魔人を追いました。(2)
ズドォォォォォン!!!!
突如、俺が隠れていた民家が吹き飛んだ。
「うおっ!?!?!?」
俺が驚き立ち上がると、俺から少し離れた場所に居た、先ほど街を襲った魔人が俺に気付いた。
「貴様いつの間にーー」
ドシュッ!!!!!!
魔人が反応した瞬間、魔人が空の彼方へと吹き飛ばされる。
「今度こそ……」
民家が吹き飛んだと同時に巻き上がった土煙の中から、見覚えのある銀髪の少女が姿を現す。
「お前はこの前の……」
「やぁっ!!」
少女の腕が一瞬ゆがんだかと思えば、ギリギリ目で捉えられる速度の手刀の攻撃を放ってくる。
「ぐっ!」
俺は何とか剣の腹で受ける。
「今度は通用した……?」
少女が不思議そうな顔で見てくる。
"今度"……?
まさか前に会った時も一度同じ攻撃をされていたのか……?
…………そうか!!
そういえば前は速度バフをかけずに防御バフを重ねがけしていた。
だから素早い攻撃を受けたのにも関わらず攻撃が見えず、無駄に高い防御力のせいでその攻撃を受けたことにすら気づかなかったのか!!
……いやそれにしてもバフってすごいんだな。
ー黄金剣士・黄金の鎧ー
2分間防御力が3倍。
ー神殺し・防神の精神ー
2分間防御力が7倍。
ー勇者・光防御ー
3分間防御力が5倍。
ー音速剣士・超加速ー
150秒間速度が3倍。
ー歴戦の斧使い・速度強化ー
2分間速度が2倍。
ー時空戦士・時間圧縮ー
100秒間速度が5倍。
防御バフと速度バフを重ねがけする。
「今度こそ……!!」
少女が再び手刀の攻撃をする。
今度は容易に少女の手の動きを捉えることができた。
俺は剣を鞘に戻し、攻撃を右手で受け止める。
バシュンッッッッ!!!!
なんかすごい音がしたが、やはり速度バフと防御バフのおかげでこんどは受け止められた。
「なっ……!!」
手を掴まれた少女が驚きに顔を染める。
「どうして俺を殺そうとするんだ?」
俺は少女に問う。
「生きるため……」
生きるため?俺を殺さないと死ぬとでも言うのか?
「どうして俺を殺さないと生きれないんだ?」
「魔人は……魔王と、魔王城の二つが揃っているか、それとも……いや、その二つが揃っていないと生きられないの」
魔王と魔王城がって……まさか!?
「魔人は魔王を狙っているのか!?」
「うん」
少女はこくりと頷く。
「というかよくそんなことを俺に包み隠さず話したな」
守秘義務とかなかったのだろうか。
「だって嘘ついたら殺される……」
少女が少女の手を掴んでいる俺の右手を見る。
「いや別に殺す気はない!!」
魔物ならまだしも、現代を生きてきた俺としては人を殺すのは流石に抵抗がある。
まあ正直に話してくれたのは結果オーライか。
……いやまてよ。
どうして魔王を狙っている魔人が俺を狙った?
それは恐らく、いや間違いなく俺が魔王であるエッシェルを守っているからだ。
ということは既に魔人はエッシェルの存在に気付いている!?
