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とても忙しい朝でした。

チュンチュン。


鳥のさえずりが聞こえる。

どうやら朝が来たみたいだ。


「うっ……」


背中が痛む。

そういえば俺、床で寝てたんだったか。

確か昨日、3人で泊まるのにベッドが二つしかなかったことに気が付いて、俺が床で寝ることにしたんだった。


「流石に床で寝ると体が……」


体を起こそうとするが、起きない。

それこそまさに何か重い物が乗っているような……


「あ」


仰向けになりながら下を見ると、寝ぼけたエッシェルと目が合う。


「…………」


何故か何も言わずにぼーっと見てくる。


「おはよ」


しばらく時間が経ったのち、エッシェルが言う。


やばい。かわいい。

寝ぼけてとろんとした目でそんなに俺を見つめないでくれ。

それに胸も当たっている。

初日はなんとか朝ということもあって平常心を保ててたけれど、今日は昨日のこともあって平常心が一瞬で音速で窓からどこかに飛んでいった。


「あ、あの……」


ぼーっとこっちを見つめているエッシェルに言う。


エッシェルが瞬きをし、自分がどこにいるのかを確認する。

そしてすぐに俺の上に乗っていることに気がついたようだ。


あ、これ殴られるやつだ。


俺は目を瞑り、ビンタされるのを覚悟する。

しかし、エッシェルのビンタが来ない。


「もー。また私のところに来たの?」


いやそっちから来たんじゃ……

というか何故エッシェルは顔を赤くしているん…


「もう、仕方ないなあ。でもタケルなら、いいよ?」


エッシェルが顔を赤くして、目を潤わせながら言う。


!!!?!??!?!?!??!?


突然の予想の垂直上方な答えが来て、俺の中の何かが弾けた。

少し気を抜いたら理性が平常心とともに空の彼方に飛んでいきそうだ。音速で。


「イ、イッタイナニガヨロシイノデショウカ」


「初日だって恥ずかしかっただけだし……」


俺は何かの夢を見ているのか!?!?!?!?!?


「だから……」


吐息の荒いエッシェルの顔が近付いて来る。


あああああああああああああ理性があああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!


「あら〜。朝からお熱いわねぇ〜」


聞き慣れた声がする。

はっ!!!!この部屋にはシェスタも居るんだった!!!!!


「ふぇ」


エッシェルが振り向くと、シェスタと目が合った。


「ひゃああああああああああああっ!!!!」


バシィン!!!!!


何故か俺がビンタされた。

魔力のこもった強烈な一撃だった。




「それでは皆さん、今から街のギルドに帰還します!」

「街では厳重な警戒態勢が取られているので、しばらくの間、街から出ないようにして下さい!」


朝支度を済ませた後、シェスタが冒険者達を集めて言う。


「「「「「はい!!」」」」」


冒険者達が威勢のいい返答をする。


どうやらしっかりログハウスで休養を取れたようだ。


その後、俺たちは街に向けて歩き出した。


「あの魔人、また襲撃をするみたいな口ぶりだったが、あの街で襲撃に耐えられるのか?」


道中、エッシェルに話しかける。


「いや、多分難しいと思う。多分あの強化された虎の魔物が数十体で街を襲うから」


なるほど。やはり街は今まさにピンチと言える状態にあるということか。


「それに魔人が出たって情報が王都まで伝わって、それで援軍が到着するまでの時間は流石に魔人は待ってくれないと思う」


なるほど。絶体絶命だな。


「いつ頃に襲撃して来る可能性が高いか分かるか?」


「うーん、流石にいつかまでは……」


そんなことを話しながら草原を歩いていたその時。


「グガアアアアアアア!!!」


聞いたことのある凶悪な魔物の声が聞こえた。


すぐに声が聞こえた方、右側を見ると。

大量の虎の魔物、そして宙に浮いた魔人が凄まじい速度でこちらに接近して来ていた。


「早すぎじゃね!?!?」


思わず声を上げてしまった。


それに驚いたのは襲撃の早さだけではない。

凶暴な虎の魔物の数が、昨日とは比べものにならないくらい多いと言うことだ。

40、いや50は居るだろう。

昨日の戦いぶりからして、この戦いに恐らく勝ち目はない。

それは俺とエッシェルだけでなく、此処にいた全ての人が思っただろう。


「逃げて……」


「え?」


「逃げて!!」

「タケル、みんなを連れて今すぐ逃げて!!」


エッシェルがかなり険しい顔をして言う。


「お前を置いて逃げるわけには…」


「私には責任があるから。デーモンとして、そして魔王として」


どうやらエッシェルは魔王として責任を感じているようだ。


「これは私がどうにかしなきゃいけないから。だから行って」


エッシェルがこっちを見る。

エッシェルの目は必死だった。きっともう何を言っても聞かないだろう。


「……ああ。ここは任せたぞ」


俺はみんなを街に送ることにした。




「よし。行ったね」


エッシェルが他の全員が街に行ったことを確認する。


「おっと!!ここに残ったのは君だけかい?」


魔人が言う。


「そうだよ。貴方達は私がここで食い止める」


「ハッハッハッ!!面白い冗談を言ったものだ!!止められるものなら止めてみな!!」


まず魔物が一体、エッシェルに飛びかかる。


「地獄の業火!!」


エッシェルが魔法を放つ。

これは昨日魔物に効いていなかった魔法だ。


「ハッハッハ!!その魔法が聞かなかったことを忘れたのかい!?」


魔人が言う。


だが、煙が晴れた時には、魔物は絶命していた。


「なっ……」


魔人の顔が驚きに染まる。


「あの時はみんなが居てあまり力が出せなかった。でも、今なら出せる」


そう。エッシェルは昨日、自分がデーモンだとばれないように出力をおさえていたのだ。


「貴方は私が倒す。なんとしても止めてみせる」


「まさかあの時が本気じゃなかったとはな!!だがこれならどうだ!!」


魔物達が一斉にエッシェルに襲いかかる。


「はっ!!」


エッシェルが高く跳び、避ける。


「今此処に煉獄の炎を呼び覚ます!!」


エッシェルが唱え始めると、エッシェルの周りに魔力が満ち始める。

この呪文は、エッシェルが今できる中で最も威力が高い魔法の通常詠唱。

もし仮に試験場にこの魔法を撃っていたら、ギルドの建物は間違いなく崩壊していた。


「穢れし魂を浄化せし、神の炎の制裁よ!!」


エッシェルが魔物の攻撃を華麗に避けながら詠唱を続ける。

エッシェルの周りにいくつもの真っ赤な魔法陣が形成され、赤い光を帯びてゆく。


「貫け穿て、焼き尽くせ!!!」


エッシェルが高く飛び、魔物に手をかざす。

そして、エッシェルが魔物にかざした手の周りに巨大な赤い魔法陣が何重にも形成される。


「煉獄の炎!!!」


次の瞬間。

エッシェルの手から、今までの魔法とは比べものにならない威力の炎が、魔物に向けて放たれた。

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