新たな街に行きました。(1)
「タケル様……?」
倒れた俺たちのすぐそばに、緑髪の、確かノールドといった騎士が立っている。
扉を覗いていて見えなかったということは、扉のすぐそばに立っていたのだろう。
まあ王に護衛がつくのは当然か。
「いや、その、話し声が聞こえたからつい……」
「別に秘密ごとじゃないからそんな盗み聞きなんてしなくてもいいのに……」
ユティナ姫が呆れた目でこちらを見てくる。
「ユティナ姫の婚約者のタケル様ですか!!」
ユティナ姫と話していた貴族が俺に言う。
「違うわよ!!!!!」
直後、ユティナが激しく反論する。
「何の話をしてたの?」
エッシェルが貴族に聞く。
「それが、私の領地で大量の魔物が発生しまして……」
「何!?」
思わず反応する。
昨日会った魔人、そして俺がスクワで撃退した魔人が関係している可能性が高いな。
「さらに魔人を見たという情報もあり……」
「魔人をですか……」
シエラが反応する。
間違いない。きっとあの魔人たちが関係している。
あの少女の方はよくわからないが、スクワで見た男の魔人が気がかりだな。
「かなり大きな被害が出ているらしく、そこで相当な腕を持つ冒険者と名高いユティナ姫に依頼をしに来たのです」
なるほど。てっきり婚約の申し出かと思ったら結構深刻な方だったのか。
「悪いけど私は行かないわよ!!」
ユティナ姫が貴族に言う。
「そこをなんとか……」
「私は行きたくないの!!」
どうやらユティナ姫に行く気は無いようだ。
「はっ!!それならタケル様、あなたも相当な腕を持つと聞きました!!是非!!」
あー、やっぱ俺に来たか。
「ちなみにその領地はどれくらいの距離なんだ?」
「馬車で5時間ほどでございます」
5時間…………
この世界だと遠いのか?それとも近いのか?
……わからんな。
でもまあそんな死ぬほど遠いわけでもないし、どうせやることもないからなあ。
「分かった。その依頼を受けよう」
「本当ですか!?」
「え!?」
「受けるの!?」
エッシェルとシエラが反応する。
「馬車で5時間ってそんなに遠いのか?」
「いやそうじゃなくて魔人がいるかも知れないんだよ?」
「どうせやることないしいいじゃないか」
「タケルらしいね……」
まあ防御バフで250倍くらいかけておけばそう簡単に死ぬことはないだろうからな。
「本当に大丈夫なの!?」
ユティナが言う。
「まあ大丈夫だろ」
「…………」
ユティナ姫が少し黙る。
……?
「仕方ないわね!!特別に私も付いて行ってあげるわ!!」
「何!?!?」
「どうしてもって言うならよ!!」
「さっきまで行かないとか言ってなかったか!?」
「き、気分が変わっただけよ」
「ユティナ姫も来ていただけるのですか!?」
どうやら貴族は嬉しそうだ。
……だけどユティナ姫って姫だよな?
そんな危ないことさせていいのか?
「なあ、ユティナ姫って姫だろ?大丈夫なのか?」
王に聞いてみる。
「うーむ、そこは父親として心配なところだが、ユティナは冒険者だからな。もし何かあったらユティナを守ってやってくれ」
口では仕方なく送るようなことを言っているが、表情は完全に送り出したそうにしている。
あれなのか?意地でも俺とユティナ姫をくっつけたいのか?
「なあノールド、騎士としてそれは大丈夫なのか?」
今度はノールドに聞いてみる。
「確かに騎士として、姫を戦地に送るのは少々許しがたいことではありますね」
「やっぱそうだよな」
「私が魔物ごときに遅れをとるわけがないでしょ!!」
「まあ確かに腕が立つのは認めるが……」
普通の人間が音速で石鹸を投げるなんて不可能だからな。
でももし姫に何かあったら大変だからなあ。
「それでは私ノールドもお供します!」
「マジか」
王のこんな近くにいるってことは相当腕が立つのは確かだし、まあそれならいいか。
「じゃあ俺とユティナ姫とノールドでいいか?」
俺が貴族にそう言おうとすると。
「私も行く!!」
「ボクも!!」
エッシェルとシエラが言った。
「二人も付いてきてくれるのか?」
「うん!」
「もちろん!!」
「それなら一層心強いな。じゃあそういうことでいいか?」
俺は貴族に言う。
「はい!!是非お願いします!!」
結局、俺、エッシェル、シエラ、ユティナ姫、ノールドの5人でその魔物と魔人が出たという街に向かうことになった。




