新たな街に行きました。(3)
「一体何なんだあのヒューマンは!?!?」
魔人が魔法で出来た黒い翼を勢いよく動かし、飛翔する。
「俺が街に来た時はあんなヒューマンいなーー」
ドガアアァァァァァァァン!!!!!
突然右から高速で飛んできた物体に当たり、壁に打ち付けられる。
「今度は何……!?!?」
その飛んできた物体は、なんと魔物の死体だった。
「あれ?今何か飛んできてたような……」
魔物を投げた張本人であるエッシェルが、ゆっくりと近付いてくる。
「貴様ァァァァッ!!!」
魔人が魔物の死体を超速で投げ返す。
「おっと!」
エッシェルは左手で飛んできた魔物をはじき、横の壁に薙ぎ払う。
「!?!?!?」
「やあっ!!」
今度はエッシェルが砕けた壁の破片を拾い、投げる。
ドガァァァァァン!!!
魔人はその石に対応しきれず、当たった。
「ガハッ!!」
エッシェルはまだ魔王としての力に目覚めてはいないが、現時点の力ではただの魔人に遅れを取るはずがないのだ。
「えい!」
ドガァァァァァァン!!!!
「やあっ!!!」
ドゴォォォォォン!!!
「クソッ!!何でヒューマンがあんな攻撃を出来るんだ!!!」
魔人はすぐに逃げる。
魔人は攻撃を受けつつも、なんとか建物の角に隠れてやりすごした。
「一体何が起きているんだ……!!」
魔人が混乱しながら街を飛翔する。
「あっ!!!」
魔人が街を飛んでいると、また新しい声が聞こえる。
「今度はなんーー」
スパッ
魔人が振り向いた瞬間、飛んできた光の刃に魔法の翼の一部が切断される。
「何!?!?」
魔人がゆらゆらしながらもなんとか高度を保つ。
「魔人……まさか本当に居たなんて」
その刃を飛ばしたのは、シエラだった。
「貴様ッ!!よくも俺の翼にーー」
「はっ!やっ!!てやっ!!」
連続で光の刃が飛んでくる。
「防御壁!」
魔人が魔法の壁を展開して攻撃を防ごうとする。
ガキュンッ!!ガキュンッ!!ガシャァァン!!!
が、ちょうど飛んできた光の刃を防いだと同時に、壁が破壊された。
「防御壁がたった3発で!?」
「はあっ!!」
シエラが魔人に跳び、斬りかかる。
「クソッ!!」
魔人が咄嗟に懐の剣を抜き、応戦する。
しかし。
ガキュンッ!!
魔人の剣は一瞬で飛ばされてしまった。
「何!?」
魔人がなんとか剣を腕で食い止め、飛翔する。
ガツンッ!!ガツンッ!!
欠けた翼のせいで壁に何度もぶつかりながら、なんとか逃走した。
「一体なんなんだあの化け物達は……」
魔人がゆらゆらと空を飛んでいると、鎧を着た女の子の後ろ姿を発見する。
「あいつなら大丈夫そうだな……」
魔人が予備で持っていた剣を取り出す。
「流石にあんな無防備で歩いてる奴がさっきの化け物供の仲間なはずがないからな……」
魔人が落ち着いて、狙いを定める。
シュッ!!!
音を立てずにその女の子の後ろに超速で飛ぶ。
シャキンッ!!!
魔人がその女の子を背中から斬った。
「ふふふ……ふっはっはっはっは!!やはりヒューマンはこうでないとな!!!」
後ろから剣を振るった後、勝利を確信した魔人が声を上げる。
「貴方、もしかして目がついて無いのかしら」
斬られたはずの女の子、ユティナ姫が後ろを振り向く。
「何故生きて…………」
魔人が自分の剣を見て言葉を失う。
そう、剣の取っ手から先の部分が無くなっていたのだ。
「何故……」
魔人が一歩下がった瞬間。
ジャリッ
聞いたことのない音が下から鳴る。
「なっ……!!」
魔人が見た視線の先には、粉々に砕け散った剣の先の部分があった。
「クソッ!!」
魔人が危機を感じ、すぐに後ろに飛び去ろうとする。
しかし。
「あら、どこに行くのかしら」
後ろを向いて飛び立った先には、さっきまで逆方向にいた少女が立っている。
「ば、化け物ッ!!!」
魔人が咄嗟に上に飛翔する。
「……流石に上までは追えないわね」
少女は空に飛んでいる魔人と戦わず、再び前を向いて歩き始めた。
それを確認し、魔人は安堵のため息をつく。
「クソッ、今日は一体何が起きてるんだ……」
大量の魔物の死体が転がる街の中を、ゆらゆらと飛翔する。
しばらく飛ぶと、街の兵士達が集まって避難している場所があった。
「なるほど、急に街から消えた雑魚兵どもはここに隠れていたのか……」
「クックックッ、あの化け物たちの報いを受けてもらうとするか」
魔人が邪悪な笑みを浮かべ、影からそこを観察する。
「ほうほう、あの他の兵士と比べて豪華な鎧を着てる奴が頭みたいだな」
壁の角に隠れ、息を整える。
「闇よ!暗弾!!」
魔人が闇の弾を高速でその兵士に飛ばす。
第一階位の魔法はかなり基礎の魔法だが、その使用者の魔力などによって威力が大きく左右される。
そのため、戦闘においては最も使い勝手のいい魔法となるのだ。
この暗弾は魔人が撃った魔法であるため普通の人間が撃つ魔法とは比べものにならない速度、そして威力を獲得していた。
しかし。
ガキュンッ!!
暗弾に狙われたその兵士、ノールドには通用しなかった。
「なっ……!!」
「おっと、まさか本当に魔人が居たとは」
ノールドがゆっくり近付いてくる。
「闇よ!暗弾!!」
今度はいくつも暗弾を飛ばす。
キュンキュンキュンキュン!!!
しかし、全て弾かれる。
「貴様ら本当にヒューマンか!?幾ら何でもヒューマンの反応速度を超えすぎだっ!!」
「貴様ら……」
ノールドが魔人の台詞の一部を復唱し、魔人の欠けた翼を見る。
「なるほど、もう他の方々と戦って負けた後でしたか」
ノールドがそういいながら歩み寄る。
「クソッ!!!!覚えておけっ!!!」
魔人はすぐに真上に飛翔し、街の外へと飛んで行った。
「まさか羽が欠けていても飛べたとは!私としたことが不覚でした……」
ノールドは諦めて兵士たちのところへ戻った。




