【オフ】222話:ハロウィンイベント
☆★☆★【琥珀視点】☆★☆★
「ふぁ~、ん~体が少し硬い」
「休憩? お昼は樹一君が来るのかしら?」
体全体を伸ばしながらソファーから立ち上がる。
お母さんがキッチンから顔を覗かせてボクに手を振ってくる。
「そうだね。来るんじゃないかな。小鳥も居ないみたいだし。両親はお出かけだってさ」
「ふ~ん、琥珀は料理の練習しなくて良いの?」
「ボクには向いてないもんね~、翡翠が作ってくれるから良いの」
「もう、しょうがない子なんだから」
ボクにはああいった細かい作業は向いてないんだよ。前に少しだけやらせて貰ったけど、皆がボクの手元を心配そうに見るし、包丁は思う様に動いてくれないんだよね。
目分量って言ってたから適当に調味料を入れたら、入れ過ぎだって言われるし、スップーン一杯って書いてあったから、一杯すくって入れたのにさ、しょっぱくなっちゃうし。
リビングでテレビを見ながら全身を丹念にほぐして、ストレッチをしていると家のチャイムが鳴る。
樹一が手を振っている姿がモニターに映し出された。
「どうもお邪魔しま~す。爺ちゃんからお野菜の詰め合わせお届けです」
「あら、ありがとう。立派なカボチャもあるわね」
玄関に置かれた段ボールの中から野菜を分けて、冷蔵庫に入れるモノは素早くしまって常温で良いモノは、別の場所に仕舞う。
「カボチャって言えば、次のイベントはハロウィンだってよ」
トントントン――お母さんの料理の音が聞こえてくる。
「ハロウィンって言えば、商店街の方でも何かやるみたいよ。仮装して商店街でお買い物をすると色々とオマケが貰えるみたいなのよ」
なんか、お母さんの声音が妙に明るい感じがする。
「俺達の村もさ、祭りをやれば色々と盛り上がるんじゃないか?」
「ボクはどっちでも良いけどさ、ハロウィンにちなんでお祭りをするんなら仮装がメインになるんだよね? それってさ……」
ボクが最後まで言わなくても、樹一は気付いたみたいだ。
「やっぱり今の話は聞かなかった事にしてくれ」
「う~ん、ボク的にもね……そうしてあげたいんだけどさ」
もう無理なんだよね。だってお母さんが興味深そうにコチラの話を盗み聞いていたみたいで、尚且つスノーに可愛い格好をさせるチャンスは逃さないだろう。
「あ、小鳥ちゃん? 今は咲沢さんの家に居るのよね。実はね~――」
何時の間に子機を台所に持って行ったのだろう、人の話っていうのはこうやって広がっていくんだね。
「あぁ~、こうなったら雷刀の家にでも逃げ込むしかないか」
どうにか逃げ道を探そうとしている樹一だったけど、一通のメッセージが携帯電話に届き、それを読んだ瞬間に膝を折ってソファに突っ伏してしまう。
手から零れ落ちた樹一の携帯電話を覗き見る。
『姉上が明日にでも参加する事が決定したんだな。家に来たら、もれなく仮装パーティーに参加させられるでござるぞ。しばらくは家に来ない方が良いんだな』
樹一の退路は全て絶たれた様だ。
そして、それは翡翠にも当てはまるんだけど。ボクとしてはどっちに転んでも美味しい思いしかしないから、遠慮なく仮装でもしてあげようかな。




