【オンライン】379話:魅了とは敵も味方も虜にしてこそ⑥
「あら? しっかりと休憩できたのかしら」
ケリアさんが妙にテンション高く話しかけてきた。
「なんで此処にケリアんが居るん?」
「ふふ、もちろん衣装合わせに来たのよ」
〈衣装は別に装備すればピッタリになるのでは?〉
僕が聞くと、なんか得意げな感じで人差し指を左右に振り、
「あまいあまい、まだまだこの世界を理解していないわね」と、言われてしまった。
トレードで一人一人に専用の衣装を配っていく。
「ちょっとした細工は加えてあるけど、基本的な性能も高めになってるわよ。スノーちゃん達の御蔭で良い素材が手に入るようになってすっごく助かってるわ」
それに加えて従業員さんが居るので、お店の方は順調に軌道に乗っているという。
住人達にも大人気で偶に売り切れになる事もあるほどだ。
衣食住の最初の部分はケリアさんに頼りっぱなしになってしまっているけど、喜んでくれているなら何より。後は食と住だが、この辺はまだまだ発展中という感じである。
全部が手探りだから、上手くいかない部分も多く。トライアンドエラーの繰り返しだ。
ダイチ爺ちゃんやボウガさん達には頭が上がらないね。
「防御力も増してあるけど、一番のポイントはステージに合わせた魔法を操れる事ね」
制約を決めて扱う事で魔法が使える仕組みになっている、魔装という特殊な防具を作ってくれたらしい。僕やムーンちゃん達は楽器を鳴らす事が条件で、音楽の熟練度とテンションが連動して威力が変わってくるという。
魔法も攻撃というよりは、演出に特化したモノになっている。
普段からケリアさんがやっているモーションエフェクトみたいな感じで、光の結晶だったり氷や水の蝶々が舞ったりする。
シュネーは自然系で花を咲かせたり、熱くない炎を出したりも出来る。ちょっと幻影寄りの効果を扱えるらしい。使い方によっては僕等の幻影を生み出す事も出来ると言う。
僕も似た感じの事は出来るけど、現象的には蜃気楼になる。
名前にちなんだ感じで、氷の結晶や温度を操る感じになるそうだ。なんか皆のモノよりも扱いが難しそうなんだけど、そこは気にしないようにしよう。
「えっと、ありがとう?」
「衣装も可愛らしいし、すっごく気に入った。ありがとうござます」
「良いんですか、私達にもこんな性能の高い防具を……ケリアさんには出来るお礼なんて全然思いつかないんですけど……兄ぃを貸し出すくらいしか」
申し訳なさそうにしていたスズメちゃんが、チラッとティフォの方へと視線を送る。
「人を勝手に商品みたいに言うんじゃない」
「良いのよ、今回はこっちにも利益があるし。元々の素材はシャープちゃんの方から貰っているんだから気にしないでちょうだい。それに、自分が作った衣装で最大限に盛り上げてくれれば、アタシのお店の宣伝にもなるでしょう」
ケリアさんがハートを散りばめながら、ウィンクしてスズメちゃんに微笑んで返す。
「俺の衣装が一番派手じゃないか? 当日はコレを着て皆の前で歌うのかよ」
〈格好良いじゃん〉
「基準は赤でござるしな、炎の魔法が付与されているでござるぞ。ちなみに拙者は雷と光が扱える様でござるな。ドラムのリズムに連動する感じでござった」
ガウも貰った衣装を自慢するようにティフォに見せびらかす。
騎士のイメージを崩さない、男性が好みそうな衣装だった。




