とうとう奇跡に会いました。
「どうして……逃げてって言ったのに……」
エッシェルがぺたんと地面に座り、涙を流す。
「そんな簡単に逃げるわけがないだろ」
「でもどうして助けになんか……」
「お前は、俺に初めて出来た大切な仲間だからな」
初めての大切な仲間とは、この世界での話ではない。前の世界も含めての初めてだ。
あらゆる人々に避けられ続けた俺を、エッシェルのあの言葉がどれだけ救っただろうか。
だから、今度は俺が救う番だ。
「ありがとう……」
エッシェルが涙を袖で拭う。
「な、何故あの魔物を素手で倒せた!?一体どんな小細工を!?」
魔人が言う。
「ただちょっと新しい魔法を見つけてな」
身体強化。今俺自身にかけているのはここに駆けつけている時に知った魔法だ。
投入する魔力に応じて身体能力を大幅に強化できる。ちなみに今回は3000MPだ。
「身体強化!!」
エッシェルにも身体強化を付与する。
「エッシェル、俺と一緒に戦ってくれるか?」
エッシェルに手を差し伸べる。
エッシェルはその手をしばらく見つめ、涙目になって言う。
「もう……ずっと待ってたんだから」
エッシェルが手を取り、立ち上がる。
「囲め!!」
魔人がそう言うと、魔物達が俺たちを取り囲んだ。恐らく全方位から攻撃をするつもりだろう。
だが、そんなものは今の俺たちには通用しない。
「炎の剣よ、我が身の前に!豪炎の剣!!」
エッシェルが炎の剣を構える。
「やっちまえ!!」
魔物が一斉に飛びかかって来る。
「おらあっ!!!」
俺は魔物を全力で殴り飛ばし、絶命させる。
「やあっ!!」
エッシェルは華麗に攻撃を避け、魔物を両断する。
何体もの魔物があらゆる角度から攻撃して来たが、俺たちが背後から攻撃を受けることはなかった。
俺たちはお互いの背後を守るように、背中合わせで戦っていたからだ。
「やあっ!!」
「おらっ!!」
「はあっ!!」
「てやあっ!!」
身体強化の効果もあって、俺たちは魔物を順調に倒していく。
その動きは、まさに一心同体と言える程揃っていた。
その才能のせいで誰にも手を取ってもらえず、孤独になった少年。
その才能のせいで誰にも手を差し伸べてもらえず、孤独になった少女。
そんな二人が出会って生まれた絆に、隙などあるはずもなかった。
「ええい!!同時にかかれ!!」
魔人が指示を出す。恐らくバラバラに攻撃しては防がれると思ったのだろう。
魔物達はその指示に従い、俺たちを一斉に襲う。
「エッシェル、伏せろ!」
「うん!」
魔物達が俺に同時に襲いかかる。
ー自動反撃ー
「グルアアアアッ!!!!」
魔物達が一斉に弾かれ、少しの間宙に浮く。
「今だ!!」
俺はエッシェルにそういった直後、かがむ。
「やああああっ!!!」
エッシェルが魔法で剣を長くし、宙に飛んでぐるりと一回転。
俺に弾かれ、ただ宙を舞っていた魔物達に当然避けるすべはなく、全ての魔物が真っ二つに両断された。
「冗談……だろ……?」
魔人が目の前の事実を受け入れられず、一歩引く。
「どうだ。これが俺たちの実力だ」
「くっ……」
魔人が悔しそうな顔をする。
なんだかとても清々しい気分だ。
「まだだ……」
まだ……?
「まだこんなんじゃ終わらない!!すぐに貴様らを後悔させてやる!!!!!」
魔人がそう言い残すと、すごい速度で森に消えていった。
まだ攻撃してくるつもりなのか……
「勝てたね」
エッシェルがほっとして、言う。
「ああ。なんとか助けが間に合ったみたいで良かった。諦めずに待っててくれてありがとな」
「ずっと待ってたんだから」
エッシェルが再び頰に涙を流す。
奇跡が訪れる可能性がどれだけ低くても、どこか心の中では待っていた。
エッシェルはほんの僅かの希望をずっと待ち続けていた。
"待っててくれてありがとう"
今かけられたこの言葉は、魔物と戦う時に助けを待っていたという意味で使われたことはもちろん分かっている。
それでも、何故かあの1000年間が報われたような気がしたのだ。
"あの1000年間は無駄じゃなかった"
そう言われている気がしたのだ。
「どうして泣いてるんだ?」
「嬉しくて、だよ」
エッシェルが俺に笑顔を送る。
「それなら良かった。ほら、シェスタ達が待ってるぞ!!」
「うん!!」
俺はエッシェルの手を引いて走り出す。
そしてエッシェルは、俺の手をぎゅっと掴んで走り出す。
いつもよりもずっとずっと強く。
もうその手を、決して放してしまわないようにーーーーーー
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