俺は今単独行動をしている……
「まさか!!!」
その直後、ノールドから渡された白い結晶が光り輝き、弾ける。
そして、瞬く間に俺たちがいる廃墟全体を囲い、なんだか体が重くなる。
「どうしてかはわからないけど、この結界、私を強化してあなたを弱体化させてるみたいだね」
少女が勢いよく俺の手を突き放し、距離をとる。
それから少し前、エッシェル達は。
ちょうどタケルが魔人を追い飛び出した少し後、ノールドが何やら黒い魔道具のようなものを懐に仕舞う。
「あら、どうしたのノールド」
ユティナ姫がノールドに問う。
「いえ。ただ作戦が上手く行っただけですよ」
「作戦?」
ユティナとノールドの会話に、シエラとエッシェルも注目する。
「そう!!貴様ら化け物どもがこの辺境の地に行ってる間に王都を滅ぼすと言う作戦だ!!!!」
ノールドがいきなり表情を変え、人が変わったように振る舞う。
「「「!?」」」
ユティナ姫達はその豹変ぶりに言葉を失う。
「お言葉ですがゼノアさん、貴方のその穴だらけの計画、利用させて頂きます」
突然空間に穴が空いたかと思うと、メガネをかけた白髪のメガネをかけた魔人、アザゼルが空に突如現れた。
その男には魔人を象徴するツノが生えていて、翼で空を飛んでいた。
「ああん!?アザゼル貴様何を!!」
「貴方が王都に放った魔物はとっくにそこの魔王が貼った結界が倒してますよ」
「何!?」
ノールド、もといゼノアがアザゼルに驚きの表情を向ける。
「はあっ!!」
ユティナ姫が会話の隙をついてアザゼルを攻撃しようとする。
が。
「ぎゃぁっ!!!」
アザゼルが闇の波動のようなものを放ったかと思うと、ユティナ姫が地面に叩き落される。
「君たちの狙いはなに?」
エッシェルが真面目な顔つきでアザゼルに問う。
「なあに、今の頼りない魔王の力を私たち魔人四天王に宿して寿命を引きのばし、その後ゆっくり時間をかけて人間に復讐をするんですよ。まあ最も、そこのゼノアは気が早くて魔王を手に入れる代わりに手っ取り早く人間を滅ぼそうとして失敗したわけですが」
「そんなっ!!」
シエラが勇者も知らない魔人の活動を知って驚愕する。
「ということで、そこの魔王。おとなしく捕まってもらいます。さもないとそこのお友達たちが無事じゃありませんよ?」
アザゼルが余裕の表情でエッシェルを脅す。
「わかった。その代わり絶対にシエラ達には手を出さないでね」
エッシェルはうつむいたままそれを承諾する。
「そんなのダメだよ!!」
シエラが止めようとするが。
「無力な勇者は黙ってなさい!!」
ユティナ姫がシエラを止める。
「ほう、そこの姫、ヒューマンにしては頭がいいじゃないか」
「私たち二人には彼女を守ることはできないわ」
「そんなのやってみなきゃーー」
「できるわけない!!私にすら勝てない貴方にそんな力があるの!?そんな才能があるって言うの!?」
その一言は、シエラの心に深く突き刺さった。
昔、まだ勇者の称号が金髪の少女に継がれるよりずっと前の話。
少女は冒険者という人々を守る職業に憧れ、夢としていた。
しかし。
ただの平民生まれのその少女には才能が無かった。
冒険者になる才能がなかったのだ。
使える魔法なんてせいぜい小さな光を灯す魔法くらいで。
非力で剣なんてまともに持てなくて。
弓なんて上手く引くことすらできなくて。
誰もから非才凡才凡人平民、と言われてきた。
そんなある時、少女が住んでいた村が魔物に襲われた。
少女は冒険者が夢の幼馴染と非公式ながらパーティーを組んで村を守っていたが、
いざ現れた魔物に誰も太刀打ちできず、なぜか少女だけ奇跡的に生き残った。
それは恐らく少女があまりにも力を持っていなかったから、敵としてすら見られなかったからだろう。
そこで少女は決意した。
才能のない者に才能のある者は超えられない。
どんなに努力しても才能には敵わない。
それでも、その才能に届いてみせる、と。
それ以来1日も欠かさず少女は努力した。
それこそ汗水垂らし、血を滲ませ、なんども死より辛いであろう経験もした。
それをずっと繰り返し。
失った仲間達のことを思い出し。
そしていつしか、少女は勇者になった。
才能すら超えられたのではないかとさえ思った。
しかしある日、そんな勇者になれた少女は知る。
世界には自分が太刀打ちできないような圧倒的な才能を持った姫がいること。
そして他にも自分をはるかに超える様々な才能を持っている人々がいるであろうこと。
そして最近。
少女はある二人の圧倒的な才能の持ち主達に出会った。
一人は古代魔法を操り聖剣すら巧みに使い。
一人は魔力を見て圧倒的な魔法とその知識を使い。
そんな後、自分が十年ぶりに守られる立場になって少女は思った。
どんな努力すら敵わない才能が確かにある。
どんなに頑張っても超えられない才能がある。
そしてその少女、シエラは今改めて痛感した。
自分にエッシェルは守れない、と。
これから少しずつ時間を見つけて投稿していこうと思います。




