【オンライン】316話:勝負と試合と勝敗の価値(24)
「それでは、サーカステントを掛けた勝敗を発表します」
中央都市から依頼されてきた人が大きく派手な装飾が付いた巻物を持ち、サーカステントの前にある広場に皆を集めて、物々しい感じの発表会が行われている。
「約五万人の差で、ラインライズの勝利になります」
初めに比べれば良い勝負にはなったのかな。
お客さんの人数だけでみれば、かなりの差があったはずだ、から追い上げて並んだ辺りからもうちょっと、創意工夫で並べたかもしれない。
「ねぇ向こうさんも全然喜んでる雰囲気じゃないよ」
シュネーが不思議そうに首を傾げながら言う。
「そりゃあそうでしょう。実質的な人数でみたらまけてるんだからね。スノー達が勝ちだけ見てたら普通に負けてたんじゃないかしら?」
お姉ちゃんはそう言うけど、初っ端から圧倒的な差が付いていたら、逆にもっと良い勝負が出来るよう。彼等に対して助言やら助っ人として色々と手を貸してたと思う。
〈試合に勝てても、こっちの実入りが無いんじゃあ勝っても意味ないよ〉
「んふふ~、そうよね。やっぱり私の妹だけあるわね」
「もう、その頭撫でて抱き着くのは禁止~」
「大丈夫よ、シュネーも一緒に抱きしめてあげるから」
「そういう問題じゃないの~」
柔らかく、良い匂いが鼻先を擽ってくる。力も絶妙で苦しくなく、逃がさない様にしっかりと抱きしめているんだから凄い。
「しかし、楽しく挑めたのはスノー達の御蔭じゃ。テントの事は残念であるが、悔いはない。本来ならこんなに良い勝負も出来ぬ筈であったからのう」
「良い仲間に巡り合えた様ね。サーカステントは約束通り貰っていくわよ」
「うむ、大事に使ってやってくれる事を願う」
ミスユ団長とお姉ちゃんが力強く握手を交わした。
「安心しなさい、大切に使わせてもらうわ。貴方達は、此処に残るって事で良いのね」
「ここの者達が受け入れてくれると言うてな、半信半疑ではあったがのう。この勝負を通して関わっていく内に、本当に妖怪である童達を歓迎してくれていると分かったのだ」
〈元々はこの土地って、モンスター達と共に暮らす人が多いからね、妖怪達が増えた所で誰も気にしないし、頼りになる住人が増えたって喜んでくれるだけだからね〉
「未だにボクらってウサギさん達と仲良くなろうって頑張ってるもん」
始めた当初に比べたら、随分と仲良くなった気はするけどね。
「ありゃあ、揶揄われているだけだと思うがな」
僕等がそんな話をしながら笑いあっていると、ラインライズのアイドルリーダー達がおずおずと、伏し目がちに前に出て来た。
「あの、今回は色々と申し訳ございませんでした」
「私達もまだまだ未熟で、色々と勉強になりました。ありがとうございます」
前にあった人達だと思うけど、急に頭を下げて謝られてしまう。
僕が戸惑って、お姉ちゃんの方を見るとウィンクだけされる。
「最後の最後には、お客さん達の心を掴む舞台演出を見せてもらいました。自分達は数日も舞台に立っていたのに、あの最後の一回だけで多くの人が貴方達のファンになったと言っているのを聞いて、目が覚めました」
「正直、全てにおいて負けた気分です。お客さんの数で勝てても、僕等のファンになってくれた人達は少なかったと思います」
そんな尊敬の眼差しで見られても困るんだけどね。
助けを求めようとしたけれど、僕だけでなくティフォもガウもアイドル達から、憧れ的な扱いを受けていて、僕とシュネーを助けに来れる雰囲気ではなさそうだった。
「こ、こういう扱いって、初めてで慣れないんだけどお姉様⁉」
「良い機会よ、二人とも慣れなさいな」
〈助けてくれないの⁉〉
「良いではないか、我等が御前が皆の憧れであるなど、中々にない事なのだぞ。童だってあの最後の舞台には心を踊らされた一人であるしな」




