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ズィミウルギア  作者: 風月七泉
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【オン64】イベント騒ぎは大騒ぎ



 皆でお喋りしながら歩いて移動したからかもうゲーム内時間ではお昼くらい。


「家に居ながら西洋の街を探検とはのぉ、時代が変わったもんじゃ」


「歩くのも荷物は運びも楽で良いですよね」


 門を皆で潜りながら爺ちゃん達が一々外壁を触って確かめて、手に伝わる感触を楽しんでいる。


 インベントリを使った時のハーナさんの反応が、すっごく気になる。


 あの能力は絶対に現代の主婦達が一番に欲しがるだろうからね。


 いや、誰でも欲しがるかな。原木すら運べるんだから。


「爺ちゃん達はどうする? 一応は集落の為に金策案を模索するって感じだけしか決めてないんだけど」


 徐にティフォが爺ちゃん達に寄っていき、どうするかの相談を始める。


「ふむ、ワシらは別途で動こうかのう。ハーナとのデートも兼ねて」


 むしろ後者の方がメインだろうと、誰もツッコミを入れずに言葉を飲み込んだ。


 下手に踏み込んで、目の前で甘々の雰囲気を出される事を望む者は居ない。


「やだよぉもう、そんな年でもないだろうに……じゃあティフォナスちゃん達。私達は別行動で好きに動くからさ、気にしないで楽しんできな」


 ハナ婆ちゃんもしっかりと乙女だよ。


 恥ずかしそうにしながらも、しっかりとダイチ爺に寄り添い腕を搦めている。

 

