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名もない島  作者: ウサミン大佐
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1人の被験者の話

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社会人として働き出して10年、今年28となり30が目前に迫ってきた佐藤健介(けんすけ)はため息を吐いた。

頼りない光を闇夜に浮かべる街灯は、時折瞬いている。

見えてきた健介が住むアパートを見上げる事もせず、ひたすら地面を眺めて歩いた。


健介がため息を吐いているのは、自分が推していたアニメが終了したからだ。

それも、国からの圧力により。


現在日本の創作物は、海外の主にキリスト教等から強い批判があったため、多くの規制にかられており。

健全な人間に必要不可欠なアダルトな方面にも強く規制されたのだ。

彼らの押し付ける、健全な思想という差別により。

日本政府が言いなりになった結果、性的な表現規制と共に日本国内の性犯罪は上がって行く、それこそが彼ら宗教者が望んだ答えなのだろう。

仮想の異性への行為よりも、相手の意思を無視してでも行われる現実の行為の方が、彼らは好むのだから。


最近は学生時代からの友達とも会う事が少なくなり、親しくもない会社の同僚の付き合いばかりである。

心の底から笑ったのは何時だったか。

不満と共に吐かれる息は、盛大なため息となる。

もう中年とも言える時期に差し掛かる自分を、自嘲気味に笑いながら健介はポストを開けた。


中に入っていた広告を無造作に掴むと、ポケットから自宅の鍵を取り出し開ける。

真っ暗な部屋は、出迎えてくれる者はいない。

電気をつけてソファに潰れた健介は、何故だか無性に心が荒れてしまう。

辛さや悔しさ、悲しみや侮蔑。


「幼女になりてぇ」


ポツリと健介は零した。

幼女になってちやほやされ、子供時代の長い1日を過ごしたい。

そう言った願望が生まれてしまうのは、精神的にも疲れ切っているのだろうか?

答えは否だ。

例えリゾート地区のビーチのパラソルの下でも、健介は同じ事を呟いたであろう。


勘違いしてはいけないが、健介はロリコンでは無い。

あくまで幼女になりたいのであって、幼女をどうこうしようと言う意思は無いのだ。

それでも、前記した彼等は異端だと牙を剥くであろうが。


「こんな日は贅沢に限るぜ」


独り暮らしをすると、独り言が多くなる。

そんな言葉を思い出した健介は、苦笑いしながら無造作に放り投げられたチラシに目を落とす。

目当てはピザの広告、独り暮らしの男は高価な配達ピザを普段は食べないのだ。

広告のチラシには、割引きクーポンが乗っている事も高い為、贅沢するにも小心で金が無いのだが。


ピザの広告を手に取り、手元に寄せようとすると、ヒラリと1枚の封筒が膝の上に落ちてきた。


“貴方は魔法少女になりたいですか?”



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