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ズィミウルギア  作者: 風月七泉


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【オンライン】286話:サーカス団の思いと恋の行方(12)




 全体的にホームをアップデートしてしまったために、自分の家から追い出される形で敷地内から全員が放り出されてしまった。


 皆で下手な暴走はしない様にクギを刺しつつ、見張りとしてボウガさんとトワちゃんに監視を頼んでおいた。ボウガさん達には悪いが、後でキチンとお休みを上げようと思う。


 まぁそんな事もあり、サーカステントはとりあえずスルーして、一直線にフー先輩の牧場に顔を出したのだが、こちらも色々な人が忙しそうに動き回っている。


「……どうしたら、あの二人の仲が深まるのかしら」


 フー先輩は困った顔をしながら、頬に手を付いて唸っている。


 ミスユ団長は恥ずかしがってしまい会話が続かず、ズナミは口下手で自分から会話を振る事をあんまりしないから、なんとも微妙な空気が漂っている。


〈あの二人の演目を決めないと、先に進みそうにないね〉


「そうは言っても、ミスユ団長にある程度は頑張ってもらわねぇとどうしようもないぜ」

「そもそも、何が問題で上手くいかないんでござるか?」


 相性としては良さそうだとは思う。

 どうしてか噛み合わない原因があるはずだと、ガウは思いフー先輩に話を聞く。


「ん~、どっちかっていうと心の問題、的な? お互いに見つめ合えないのよ」


 どうもミスユ団長が恥ずかしがると、それが伝染するようにズナミも照れてしまう。


〈あの二人には大取で盛り上げてほしいから、今のうちに仲良くなっていてほしいんだけど……ダメそうかな、ちゃんと座長を務められそうかなミスユ団長〉


「いや、ある意味では上手くいっているから良いんじゃないか?」


「アレは上手くいっていると言えるでござるかぁ? 他の者達もかなり戸惑っているように見えるのでござるよ」


 そう僕等が遠目から観察していると、カサッ近くの草が鳴った。


「そう思うなら助けて下さい。二人を支える事は出来ても私も恋愛関係は解らず」


〈エリエさんは忍者さんかな?〉


 ほぼ草原で隠れる所なんて無い場所なのに、姿も見せずいきなり真後ろに現れないでほしい。一瞬だけど体がビクッと跳ねてしまった。


「エリエっち、何時の間に忍者になったの? 転職でもしたん?」


「鬼人であるズナミ様の部下の人に教えて貰ったんです。公演で私のパートナーになる人なんですよ。今はお互いの出来る事を確認と、技の教え合い中ですね」


「そのもう一人が居ないのですけれど? どちらにいらっしゃるんですか?」


 技を教え合っているという事は近くに居るはずだと、皆で周囲を見回すが何処にも見当たらない。


「ほら、恥ずかしがってないで出てきなさいよ」


 ポンポンと隣の芝を叩くと、ボコッと土の中から人が出て来た。


「どうもドイです……あの……スイマセン」


 何故か知らないけれど、ガタガタと震え始めて一向に顔を上げてくれない。


「何かしたのかお前? すっごい怯えてるけど」


〈知らないよ⁉〉


 どうも彼の反応からすると、僕に怯えている様にみえる。


「えっとですね、彼はスノー様の攻撃により瀕死になっていたので、その時のトラウマがあるんじゃないかと思いますよ」


 イベント戦の時にボコボコにして捉えた子だったのかな。

 というかミスユ団長とズナミよりも、こっちの二人の方が仲良くなっている気がする。


 今もトラウマで震える体を優しく支える。

 僕等の目の前だと言うのに二人だけの世界を作り出してイチャイチャしだした。


 体をくっ付けて、砂糖を吐きそうな甘々なセリフを囁き合っている。


「ねぇ、この人達が近くに居るのに、何であっちは初心で奥手同士なの。すっごく面倒なんですけど! なんかこの二人が近くに居る方が逆効果なんじゃないの!」


 シュネーの叫びに、僕等も全員が同じ気持ちだと確認できた。






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