シャワーを浴びに行きました。(1)
コンコン。
俺たちがババ抜きで楽しんでいると、扉をノックする音が聞こえて来た。
どうやら夕食が来たみたいだな。
「はーい」
俺はババ抜きを中断して立ち上がり、扉を開ける。
「タケル様、夕食をお持ちしました」
白髪に、白いひげを生やした年齢の高めな男性が扉の前に立っていた。
「ああ、どうぞ」
俺は扉を開け、男性とその後ろの食事を台車に乗せて運んできた人たちを部屋に入れる。
すると、素早い動作で食事を机の上に並べ始めた。
「ねえ、トランプどこ置いておけばいい?」
食事が来たことを知ったシエラが言う。
「あー、紅茶とかが置いてあった棚にでもおいてくれ」
「分かった」
シエラがトランプを置く。
「もう1時間経っちゃったのか!早いね!!」
「そうだな。やっぱトランプは楽しいな」
「うん!大富豪もババ抜きも楽しかった!!」
俺的には大富豪にいい思い出はないがな。
「それにしてもお前がババ抜きした時、最初から全部ペアだったのは驚いたぞ」
ババ抜きで最初に全部揃ってたらどうなるんだろうと少し考えたことはあったが、それが目の前に起きたのは始めてだった。
……そもそもババ抜きを人とやったことはなかったけど。
「私もびっくりしたよ!」
「準備が整いました」
食事を並べていた男性が言う。
もう終わったのか。
俺たちが話してるこの短い間に終えるとは流石プロだな。
「それではごゆっくり」
使用人達がすぐに出て行く。
もっとなんか料理の説明とかあると思ったんだが、気を利かせてくれたのだろうか。
「すごーい!!おいしそー!!」
エッシェルが料理を見て言う。
「ほんとだ!!」
シエラも続けて言う。
俺も二人の言葉を聞き、料理に目を移す。
するとそこには高級料理店で出てくるような色鮮やかで美味しそうな料理が並んでいた。
「おお、確かにうまそうだな」
「食べよ食べよ!」
俺たちはすぐ席に座り、食器を手に取る。
そして、料理を口に運ぶ。
「うん、美味い」
味はまさに高級料理そのもので、肉は口の中で溶けるように広がり、野菜の香りが鼻の奥まで通り、魚介類は身がすごく柔らかくて食べやすい。
王に感謝感激だな。
「おいしー!!」
「ボクこんな高級な料理食べたことないよ!」
「勇者なら食べたことあるんじゃないのか?」
「いやー、その気になれば食べれたんだろうけど、勇者になってまだそんな時間が経ってないから忙しくて」
「なるほど」
やっぱ勇者になれただけあって勤勉だな。
「あれ、というか魔王なんだしエッシェルもこういう高級料理食べたことあるんじゃないのか?」
そういえばよく考えたらエッシェルは魔王だった。
「ん?あるよ?」
「やっぱあったか」
「でもここ1000年くらいはなかったなー」
「1000年!?!?!?」
シエラが驚いてる。
そういえばシエラはエッシェルの昔のことあんまり知らなかったんだったか。
まあ俺もそんなに知ってるわけじゃないが。
「1000年食べてなかったらそれはもう初めて食べるのとそんな変わらないよ」
「うーん、悪いけど俺は人間だからその感覚は分からん」
「ボクも」
そんなことを話しながら食事をしていると、あっという間に食べ終わってしまった。
「ふー!美味しかったー!!」
「やっぱ王家の食事は美味しいな」
「そうだ、やっぱ王家なら体洗う場所あるかな」
シエラがふと思い出したように言う。
そういえばここ数日間風呂に入ってなかったな。
エッシェルもシエラも常にいい匂いなせいで全然気がつかなかった。
でも俺もそんな特に臭ったりする感じはしないな。何故だろう。
ー始原の魔術師・汚染無効ー
頭の中に突然浮かんでくる。
うっわなんだこのめっちゃ便利なスキルは。
始原の魔術師まじ便利すぎだろ。
「あるんじゃない?私もしばらく水浴びしてなかったからなー」
「水浴び……」
シエラが水浴びという言葉に少し反応する。
そういえばエッシェルは森で水浴びして体を洗ってたんだったな。
「俺も最近風呂入ってなかったからな」
「ふろ?」
あ、この世界に風呂はないのか。
ってことは温泉とかもないってことか。
……世界が違うんだし仕方ないか。
「いや、なんでもない」
「体洗う場所なら通信魔法で聞けばいいんじゃないか?」
「そうだね」
シエラが通信魔法の前まで行き、通信魔法を使う。
そして少しの間誰かと話し、戻ってくる。
「私たちが使う場所は5階の北東側だって」
「どっちが北東だ?」
「部屋を出て右の突き当たりらへんだって」
「なるほど」
「あれ?ここって何階?」
「俺は知らないな」
「ボクも」
「…………多分3階くらいじゃないか?」
中庭からここに戻るときに階段を登ったのは覚えてるが、どれくらい登ったかは分からない。
「まあとりあえず行ってみるか」
「その前にボク、トイレに行きたいんだけど……」
「私もー」
「それじゃあ俺先に行ってるな。どうせ男女で別れるわけだし」
「うん」
「分かった!」
「じゃあな」
俺は部屋を出た。
「えっと、右の突き当たりだったか」
俺は長い廊下を歩き、突き当たりまで行く。
「それで2階上に上がればいいんだったな」
ちょうど突き当たりにあった階段を上に上がる。
そして2階上がったところで階段から抜ける。
「さて、どこらへんにあるだろうか」
俺は周りを少し歩き、それらしき場所を探す。
すると、少し歩いたところに"シャワー室"と書かれた看板があった。
あ、シャワーって言葉は普通にこの世界にあるんだな。
そういえばトイレもあるんだったな。
……いや、これ自動翻訳のせいなのか?
まあいいや。
看板の周りを見てみるが、性別に関する記載は特にない。
ということはこれはどっちでもいいってことなのか?
とりあえずシャワー室と書いてある場所の扉を開ける。
すると少し通路が奥に続いていて、その先にもう一つ扉があった。
「多分この先に……」
その扉を開けると、小さな脱衣所があった。
高いところに服を入れるカゴが一つ。
低いところにももう一つ。
そしてそのカゴがある反対側に大きな鏡とドライヤーのようなものがあった。
俺は服を脱ぎ、低い方のカゴに入れる。
それじゃあ王家のシャワーがどんなものか見てみよう。
ガラガラッ。
スライド式の扉を開けると。
何故かユティナ姫と目が合った。




