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月が綺麗な夜でした。

「タケルさん、最初に使える属性は火と水と風と土って言ってたのにその後に光属性と空間属性を使ったわよね?」


「あー、えっと、実は俺火属性と光属性と空間属性しか使えないんだ」


簡単な話だ。別に水と風と土は使ってないから、使えないことにしてしまえばいいのだ。


「あらそうなの。そんな貴方に良い物があるのよ」


シェスタがそう言うと、さりげなくずっと持っていたバッグの中から大きめの石板を取り出す。


「これは……」


石板には魔法陣のようなものが描かれており、その魔法陣の周りに赤、青、緑、茶、黄、紫の6つの宝石が埋め込まれている。

俺の予想が正しければきっと俺はピンチだ。


「この石板はね、真ん中に手を当てた人の使える属性がわかるものなのよ」


やっぱりそうだったか!

いや、でも石板が前みたいに砕ければ嘘は発覚しないのでは……


「安心していいわ。この石板は魔力を測定するものじゃないから砕けないの」


対策済みだった!!!!!


「えっと、で、でもどうせ使える属性が分かってるから別に測定する必要なんてないんじゃないか?」


「そんなことないわよ?本当に水と風と土も使えないのか分かるじゃない」


まずいな。属性のせいで職業を何個も持っていることがバレたら色々と問題がありそうだからな……


「ほらっ!!」


シェスタが突然俺の手を掴み、無理やり石板に置く。


「あっ」


直後、石板にはめられた全ての宝石が輝いた。


「あら……驚いたわね。まさか全属性使えるなんて」


「タケルすごーい!!全部使えたんだー!!」


まずい。バレてしまった。


「というかタケルさん、どうしてこんなに属性が使えるのに全部言わなかったの?」


「流石に全部使えたら異端視されるだろ?多分」


「別に凄いだけで異端視はされない思うのだけれど……」


「え?」


「別に全属性使えるのは理論上はありえるわよ?ただ途方もないくらいすごく珍しいだけで。まあ確かに普通の人が知ったら腰を抜かすかもしれないけれど」


まじかよ。俺は今まで隠さなくて良いことも隠してたのかよ。


「ってことは使える属性は別に隠さなくても良いってことか?」


「ええ。別に隠す必要なんてないわ。それに私はギルド長よ?ギルド長に隠し事なんて良くないわ」


属性を隠していたのは無駄な努力だったのか……


「そうか。じゃあせっかくだしシェスタには使える属性を全部伝えておくな。」


ギルド長くらいには全部言っておいた方がいいだろう。

俺は自分の目の前にステータスのウィンドウを出す。


「いや、私はもう貴方が使える属性知って…」


「えーっと、俺が使えるのは火属性と水属性と風属性と地属性と光属性と闇属性と時間属性と

空間属性と無属性と古代熱属性と古代氷属性と古代大気属性と古代生物属性と

古代神秘属性と古代死属性と精霊属性だ。」


俺はウインドウの属性にある欄の文字を読み上げる。


「………………」


何故かシェスタが固まっている。


「どうした?」


「どうしたじゃないわよ!!なんで時間属性まで使えるの!?それに無属性って特殊魔法じゃないの!!後半に関してはそんな属性聞いたことないわよ!!!!!!」


「全部使えてもおかしくないって言ったのはシェスタの方じゃ……」


「六属性に限った話よ!!!!!」


うーむ。一体何が話して良くて何が話しちゃいけないのか分からない。


「すごーい!!タケルって古代魔法使えるの!?」


エッシェルが言う。


「古代魔法?」


「エッシェルさん、まさか古代魔法ってあの古代魔法のこと!?」


「なあ、古代魔法ってなんだ?」


「タケルさんが使えるんじゃないの……?」


「いや、えっと、その古代魔法が世間ではどういう扱いになってるのかなと……」


「じゃあ説明してあげるわね。古代魔法は今多くの宮廷魔術師達が研究をしている古代文明の魔法よ」

「古代魔法は長い呪文が特徴で、どの古代魔法も略式詠唱ができなくて、詠唱に時間がかかる分とても強力な魔法が放てるらしいわ」

「特殊な魔法文字や魔法陣、そして魔力が必要だからまだ全然解明されていないのだけれど……」

「タケルさん使えるの……?」


「ああ。多分使える」

きっと上位職とかの中に古代魔法を使う奴があったのだろう。


「もう驚きを通り越した上で呆れすら通り越すわね……流石にそれは異端視されてもおかしくないわ……」


よし。上から7番目以降の属性は公開しないようにしよう。


「というかエッシェルさんよく知ってるわね。宮廷魔術師と国の偉い人たちしか知らないと思ってたわ」


「えっへん!!」


魔王の知恵袋といったところなのだろうか。


「まったく貴方達相変わらず常識はずれねぇ。」


シェスタがゆっくり立ち上がり、出口の方に歩いてゆく。


「貴方達といると疲れるから他の冒険者達を見てくるわね。」


そう言い残すと、シェスタがログハウスの外に出て行った。




「行っちゃったね」


「ああ」


エッシェルがベッドの上で何かないか周囲を見渡す。


「あ!こっから月が見えるよ!!」


エッシェルが立ち上がり、窓の方に走ってゆく。


「本当か?」


俺も窓の方に歩いてゆく。

この世界にも月という存在はあるのだな。