 普段はあんな感じに擦り寄ったりしないのに。


「仲の良いご家族ね。羨ましくなっちゃうわよ」


 ケリアさんがダイチ爺達の背中を眺めながら、うっとりとして見つめていた。


 オレ達に手を振って、街中へと消えていく。


「あそこまでイチャイチャしてんのは、流石に予想外だったぞ」


『お爺ちゃんより、ハナさんの方がすっごく楽しんでるね』


 ゲーム内だとハナ婆ちゃんが可愛い位にはっちゃけている気がするね。


「青春だね~、いつまでも若くってヤツだね」


 シュネーがなんか頭の上で、良いねっと言いながら応援していた。


「さぁさぁ、こんな所で突っ立っていた邪魔でござるよ。早くギルドに行って用事をすませるんだな。色んな所に行って聞き込みもしなきゃならないんだな」


 ダイチ爺達のやり取りのせいか、周りの人達の視線を集めてしまっていたようだ。


 ガウが皆の背中を押して、その事に気付かせてくれたので助かった。


「そうだね、受付嬢さんにも久しぶりに会う感じだね」


『元気かな?』


 明るく元気な女性だった思いでしかないけど。受付嬢さんって全員が美人さんだからな。


「あの人は風邪とか無縁そうだったけどな」


「第一印象が誇り被った受付嬢じゃあね~、あのインパクトは凄かったわね」


 美人ゆえに、ちょっと残念な感じの人だったから印象深く記憶に残っている。


 また不貞腐れて、机に突っ伏しているのだろうか。


「相変わらず、この辺は凄い人混みでござるな」


 プレイヤーが圧倒的に多いけど、村人も結構な人数が徘徊している。


「レアなクエストや、村人クエっていうのが取り合いみたいな状況だからね。仕方ないわよ」


 慌ただしく右往左往しているギルドの人や、村人がチラホラと見て取れるけど。


 こんなに混んでたかな、依頼を出しに来たとかにしては、ちょっと村人の数が異様に多い気がするんだけど、気のせいだろうか。


「あっ居たよ~、やっぱり相変わらず机に突っ伏して暇そうにしてるね」


 前に来た時の記憶と比べていると、シュネーがいち早く受付嬢さんを見つけて反応した。


『それじゃあ行こうシュネー』


 二人で一緒に受付嬢さんの所まで駆け出す。


「それにしても、本当にこっちの受付はガランとしてるな」


「用があるのはファーマーだけじゃあ、しょうがないでしょう」


「拙者だってファーマーの知り合いは勿論のこと、見かけたことだってスノー姫だけでござるぞ、それだけ人数が居ないのでは受付嬢のあの状態も致し方ないんだな」


 三人はゆっくりとオレ達の後ろを歩いてついて来た。


「受付嬢さ~ん、お久しぶり~」


 暇そうにしている受付嬢さんの目の前にシュネーが飛んで行って、ツンツンと指先つ軽く突きながら、楽しそうに挨拶をしている。


「あっあぁ~、貴方達は⁉ 本日はどのようなご用件で」


 突っ伏していた顔をゆっくりとあげ、顔だけをこちらに向けると、瞼を何度も瞬かながらオレとシュネーを何度も視線が行き来する。


 そんな様子が面白くて、オレとシュネーが顔を見合わせて噴き出して笑ってしまう。


 一通り笑い終えてから、ボウガさんに貰ったポイントキューブを取り出してカウンターに置き、受付嬢さんに渡そうと背伸びして机に体を乗っける。


『コレってここで使えるんですよね』


 見開いた目で、じっとポイントキューブを見つめること数秒の沈黙。


「ポイントキューブ……えっ⁉ 本当に上手くいってるって事ですか」


 花でも飛び散らせそうな笑顔で、オレの両手をギュッと包み込むように握られた。


「受付嬢さん……あの、近いから」


 顔が間近にせまったシュネーが、馬を宥めるようにしながら声を掛ける。


「すいません。つい興奮してしまって」


 我に返った受付嬢さんが、慌てて手を放してくれる。


『仮ですけど、ボウガさんには少し認めて貰いましたよ』


 どうだと胸を張って見せると、受付嬢さんの反応は意外にも噴き出し笑いだった。


「そうですか、あの方が……よく頑張りましたね」


 良かったと安堵するよに、目じりに浮かんだ涙を拭っている。


『えへへ、まだまだですけどね』


 オレも嬉しくなって、照れながら言う。


「カ~ミ~ル。嬉しいの分かるけどね。ちゃんとお仕事しなさい」


 隣に座っている受付嬢さんが優しく微笑みながらも、注意をする。


「はぅ、すいませんでした」


『いえいえ、それでコレってどう使えば良いんですか?』


 ポイントキューブを受付嬢さんに手渡してみせる。


「お金と同じ感覚で構いません、ちなみにこの大きさですと千ポイントになります。拳サイズの青が千ポイントってことは、他にもあるの?」


 シュネーはポイントキューブで遊びながら、ヒョコッと顔を出して聞く。


「その通りです、この半分くらいのサイズが五百、欠片サイズが百から十といった感じですね。青ではなく、黄色になるとケタが変わってきます。最大は赤色のキューブですね」


 分かりやすように、実物を其々に並べて見せてくれる。


 机の上に置かれると、オレの身長だと見にくいのでティフォが持ち上げてくれた。


『ポイントで交換するモノって、一覧とかって見れますか?』


 オレがそう言うと、すぐに机の下からA4サイズくらいのパネルを取り出した。


「はい、こちらになります。え~っと、仮とはいえ現領主に認められた証をお持ちですよね。それをこちらのパネルへ翳していください」


『コレですね』


 アイテム欄から大事な物と書かれた場所から、ボウガさんに貰ったアイテム取り出す。


「おぉ~、パネルが光ってる」


 すぐにパネルに変化があった。


「そちらのパネルに表示されたモノが購入可能なモノになります。文字が黒くなっているモノは購入する事が出来ません。光っている文字が現在スノー様がご購入できるモノになります。他の機能もあるのですが、今は制限が掛けられている状態ですので扱えません」


「へぇ~、結構色々とあるんだな」


「原木や石材もセットで売ってるのね」


「普通に買うよりは安くなるようでござるな」


「ポイントで購入したモノは村の倉庫か、ご自宅、つまりホームに後日お送りいたします」


『それじゃあ、原木と石材……それに泉を作りたいんですけど』


「それですと、こちらになりますが……泉で良いのですか? 大きさは小くらいしか買えませんよ? 水源にはなりますが、井戸の方が安く済みますけど」


『はい、大丈夫です。それでお願いします』


「では、原木と石材のセットで三百ポイント。泉(小)で千ポイント丁度を頂きます」


「キッチリ全部のポイントを使っちゃったね」


「コレを見越して渡したんじゃないだろうな、ボウガさんって」



「ありえるわね、泉を買うのは予想外だったかもしれないけれどね」





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