一斉に停止し、全てが同時に俺に向けて飛んでくる。


あ、これやばいやつかもしれない。


重力の球が一気に消え、そして俺の眼の前に出現する。


ぐあぁぁぁっ!!!!


重力の球が俺の腹部にぶつかった瞬間、激痛が走る。

まるで腹を握りつぶされているような感覚だ。


さらに、周りの翼が俺の前にある重力の球によりさらに加速して突っ込んでくる。


ズサズサッ!!!!


ぐっ……


身体中に翼が突き刺さる。


うっ……


身体中から激痛が走る。今まで防御力のおかげて痛みはほとんど感じなかったが、久しぶりに感じる痛みが身体中を駆け回る。


ズゥゥゥゥゥン


俺の耳には重力により空間が歪む音がただ響く。


身体中に刺さった翼と、目の前のどんどん大きくなる重力の球により、俺の意識が遠のいていく。


「これで……とどめ……」


リリアが息を切らしながら、再び詠唱を始める。


「世界を作りし、天地の神よ」


「悪しき罪人に罰を与えよ」


「悪を滅せし光の鉄槌、」


「第六階位神秘属性古代魔法、天裂!!」


直後、リリアの頭上に大きな白い魔法陣が現れ、その光が増してゆく。


「じゃあね」


その光はみるみる強くなっていき、魔法陣が高速回転を始める。


リリアが手を振り下ろした次の瞬間、凄まじい光の光線が俺に飛んでくる。


ギュゥゥゥゥゥン!!!!


俺は目をいきなり開け、ニヤリと微笑む。


待ってたぜ、この瞬間!!!


「!?」


俺の笑みに気がついたリリアは驚いた顔をする。


「水分操作!!!!!」


俺がそう唱えると、一気に俺の周りで光が弾ける。


俺は古代魔法の水分操作を使用して一気に身体中の翼を抜き止血し、自らの体を操作し、ブラックホールの元を一気に離れ、光線を華麗に避ける。


「え!?!?」


流石のリリアもこの動きには驚いたようだ。


「水分操作……あの伝説の氷属性古代魔法!?」


リリアは再び宙に浮く俺を落とそうと重力をかける。


が、俺は落ちない。


「なんで!?」


リリアはすぐに、幾つもの翼を俺に飛ばし、ブラックホールを俺に飛ばす。


「なあリリア、知ってるか?」


パァン!!!!


俺に当たる前に俺の血液が付いていた翼は粉々になり、ブラックホールは俺に当たった瞬間に蒸発する。


「人の体は約6割が水分なんだ」


ダァァァァァァン!!!!!


直後、リリアが地面に叩きつけられる。


そして、俺はゆっくりリリアの前に降りる。


「なんで……詠唱してないのに……」


リリアが問う。


「何言ってんだ。ちゃんと詠唱はしたぞ」


「一体いつの間に……!!」


どうやら気がついたようだ。俺がリリアが古代魔法を使い始めてから、一言も(・・・)話していなかった(・・・・・・・・)ことに。


そう、あの時俺が使った魔力偽装はツタを解くためのものじゃない。そもそもこの首飾りからは魔力が漏れることはないからな。ツタが俺の魔力を頼りに俺をつかまえていたわけじゃないことくらい分かっていた。

あれは、俺の詠唱を隠すために使ったんだ。

古代魔法はどうしても詠唱をすると周りに魔法陣やら光やらが浮かんでしまう。それを隠したのだ。


だからリリアは、リリアが最初の古代魔法の詠唱をしている時に俺が古代魔法を詠唱していたことに気がつかなかった。


あとは最後の一言を詠唱しないままずっと詠唱途中で戦っていたのだ。

だから話すことも魔法を使うこともできなかったんだがな。


だがもうこれでリリアは既に3回古代魔法を使った。もう古代魔法は使えない。


「錬金術、泉」


俺が初めてエッシェルに出会った場所にあった泉を錬成する。


そして出てきた大量の水を、水分操作により動かし、跡形もなく荒れた廃村を囲う障壁に凄まじい速度で何度もぶつける。


「ぐっ……」


やはり全身刺されたあとだと死ぬほど痛いな。

何かいい回復魔法は……


ー時間魔術師・逆行再生 MP消費:25000ー


あった!


「逆行再生」


呪文を唱えると、体が受けた傷が逆再生されるかのようにみるみる消えていった。


もっと早く知ってればよかったなこのチート魔法。


そう思った直後。


パリィン!!!


とうとう俺の古代魔法に耐えられなくなったのか、廃村を囲っていた障壁が砕け散る。


「さて、それじゃあ全部話してもらおうか」


俺の強化も解放され、完全復活を遂げた俺は、リリアに言い放った。


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