王都に向かいました(3)
俺たちは昼食を済ませ、王都へと歩いていた。
「なあシエラ、王都まであとどれくらいだ?」
「うーん、もうすぐ見えてくるはずだよ」
「王都!!楽しみ!!」
王都に近付くにつれてだんだん道が整備され、綺麗になっていた。
「あ!!見えたよ!!」
シエラが指差す先には、巨大な壁とその上から見える城のようなものがあった。
「あれが王都か」
やはり王都というだけあって遠くから見ても明らかに大きいな。
「王都大きいね!!」
「そうだな」
俺たちが歩いている道の先に城門がある。
その城門は俺たちが前いたスクワのものよりも明らかに大きく、鋼鉄で出来ていた。
「身分証を」
俺たちが城門の前まで行くと、兵士が俺たちに言った。
やはり王都というだけあって入る前に身分証が必要なのだな。
「これだ」
「はい!」
「どうぞ」
ギルドカードを渡す。
「おお!勇者様でしたか!!お疲れ様です!」
兵士たちがシエラに頭を下げる。
やはり勇者という職業は凄いんだな。
「お入り下さい」
ギルドカードが返された後、城門が開かれる。
「あれが王城だよ!」
シエラが目の前にある大きな城を指差す。
その城は王都に入る前から上が見えていた城で、街の中心にそびえ立っていた。
「そういえば王様に会うんだったな……」
「そうだね」
「私礼儀とか分かんないよ!」
「普通にしてれば大丈夫だよ。そんなに厳しい人じゃないし」
「それならまあ……」
その普通で大丈夫じゃないという可能性があるが、まあ大丈夫だろう。
「ねえ、なんか時々肩に魔物乗せてる人いるけどなに?」
エッシェルが周りを見渡しながら言う。
確かにそこまで多くはないが、魔物を連れて歩いている人がいる。
「ああ、召喚士の人たちだね」
シエラが言う。
「召喚士?」
「うん。魔界から魔物を召喚して付き従わせる魔法を使えるんだ。まあ召喚した魔物に力を認めさせないとだめなんだけどね」
「魔界!?」
「うん。魔物とか魔人が住んでるところだね」
「そんな場所があるのか……?」
「うん」
「ちなみに魔王城はどこにあったんだ?」
「もちろん魔界だよ」
「それじゃああれなのか?人間が、ヒューマンが魔界に侵略したってことなのか?」
「そう言うと少し違うかな。先代の魔王が地上を攻撃してきて戦争になったんだ。それで結局ヒューマンが魔王城まで攻め込んだんだ」
「ごめんね、お父さんは別に戦争がしたかったわけじゃないと思うんだけどね……」
エッシェルが申し訳なさそうに言う。そういえば魔王だったな。
「いやいや、そっちにも事情があったのはわかるから大丈夫だよ」
「それで魔界は結局どうなったんだ?」
「魔王城での戦いで勝ってからはもう誰も行ってないよ。というか結界が作られたからいけないんだけどね」
「そうなのか……」
まさか魔界なんてものがあって、魔王城がその魔界にあったとは思わなかった。
「それに戦争が終わってから1000年くらい経ってるし、そこまでデーモンを恨む人もいなくなったからね」
「なるほどな」
魔物に力を借りる召喚士という職業が出たのはきっと最近なんだろうな。
「あれ、召喚士って魔界から魔物を呼び寄せるんだよな」
「そうだね」
「魔物はここと魔界を行き来できるのか?」
「魔物なら出来るよ。結界が防ぐのは人間の移動だけだからね」
「どうして人間だけなんだ?」
「結界っていうのは人間が魔界で犯罪とかをしないために作ったものだからね」
「なるほど」
そんなことを話していると、気がつくと城のだいぶ近くまで来ていた。
「おお!近くで見ると思ったより大きいな!」
「街の外から見えるくらいだからね」
「魔王城くらい大きい……」
魔王城もこれくらい大きいのか。
俺たちが城を眺めていると、隣を通った貴族のような格好をした男二人組の話が聞こえてくる。
「なあ、エルフォア家の当主がユティナ姫に求婚したらしいぜ」
「どうなったんだ?」
「もちろん断られたに決まってるだろ!」
「これで47人目かー」
……なんかすごい会話が聞こえて来たな。
「なあシエラ、今の人たちの話聞こえてたか?」
「うん。ユティナ姫でしょ?」
「知ってるのか?」
「結構有名だよ、第三王女ユティナ」
「どんな人なんだ?」
「すごく美人らしいんだけど、何よりすごく強いんだって」
「強いのか?」
「うん。冒険者をやっててSランクだから」
「Sランクなのか!?王女が!?」
「うん。それだけでも有名になるくらいすごいんだけど、貴族の求婚を何十回も断ってるんだって。さっきの人たちの話によると47回だね」
「うわ、それは確かに凄いな……」
「ちなみに何歳なんだ?」
「19歳だよ」
思ったより若かった。
「ちなみにシエラと比べたらどっちが強い?」
「ボクが聖剣を持ってたとしてもボクじゃ流石に勝てないよ。勇者になってからそんな時間も経ってないしね」
「勇者より強いのかよ……」
「私と比べたらどっちが強い?」
エッシェルが言う。
「魔法ありだったら流石にエッシェルの方が強いんじゃないかな……」
「魔法ありだったらってことはそのユティナ姫は魔法を使わないのか?」
「まあ使えないことはないけど、剣を扱う上位職だからね」
ほう、上位職なのか。
「剣の腕がすごいのか」
「そうだね。ユティナ姫が振る剣先が見える人なんてこの世界に数えるほどしかいないらしいよ」
「どんだけだよ……」
「とにかく速いんだって。本気を出せば音が伝わる速さと同じかそれ以上で剣を振れるみたい」
ほう、音速で剣を振れる上位職か……
ちょっと心当たりがある気がする。
「ちなみにその上位職は?」
「音速剣士って職業らしいよ」
あ、それ知ってる。




