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宿に戻りました。(1)

「ここが宿だな」


俺たち三人が宿の前に着く。


「この宿にいつも泊まってたんだね!」


「泊まったの1日だけどな」


「あ、そうなんだ」


宿のドアを開ける。

そしてドアについている鈴がチリンチリンと鳴る。


「こんにち……にゃ!!!」


カウンターに居る猫耳娘が俺を見て声をあげる。


「今までどこに行ってたにゃ!?!?」


「すまんな。いろいろあって」


「流石に心配したにゃ!!」


「すまんすまん」


そりゃ宿を4泊取っといて2日目以降いなくなったら不自然だよな。


「せっかく頑張って朝食作ったんだけどにゃ……」


猫耳娘が小声で言う。


「なんか言ったか?」


「な、なんでもないにゃ!」


「そ、そうか」


そして俺たちの部屋に行く。


「ふう疲れたー!!」


シエラがいつも来ている鎧を脱ぐ。

ギルドに泊まった時も思ったが、私服姿も可愛いな。


「お腹すいたー!!」


エッシェルが言う。


そういえば朝から何も食べてなかったな。


「でも外でたくないー」


その気持ちはすごくわかる。


「うーん、宿に居なかった二日分の朝食を今日の昼食と夕食にできたらいいんだがな」


流石に無理だろうが。


「それいいね!!聞いて来る!!」


冗談で言ったつもりだったが、エッシェルが真に受けて部屋から勢いよく出る。


「いや、いいのかよ」


「相変わらず元気だねー」


シエラがベッドに座っている俺の隣に座る。


「疲れててもあんなだからな」


「…………」


「ねえタケル」


「何だ?」


「ボクを一緒に連れてってくれてありがとね」


「あ、ああ。どうしたんだ?いきなり」


「ボクって勇者だからさ、いつも人を守らなきゃって思ってたんだ」


「そうなのか」


まあ勇者としてかなりの責任があるんだろう。


「っていうか聖剣の強さもあっていつもボクが誰かを守る立場だったんだ」


不死身の魔物を倒せるくらいだしな。


「だからさ、ボクが守られたのって初めてなんだよね」


少しうつむき、頰を少し赤く染めながら言う。


「まあ仲間だしな」


「それがすごく嬉しくて、それでずっと一緒にいられたらなって思ったんだ」


「そ、そうなのか」


「あ!あれだよ!!あのそういう意味でじゃなくて!!!そういう意味じゃないこともないんだけどそうじゃなくて!!!!」


シエラがこっちを見ながら慌てている。


何をそんなに焦っているんだ……?


「あの、その、とにかくありがとう」


「ど、どういたしまして」


「…………」


謎の沈黙が訪れる。


一体なんだこの微妙に気まずい雰囲気は。


バアアアアアン!!!!!


突如、ドアが勢いよく開く。


「いいって!!」


エッシェルだ。

戻ってくるの早くね。


「いいって何がいいんだ?」


「昼食と夕食作ってくれるって!!」


「…………え!?」


まじかよ。いいのかよ。完全に迷惑な客だろ。


「いいんだね……」


シエラが少し呆れている。


「来て来て!!」


エッシェルが手招きしながら言う。


「行くか」


「そうだね」


そして宿のカウンターまで向かった。


「なあ、本当にいいのか?」


猫耳娘に聞く。


「もちろんにゃ!!特別サービスにゃ!!」


なんというサービスの良さだ。


「今から作るから待っててにゃ!!」


猫耳娘がカウンターに"ご用がありましたらベルを鳴らしてください"と、この世界の文字で書かれたプレートを置き、裏へと走って行った。


「もしかしなくても、この宿あの娘一人で経営してるんだな……」


「絶対お金足りてないよね」


シエラが言う。


俺も同感だ。1泊500ピリカなんて安さな上に朝食付きとか絶対足りてないだろ。

この宿には何か特別な手当でも出ているのだろうか。


「でもこの宿けっこう綺麗だよ!」


エッシェルが天井を見渡しながら言う。

確かに一人で経営してるとは思えない綺麗さだな。


「適当な席に座っててにゃ!!」


猫耳娘がカウンターから裏へと繋がっているドアから顔を出し、俺たちに言う。


「お、おう」


「じゃああの席に座ろ!!」


エッシェルが前に朝食を食べた席を指差す。

そこには他の人たちがちょうど座っておらず、空席になっていた。


「いいぞ」


「分かった!」


俺たちはその席に座る。


そしてそれから待つこと約10分。


「お待たせにゃ!!」


猫耳娘が料理を運んで来た。


いくつもの皿を、厨房と往復しながら丁寧に机に並べて行く。


出された料理は、前の朝食よりも多く、ボリュームがあった。


「それじゃあ早速……」


俺たちは料理を口に運ぶ。

猫耳娘はにこやかにその様子を見ていた。


「うまいな!!」


相変わらず素晴らしい味だった。


「やったにゃ!!」


猫耳娘が喜んでいる。

うん、かわいいな。


「おいしー!!」


「これ美味しいね!!」


二人の舌にもかなり合っていたようだ。よかった。


そして結局、俺たちが食べ終わるまで猫耳娘は嬉しそうに俺たちを見続けていた。


「どうだったにゃ?」


「すこく美味しかった」


「私も!!」


「ボクも!」


「それは良かったにゃ!!」


猫耳娘が嬉しそうにお皿を片付けていく。


なんというかすごくいい子だな。


「まさか宿でこんな美味しい食事ができるなんて驚いたよ」


シエラが言う。


まさか昼食と夕食も出してくれるとは驚いた。


「それで、この後何をするの?」


エッシェルが俺たちに尋ねる。


「うーん、結構疲れたし昼寝でもするか?」


「それいいね!!」


「賛成!!」


俺たちは猫耳娘に挨拶をした後、部屋に戻った。


「よし!寝るか!!」


「「うん!!」」


部屋に戻ってそうは言ったものの、そういえばベッドが二つしかないんだった。


「じゃあ今度こそ俺は床で……」


「ダメだよ」


エッシェルに止められた。


「そ、その、また私と二人で寝ればいいじゃん!」


「いや、流石にそれは……」


「嫌なの?」


「いや、全然嫌じゃない!」


「ならいいじゃん」


咄嗟に嫌じゃないと答えてしまった。

確かに嫌じゃないというかもはやご褒美なのは事実なんだが、寝れないのは問題だ。


「でも俺は床で……」


「だったら私も床だもん!!」


「ボクが床でねようか?」


「いや、流石にシエラに床で寝てもらうわけにはいかないな」


「じゃあ私が床で!!」


「いや俺だ!!」


「だったら二人で床!!」


「意味ねえ!!」


「ボクが床で寝るから!!」


「うーん。もう、タケルは私とベッドでいいでしょ!!」


「なんでだよ!」


「いやじゃないんでしょ!!」


「確かにそうだが……」


「いや、だめだよ」


シエラが突然止める。


シエラがとうとう俺の気持ちを汲み取ってくれたのか……!!


「三人で寝る」


突如、予想外の言葉をシエラが言い放った。

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