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狩る魔物を間違えてたみたいでした。

「なんとかギリギリで気付けて良かったな!!」


「うん!試験受けてる途中ってことすっかり忘れてたよー!」


俺とエッシェルは冒険者ギルドへ必死に走る。


「それにしても、最初は勇者だって聞いてびっくりしたけど優しい人だったね!」


「ああ。最初は逆らったら斬られるくらいの厳しい感じだと思ってたけど、全然そんなことはなかったっぽいしな。」


俺たちはシエラのことを思い出す。まさか勇者が美少女だったなんて思いもしなかった。


「聖剣を出された時はひやひやしたよー!!」


「やっぱりデーモンだと聖剣のあの光に弱いのか?」


「うん。あの光は不死身の魔物すら倒せちゃうからねー」


「不死身の魔物なんているのか?」


「一応いるよ。めったにいないけどね」


聖剣がなかったら人類終わってたな……


「あ、あれギルドの看板じゃないか?」


街並みに冒険者ギルドの看板が見えてくる。


「ほんとだ!時間はあとどれくらい?」


「えっと……」


俺は意識を集中させる。


現在時刻:17時59分49秒


「まずい!!あと11秒しかない!!」


「ええ!?はやく行かなきゃ!!」


「もうあの塀を飛び越えよう!」


俺たちの視線の先には、冒険者ギルドの横の細い道の奥にある、午前中に魔法や剣の試験をしていた会場の塀があった。


「おりゃあ!!」


「えいっ!!」


俺たちは塀を飛び越え、無理矢理試験会場に戻る。


「あぶなかったー!!」


「間に合ったか…?」


塀を飛び越え、着地した先には懐中時計のようなものを持ったシェスタが居た。


「間に合いましたよ。あと2秒でしたけどね」


シェスタがため息をつく。


「やったー!!」


「危なかったな!!」


「もう少し余裕を持っても良かったんじゃないんですか?」


「すまんすまん。試験の最中ってことを忘れてて」


「まったくもう……」


シェスタは呆れた表情をし、集まった冒険者達の前に置いてある机の前まで行く。


「それではみなさん、集めた魔石を持って来てください」


シェスタがそう言うと、冒険者達は列を作り始めた。


「午前中しか集められてなかったが、魔石足りるか……?」


「うーん…とりあえず他の人の魔石を見てみたら?」


「そうだな」


俺たちは列を成した冒険者達の一番後ろに並ぶ。


「それでは一番前の人から魔石を提出して下さい」


「これが俺が集めた魔石です!」


最初の冒険者が懐から布の袋を出し、魔石を机の上に置く。


その冒険者が取り出した20個程度の魔石は赤や青、緑など様々な色があったが、どれも大豆程度の大きさだった。


「なんか私たちが集めたやつと大きさ違くない?」


エッシェルが俺に言う。


「多分魔石の質によって大きさが変わるんだろう」


「大きいのと小さいの、どっちが質がいいんだろー」


「宝石とかでも大体小さいやつの方が価値が高かったりするし……やっぱり小さい方が質がいいんじゃないのか……?」


「えー!私たちが集めた魔石あれより大きいのしかないよ!どうしよー!」


「確かに俺たちが倒したあの虎の魔物、かなり弱かったからな。もうそこは素直に謝るしかないだろ」


「そうだよねー……」


俺たちの前の冒険者達は、数はちがうもののみんな大豆程度の大きさの魔石しか集めていなかった。


「あら、次は貴方の番ですね。魔石を提出して下さい」


とうとう俺たちの番が回ってきた。


「俺とエッシェル二人で集めたんだが、結果を二人で割ることはできるか?」


「もちろんいいですよ」


「なら良かった。収納空間!」


俺は収納空間の魔法を使い、空間に紫色の穴を開ける。


「ちょっ、ちょ、ちょっと待って下さい!!」


シェスタが空間の穴に手を伸ばす俺の手を止める。


「こ、これは何ですか……?」


シェスタが紫色の空間の穴をもう片方の手で指差す。


「これってこの収納空間のことか?」


「収納空間!?!?それって伝説の魔法じゃないですか!!!!」


伝説の魔法……?


「伝説の魔法!?」


「そんなのお伽話でしか聞いたことないぜ……!」


なにやら冒険者達がざわついている。


「みんなできる魔法じゃないのか?」


便利だし結構初級な魔法かと思ってたんだが。


「そもそも空間属性の魔法が使える時点で伝説ですよ!!貴方空間属性も使えたんですか!?!?」


空間属性…あ、そういえばステータスにあったな。また上から4番目以内じゃない属性の魔法を使ってしまった…


「ま、まあ特殊な魔術師だからな……」


「あとでそれについてじっくり聞かせてもらいますからね」


「あ、ああ。」


あとでなんと説明すればよいのやら。


「それじゃあ気を取り直して、魔石を提出して下さい」


多分オレンジの魔石以外は出さない方がいいよな……

俺は紫色の空間の穴から手際よくオレンジ色の魔石を取り出す。


コトン、コトンとオレンジ色の魔石がどんどん机の上に置かれてゆく。


「こ、これは……」


シェスタがオレンジ色の魔石を手に取り、色々な角度から見る。


「これくらいだな」


俺が全てのオレンジ色の魔石を出し終わった時には、机の上に軽く魔石の丘が出来ていた。


「…………」


シェスタが言葉を失う。


「その、なんか他の人たちと違う魔物を狩っちゃったみたいですまんな。それにこんな質の低い魔石ばっかで…」


「どこでこれを集めたんですか!?」


シェスタが突然俺に迫る。


「え?あっちの森だが……」


俺は虎の魔物を狩った森がある方向を指差す。


「危険指定区域に行ったんですか!?!?」


「危険指定区域?」


「まさか知らないんですか?」


「すまん、知らん」


「貴方達が行った方向の森は危険な魔物達が大量発生しているため危険指定区域になってるんです!!」


「あー。道理で同じやつばっかだったのか」


虎の魔物にばかり遭遇してたのはかなり運が良かったかもしれないな。もし危険な種類の魔物に遭遇したら危なかった。


「こんな数どうやって倒したんですか!?」


「魔法だと加減ができないから普通に素手で」


「素手!?!?!?エッシェルさんは!?」


「私は魔法で焼いたよ?」


「そんな簡単に倒せるはずがないんですが……」


シェスタが再び手に持っているオレンジ色の魔石、そして机の上に置いてある大量のそれを眺める。


「ま、まあ無事ならいいです。次からは危険指定区域には入らないで下さいね」


「お、おう。わかった」


俺とエッシェルは元の位置に戻り、座る。


「なんとかなったみたいだね!!」


「ああ。間違えた魔物を狩ったとかで失格になるかと思ったぜ」


俺たちは安堵のため息をついた。

魔術師を名乗るのに素手で魔物を殴り飛ばす主人公…

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