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奥の手を使われました。

残り5秒。

俺はあと5秒であの魔物を倒さなければならない。


だが、職業の多さをフルに活かした状態の俺ならば可能だろう。

恐らく今俺はSランクレベルの強さを持っているはずだからな。


ー極致の武闘家・瞬跳ー


「はぁっ!!」


魔物に向けて跳ぶ。


残り4秒。


「はっ!!!」


魔物の右前足を切断し、バランスを崩させる。


今度は断面が霧になることはなく、光に焼かれていた。


残り3秒。


「はあっ!!」


魔物の腹の下から、跳躍しながら切り上げる。


残り2秒。


ー黄金剣士・力溜めー


魔物の真上で、剣に力を貯める。


残り1秒。


ー勇者・聖断ー


「おらああああっ!!」


魔物の上から、魔物を真っ二つに斬り下ろす。


スガアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!!


残り0秒。


凄まじい音が辺りに鳴り響き、地面に渓谷ができる。

そして、絶命した魔物が光となって(・・・・・)消えていく。


そして、全身から力が抜けるような感覚に襲われる。

かかっていた特殊効果の一部が切れたのだろう。


「まさかあれを倒すなんて……」


「タケルすごーい!!!」


シエラとエッシェルがこちらに走って来る。


「とりあえずこれ返すな」


シエラに借りていた聖剣を返す。


「でもどうしてボクの聖剣が使えたの?いきなりすごく強くなったりボクが知らないスキルを色々使ったりしてたけど、何をしたの?」


「それ私も気になる!!」


まあもう隠す必要もないし正直に言うか。


「俺、実は上位職と特殊職、全ての職業を持ってるんだ」


「あー、どうりで…………」


シエラが納得しそうになり、そして固まる。


「「……………」」


「「えええええええええええええええええ!?!?!?!?!?!?!?」」


まあ当然の反応だよな。

この世界の法則を堂々と破ってるわけだし。


「それってあれなの!?魔術師でもあって戦士でもあるってことなの!?だから勇者でもあってボクの聖剣を使えたってことなの!?!?」


「ああ」


「すごいね!!だから全属性使えたんだね!!」


「どんな事情があってそうなったのかは知らないけど、実際にあんなことしてたから嘘じゃないんだよね……」


「そうだな。でも他の人に知られると色々厄介だから誰にも言うなよ?」


「確かにそれは知られだら厄介だね……もちろん誰にも言わないけど、夢でも見てる気分だよ」


「私も誰にも言わない!!」


聞き分けが良くて助かった。


「ひとまずこれで一件落着だな」


「そうだね!」


「うん!」


……あれ、何かを忘れている気が……


「あ」


俺は肝心なことを忘れていたことに気がつく。


「魔人!!」


すぐに魔人が座っていた木に振り向く。

魔物が壮大すぎて魔人のことを完全に忘れていた。

だが流石にもう逃げられているはずーー


木の枝の上に視線を向けると、魔人が座っていた。

逃げたと思っていたがまだいたのか。


「なあ」


話しかけても反応がない。

なんというか、口を開けてぼーっとしている。


「おーい」


「…………」


「おい魔人!!」


「…………」


ー音響魔術師・拡声 MP消費:10ー


「拡声!」


魔法を唱える。


「おーーーい!!!!!!!!!!!!」


声を大きくする魔術で自分の声の大きさを数倍にし、叫ぶ。


「おあっ!?!?!?!?」


魔人がやっと反応した。


「お前の魔物はもう倒したぞ」


「そ、そんなことはわかっている!!!貴様本当にヒューマンか!?!?!?」


「ああ。もう二度と街を襲うんじゃないぞ」


「くっ……」


魔人が少し俯いて考える。


「仕方ない。本当は王都を滅ぼす時に使おうとしていたのだが、今これを使ってしまおう!!」


魔人が邪悪な笑みを浮かべ、懐から巨大な、紫色に輝く結晶を取り出す。


「ふふふふ……ははははははははは!!!!!!!!!!!!!!!」

「大陸一つを滅ぼす程の力を持ったこの結晶を今すぐに使ってやる!!!!!」

「今まで私たちが1000年間積み上げてきた血の滲むような準備の結晶!!!」


大陸一つを滅ぼす……?



……いやまじかよ。

そんなやばい奴持ってんのかよ。


「やめろ!!」


魔人に言う。どうせやめないだろうが。


「そう言われてやめるはずがないだろう!!!!」


でしょうね。


「来い!!!!我が眷属達よ!!!!!!」


魔人が結晶を空に掲げると、紫色の光を放ち始める。


そしてその数秒後。辺り一帯が、見慣れた紫色の霧に包まれる。

その量は凄まじく、もうすぐ前が見えなくなる程だった。


流石にこれはやばいな。


「逃げるぞ!!」


「えっ?」


「ひゃっ!」


俺はエッシェルとシエラの手を引き、全力で走る。

時には逃げるという選択も大切だ。

まあ放置する気はないが。

幸いまだ速度が上がるバフはかかったままだ。


「ど、どうしたの?」


シエラが走りながら俺に聞く。


「恐らくあの霧はさっき戦った魔物の霧だ。あの量に囲まれたら流石にまずいだろう」


俺は後ろを振り向く。

すると、シエラとエッシェルも後ろを振り向いた。


そこには、大量の紫色の霧が草原に広がっていた。


「ひえぇぇっっ!!!すごい量の魔力だよ!!」


エッシェルが言う。

恐らくエッシェルにはこの霧がさらに大きく見えているのだろう。


「もっと速度を上げるぞ!!」


「「うん!!」」


俺たちは全力で霧から離れ、街へ向かった。

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