睡眠不足になりました。
結局、俺たちは完全に日が暮れるまで街を練り歩いた。
恐らく街の端から端まで楽しんだだろう。
「ふあー!疲れたー!!」
エッシェルが左側のベッドに横たわる。
「でも楽しかったね!」
シエラが右側のベッドに横たわる。
「結局日が暮れるまで街を歩いてたな」
俺は部屋の隅にある椅子に座る。
勇者が来たとのことで街がお祭り騒ぎだったのもあって、かなり楽しかった。
「ふあー!!私眠くなっちゃった!」
「ボクも結構眠いな」
エッシェルとシエラは疲れ切って少し眠たそうにしている。
ちなみに俺はHPが高いのか、そういうスキルがあるのかは知らないがあまり眠くはなかった。
「あれ、そういえばこの部屋、ベッド二つしかなくない?」
シエラがはっと気付き、起き上がる。
「あ、ほんとだ」
エッシェルが起き上がる。
「大丈夫だ。俺は床で寝る」
「流石に今日も床で寝るのはダメだよ!!昨日だって私反対したじゃん!」
そういえばエッシェルもシェスタも反対してたな。
結局床で寝たが。
「昨日は床で寝たんだね……」
シエラが静かにツッコミを入れる。
「だから私が床で寝る!!」
エッシェルが言う。
「いや、お前が床で寝るくらいなら俺が床で寝る」
「私が床で寝るもん!!」
「……それならボクが床で寝ようか?」
シエラが言う。
気を遣ってくれたのだろうか。まあ気遣いなど必要ないが。
「私が床で寝るから大丈夫!」
「いや、俺が床で寝るから大丈夫だ」
「いや、私がーー」
「二人とも落ち着いて!!ボクが床で寝るから!!」
「床は私のものだもん!!」
「いや、ボクのだよ!!」
いやそれは違うだろ。
「俺が床で寝るのでいいから……」
「ボクが床で寝るから!!」
「私が床で寝るもん!」
「俺が床で寝るから落ち着け!!」
「いや、私が!!」
「ボクが!!」
〜〜〜30分後〜〜〜
やっと争いが終わった。後から考えると何故こんなに争っていたのだろうかと思う。
言い争いが終わった後、俺たちはすぐに寝ることになった。
結局、俺は左側のベッドに居る。
そして右側のベッドにはシエラが居る。
エッシェルはと言うと……
左側のベッドに居る。
これは、言い争いを始めて25分後くらいに突然エッシェルが提案したのだ。
「だったら私はタケルと同じベッドで寝る!!」と突然エッシェルが言い出した。
それに対してシエラは「え!?ま、まあ変なことしないならいいよ?」と返した。
いいのかよ。というか俺の意見はどうなるんだよ。
そしてそれに対してエッシェルが「シエラが居るから変なことはしない!」と言った。
居なかったらするのかよ!!!そう思った。
そして俺が意味のわからない会話に戸惑っていたせいで意見が何も聞かれないうちに、その案が採用されてしまった。
「ふにゃぁ……」
エッシェルが突然俺の肩に手を回してくる。
ちなみにさっきから俺の心臓は暴れ回っている。
床より寝れねえええええええ!!!!!!!!!!!!
シングルサイズのベッドにエッシェル二人で寝ると聞いた時点でこうなることは薄々分かっては居たが、予想以上の破壊力だった。
「へへぇ……」
エッシェルが突然抱きついてくる。
ああああああああああああああああああああ!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?
可愛い。可愛すぎる。それに大きな胸が当たっている。いい香りがする。やばい。
俺は抱きしめたくなる手を無理やり体に貼り付け、静止させる。
朝起きたらくっついているのと最初からくっついているのではわけが違う。
だって今は夜だぞ。寝起きじゃねえぞ。ふざけんな。
そんなことを考えているうちに、朝日が昇りそうになっていた。
結局、その日の夜は街を歩き回った時よりも疲れた。
翌朝。
「二人ともおはよ……おおおおおおおお!?!?!?!?」
シエラの声で目が覚めた。
どうやらなんとか寝れたみたいだ。
……?何かがおかしい。
目を開くと、何も見えない。
というかなんか息苦しい。
「むごっ!?」
話そうとしても話せない。何か柔らかいものが当たって……
顔の前に何があるのか、手で確認しようと触る。次の瞬間。
「ひゃん!」
エッシェルの声が聞こえる。
!?!?!?!?!?
これはまさか……
もう一度手で触ってみる。
「ひゃ!だめだよ……朝からそんな……」
ああ。分かったぞ。これ胸だ。
…………胸!?!?!?!?!?!?!?!?
それから十数分後。なんとかシエラを説得し、俺たちはリビングのような控え室のような場所で、シェスタと一緒に朝ご飯を食べていた。
「それで、貴方達は結局どんな風に寝たの?」
シェスタが意地悪な目で見てくる。
人数とベッドの数を揃えなかったのわざとかよ。
「私とタケルが同じベッドに寝たよ?」
エッシェルが平然と答える。
よくそんなに普通に答えられるな。
「あらそうなの」
シェスタが少しにやけてこっちを見てくる。くそ。お陰で睡眠不足だ。
「それで緊急クエストのことなのだけれど、あれは中止にしておいたわ」
シェスタが言う。
良かった。きっと俺より強い冒険者など山ほどいるのだろうが、他の冒険者に俺の魔法とかが見られると厄介だからな。
「それは良かったが、いつ魔人が来るのかが不安だな」
魔人が来るまで俺は睡眠不足を連続で強いられることになる。それは嫌だ。
……まあ一緒に寝るのは割と悪くなかったかもしれないが……
俺には刺激が強すぎた。
「そうね。来るかすら分からなーー」
「大変です!!魔人が襲撃して来ました!!」
突然受付の人が扉を勢い良く開けて来る。
「来たのかよ!?!?!?」
思わず言ってしまった。
相変わらず行動が早い魔人だな。
「よし、行くぞ!」
「「うん!!」」
俺たちはすぐに立ち上がり、応戦しに行った。




