【オンライン】231話:恋のライバル認定(9)
ぐるっと柵で囲われた中を歩きながら、危ない大きな石を取り除く。
腰半分まで生い茂った草場は風魔法で草刈をすれば修行にもなる。狩り終わった草も風で集めていくと、魔力のコントロールと威力が鍛えられていく。
強すぎると周りに散ってしまい上手く纏まらないし、弱すぎると細かな草が集まらない。感覚的には草のボールを作る様に風と操る事で上手く集められる。
「皆、下手くそだね?」
〈左手と右手で逆に風を回すからね、慣れないと難しいんだと思うよ〉
僕とムーンちゃんは早めにコツを掴んだけれど、シュネーとサクラちゃん、スズメちゃんとティフォは全く上手くいかない様子だった。
「道具でやった方が早く終わりそうね」
フー先輩は別の場所で道を作っていた。土系の魔法を使って一度掘り返し、牧場で拾った石を小粒くらいに砕いてから、しっかりと地面に混ぜ込み固めて道を作る。
「人によって得意な属性、苦手な属性があるんだな。初めから魔法職を選ばない限り、得意属性はランダムで設定されて、苦手な属性は習得に時間が掛かるんだな」
「プレイヤースキルは関係なし?」
チラッとムーンちゃんがガウを見て、苦戦している者達に聞こえないくらいの声で聞く。
「……残念ながらプレイヤースキルもそれなりに影響はするでござる」
ガウが目を逸らしながら答える。説明書にも書いてある事だから嘘ではないようだけど、やっぱり苦戦している部分は大体が似通った感じみたい。
〈使う魔法の威力や範囲が多い程に難しいんだよね?〉
「それであっているんだな……ああやってティフォナ妃みたいに、面倒くさがって広い範囲を一気にやろうとすれば、失敗も多くなる訳でござるな」
「適度な適量は大事?」
「変な所で大雑把よね~、そう言う所も可愛らしいわ」
フー先輩的にはティフォに構いたくてしょうがないけど、苦戦して悔しそうにしたり、偶に上手くいった時に見せる喜びだったり、気を抜いてしまいせっかく上手くいきそうだった事を失敗して落ち込む姿が見たいようだ。
さっきから子猫がボールか猫じゃらしにでもじゃれつく姿を見て、癒されているようにじっとティフォを観察している。
「感覚派の人には難しい?」
〈どうなんだろうね、石削りよりも苦戦してる事は確かだけど〉
「ねぇ、二人だけで話してないでコツとかアドバイスをくれって」
「そうだそうだ~、ズルいぞムーンだけ~」
「アタシには特に手取り足取り、教えてくれると嬉しいですね」
感覚派の三人にどうやって教えてあげれば良いのか悩んでいると、その近くでずっと頑張っていたスズメちゃんが涙目で僕達を見ている事に気付いた。
「この人達の言葉を聞いてると頭が変になりそうです。助けて下さい」
ティフォ達は失敗する度に、何がいけなかったのを擬音語でやり取りしているせいでスズメちゃんの脳内が良く解らない事になっているらしい。
「スズメ嬢は苦手分野で間違いないでござろう。ある程度のやり方が分かっていてもコントロール事態が難しいと思うんだな」
「確かに、そんな感じです。上手く力が絞れないっていうか。無駄に力み過ぎちゃう感じで、風の威力が安定しないんですよね」
それでも覚えられないという事は無い。
覚えにくいだけでコツコツとやっていけば、補正値も高くなっていって簡単に使える様になるらしい。
「姉上は土系統と相性が良さそうなんだな。まさかもう道が出来ているとは思わなかったんだな。道具と併用してやったのでござるか?」
「いいえ、鬼さんと親切なプレイヤーさん達が少し手伝ってくれたわ」
きっとその人達はフー先輩とお近付きになりたかったんだと思うよ。
ガウは何時もの事の様に気にしない様子で「そうでござるか」の一言で終わった。
少しだけ半目になってフー先輩を見ていたのが気になるが、その視線も気にせずにフー先輩は朗らかに笑ってガウを見返すだけだった。
〈とりあえず、皆に教えてくるよ〉
「……私も手伝う」
〈それじゃあ一緒に行こうか〉
一緒にと言うと、ムーンちゃんが少しだけ笑って僕を抱っこしだした。
〈ムーンちゃん?〉
「じゃあ、行こ」
〈いや、抱っこはしなくても〉
「気にしない」
〈あ、はい〉
もう、何を言っても無駄のようだ。絶対に離す気はないらしい。
「どうすれば上手くいくんだ? ガッとやってもブワッてやっても吹き飛ぶぞ」
〈ティフォ、僕にはその擬音語の違いが良く解らないよ〉
「……同意?」
「じゃあどうやって説明しろと⁉」
呆れた視線を送るが、ティフォは目の前の魔法に集中していて僕を見てくれない。
僕とティフォのやり取りただじ~と眺めているフー先輩の存在を、その時はすっかり忘れていた。じゃれ合う様に言い合いをして、笑いあっている僕等をただ黙って見ている彼女の隣で、ガウは少しだけ息を呑んだ。
誤字脱字のご指摘、本当にありがとうございます。_(._.)_




