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王都に向かいました。(1)

「なあ、救世主が現れたらしいぞ……」


「え!?まじかよ!?」



「お前外見たか?」


「見た見た!!焼け野原だったよな!!」



「昨日大量の魔物が一つの魔法で倒されたらしいぜ」


「流石に嘘だろ!!」



「なあ、昨日街が急に暗くなったのってなんでなんだ?」


「飲み仲間が空が闇に覆われてくの見たらしいぜ!!」



何やら街が騒がしいな。

勇者が来た時とはまた別の騒がしさというか。


「なんかざわついてるねー」


エッシェルが言う。


「俺たちが宿に篭ってる間に何かあったのかもしれないな」


「多分二人のせいだと思うんだけど……」


「俺たちか?」


「私たちなんかしたっけ」


「いや昨日すごいことしてたよね」


「ああ、確かにそうだったな」


「あー、でも私は特にそこまですごいことはしてないよ?」


「第六階位の魔法はすごいことだよ……」



二人と話しながら歩いていると、しばらくして街の門の前に着いた。

しかし、門は何故か閉まっている。


「なあ、外に出たいんだが」


兵士の人に聞く。


「誰だね君は!今はいろいろあって忙しいんだ!!」


それはもしかしなくても俺たちのせいだよな。ごめんなさい。


「いや、でも外に出たいんだが……」


「君も外のことは知ってるだろ!!今出るのは危険だ!!」


それやったの俺ですとは言えないよな。

兵士たちが危険だと思うのはおそらく俺のことをシェスタに伝えられていないからだろう。

だから原因がわからず、危険だと判断したんだろう。


……あれ、でもシェスタは俺たちが王都に向かうって知ってるんだよな。

だったらどうして外に出られないようにしたんだ?流石にそんな下手なことするとは思わないんだが。

うーむ……あ、もしかして。


「なあ、これ……」


俺のギルドカードを渡す。


「ん?これは!!ちょっと借りるぞ!」


兵士が俺のギルドカードを持って裏に行く。


「やっぱそうだったか」


ギルド長だし、やはりそういうところはしっかりしてたな。


「失礼しました!!どうぞ!!」


兵士たちが俺にギルドカードを返し、門を開ける。


「行くぞ!」


「「うん!」」


俺たちは門の外に出た。

ちなみに言うまでもないが、外は焼け野原だった。


「うわあ、すごいことになってるね……」


「ほんとだー」


シエラとエッシェルが周りを見渡しながら言う。


うん。昨日の朝まで一面に草原が広がっていたとは思えないな。


「なんか直す魔法あったら直すんだがな」


……あれ、もしかして古代魔法とかならあるんじゃね?

例えば土壌の状態を良くして植物を生やすとか……


ー古代魔術師・命ノ輝キー


うわあ、それっぽいのあった。


「でもいきなり一日で治ったらボクだったらそっちの方が驚くけどね」


「それもそうだな」


この魔法は使わないでおこう。

詠唱もしたくないからな。


「そういえば何も知らずにこっち歩いてるけど道あってるのか?」


「私はタケルについていってるだけだよ?」


「ボクは知ってるから大丈夫。合ってるよ」


良かった。全員知らなかったら詰んでたな。

まあシエラは王都から来たみたいだし知ってて当然か。




それから俺たちはただひたすら歩き、森や湖畔を超えたところでちょうど昼飯くらいの時間がやってきた。


「うー!お腹すいたー!」


草原を歩きながら、エッシェルが言う。


現在時刻:12時28分13秒


「そうだな。もう昼飯の時間だな」


この時間が確認できるスキル相変わらず便利だな。


「ボクもお腹すいて来たよー」


「……でも何食べればいいんだ?」


「うんとねー」


シエラが周りを見渡す。

しかし草原が広がるだけで、木の一本も見つからなかった。


「ないね」


「いや流石に何かあるだろ……」


俺も見渡す。

もちろん何も見つからない。


「ないな」


「えー!!少しはあるでしょ!!」


エッシェルも周りを見渡す。

何もなかった。


「ない……」


「うん、まずいな」


どうしたものか。流石にそろそろ昼食を食べたい。

ん、こういうときに魔法を使えばいいんじゃないのか!?


食料を出す魔法は……


ー     ー


なかった。


「なあ、二人は食料を出す魔法知らないか?」


「流石にそんな魔法聞いたことないよ……」


「私もないね」


「だよな」


貨幣なら錬金術でできたんだがな。


……あれ、もしかして食料も錬金術でできるんじゃないか?

食料を出す魔法じゃなくて、使い方によっては食料を出せる魔法として錬金術がある可能性が。


「錬金術、牛肉」


試しに手のひらを上に向け、唱える。


ボトボトッ


生の牛肉が出て来た。


「えええええええええ!?!?!?!?!?」


「食べ物出せる魔法あったんだ!!!!」


二人が突然の出来事に驚いている。

俺もまさか牛肉が出せるとは思わなかった。


「よし、昼飯はこれにしよう」


「うん!」


「そ、そうだね……」


俺たちはとりあえず草原に座る。


「錬金術、ビニールシート」


試しにやってみる。


…………。


出てこない。


「布」


フサッ。


出て来た。


どうやらこの世界にあるものなら出せるみたいだ。

ってことはこの世界に牛はいるんだな。


「下に敷いてその上に座ってくれ。服に草がつかないようにな」


「便利な魔法だね……」


二人が上に座る。


「錬金術、皿」


宿屋で使っていた皿がいくつか出てくる。


「ほいっと」


その上に肉を置く。


「皿も出せるんだ……」


だがこの世界にないものは出せないのが厄介だ。

宿屋で出た食べ物がなんという種類なのか知らないから調理後の料理を出すことはできない。


「錬金術、焼いた牛肉」


…………。


うん、ダメだな。


きっと俺が屋台で見た生肉がたまたま牛肉だったとかなのだろう。

どうやらこの世界にあるもの、そしてその上で一度見たものしか作れないようだ。


ということはやはりこの肉を俺たちで調理して食うしかない。

だが、この肉をどう焼けばいいのか俺にはわからない。

火の起こし方がわからないからな。


「なあ、この肉どうやって焼く?」


「私火の起こし方知らないよ?」


「ボクも」


「うーむ……」

「そうだ!魔法を使えばいいんじゃないか!?」


せっかく魔法があるんだしな!

さあ、魔術焼肉パーティの始まりだ!!

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