「ほら!!」


エッシェルが指差す先には、日本で見た月よりも倍以上大きい、幻想的な満月だった。


「本当だ。綺麗だな」


「ねー!」


きっと月を見てこんな風に綺麗だと思うなんて、もしこの世界に来ていなかったら一度も無かっただろう。天使に感謝だな。


「いやー。まさかタケルが古代魔法を使えるなんてびっくりしたよー」


エッシェルが月を見ながら言う。


「あのね、タケル」


「なんだ?」


「私結構魔法に自信があってね、毎日練習してたんだけど、タケルの方が全然凄くて驚いちゃった」


エッシェルがそう言った瞬間、俺の頭の中に過去が蘇る。





ーーーーー「なあ水谷!!お前剣道部入れよ!!」


俺が中学に入りたての時、入学式で知り合った同級生に言われる。

この一言から、全ては始まった。


「うーん、別に入ろうと思ってた部活とか無かったし、入ろっかなー」


俺は特に理由もなく、言われるがままに剣道部に入った。


「よっしゃ!!お前俺と一本勝負しようぜ!!」


同級生に言われる。


そして俺は剣道を初めてやった初日、同級生と剣道で勝負をし、完敗した。


「剣道始めたばっかにしてはなかなかやるな!!」


同級生が言う。


それもそのはずだ。その同級生は小さい頃から剣道をずっとやって来ていた。俺よりも同級生が強いなど当たり前の事実であった。

しかしそうとも知らない俺は、その日悔しくて、ずっと剣道の練習をしていた。


そして次の日。


「なあ。勝負しようぜ。」


俺は同級生に勝負を持ちかけた


「まさか水谷から言ってくるなんてな!いいぜ!」


そして俺は、同級生に圧勝してしまった。


「も、もう一回だ!!」


再び圧勝した。


「もう一回!!」


また圧勝。


なんども戦った後、同級生がとうとう地に膝をつく。


「なんで……なんでお前に負けなきゃいけないんだよ!!!お前始めたばっかじゃないのかよ!?!?」


俺は同級生が言っていることが理解できなかった。

何故なら同級生が小さい頃からずっと剣道を磨いて来たと言うことを知らなかったからだ。

だから、同級生も剣道を始めたばかりだと思っていた俺はこう言ってしまった。


「もちろん俺は昨日が初めての剣道だったよ。でもよかった。お前に追いつけて。」


始めたばかり同士の僅かな差を埋めた、俺はただそう思っていた。

だがその一言で、今までも、そしてこれからも剣道で生きようとしていた同級生の中でプツン、と。何かが切れた。


「俺は今まで剣道をずっとやって来て、剣道に自信があって、毎日練習してたんだよ!!なのに、どうして始めて二日のお前の方が凄いんだよ!!!!」


そう言って、友達は防具を脱ぎ捨て、泣きながら剣道場から出て行った。


そしてそれ以来、その友達が剣を持つことはなかったーーーーーーー





"妬ましい"

"憎らしい"


あれ以来、同じようなことを繰り返してしまった俺は次第にそう言われるようになった。

もちろんそれは因果応報だ。俺は毎日練習してるとも、自信があるとも知らず、多くの人に勝ってしまい、傷つけた。

俺の中の"才能"という凶器が他人を傷つけたことに気付いた時にはもう俺の周りに人なんて居なかった。


別に俺は勝ちたんじゃない。

ただ俺は仲間が欲しかった。

だからいろんな人に手を差し伸べた。

それでも、全ての人が俺を妬み、誰も俺の手を取ってはくれなかった。


エッシェルの言葉を聞いて、俺は胸がズキンとする。

せっかく出来た大切な仲間を守ろうとしていた俺は、無意識のうちに傷つけていたのだ。

世界を変えてまでも俺は同じ過ちを繰り返してしまったのだ。


「すまない」


俺は後悔に身を焼きながらうつむき、エッシェルに謝る。

とは言っても謝ったところで意味など毛頭ないだろう。

エッシェルは経緯は違くても、俺と同じ孤独を抱えているような気がした。

だから俺はエッシェルに手を差し伸べた。なのに結局傷つけてしまった。


しかし、そう思っていた俺に予想外の返答が来る。


「どうして謝るの?」


どうして……?俺は思わずエッシェルを見る。

そんなの決まってるじゃないか。


「特になんの努力もしてないのに、エッシェルの気持ちもわからず軽く追い越したからだよ。」


「だとしてもどうして謝るの?」


どうして……?

そんなの分かりきってるじゃないか。


「お前は俺が妬ましくないのか?憎らしくないのか?嫌いになったんじゃないのか?」


「そんなわけないじゃん!!」


そんなわけ……ない……???


「どうして……」


「だって、タケルは……タケルは私を救ってくれた、私に初めて出来た大切な仲間だもん!!」

「妬ましいなんてありえないよ!!心強いの間違いだよ!!」


"妬ましいなんてありえない"

"心強い"

エッシェルの言葉が俺の中で響き続ける。

俺はやっと、本当の仲間だと心の底から思える人に出会えたのかもしれない。


「そんなタケルを嫌いになるわけないじゃん」


その時、月明かりに照らされたほんの少しの涙を浮かべたエッシェルの笑顔が、俺の心の奥を初めて照らしてくれた気がした。


「ありがとう、エッシェル」


俺は無意識のうちにエッシェルを抱きしめていた。

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