【オンライン】140話:イベント騒ぎは大騒ぎ
プレイヤーの人達は戦いを好むかと思ったけれど、そうでもないらしい。
防衛戦に参加している人よりも、集落……いや、もう村かな。整備や建築などの手伝いをしてくれているプレイヤーが多い。
殆どの人達が住み着いて湧くモンスターに興味があるようで、それが可愛い子だったら愛でる気満々でいるようだ。その証拠に集合住宅に湧いた花の精と妖精達に餌付けして、あわよくば抱きしめようとする子達までいる。
「ケリアさん。スノーさんにちょっと相談したい事があるんだが、少し良いだろうか?」
無精ヒゲを生やし、顔に傷があるヤかマの頭文字が付きそうな人が話しかけてきた。
ただ、着ている服装は屋台で食べ物を売っている感じのエプロン姿だった。
背も高いし威圧感が半端なくある。
「あら、何かしら? 話なら私が聞くわよ」
「いえこの件はしっかりとスノーさんにも聞いて貰った方が良いと店長と大将、そして自分を含めた三人で話し合いましてね。他二人は忙しいんで、自分が来た次第で」
見た目が怖くてケリアさんの後ろに隠れてしまった。
「ふ~ん、良いかしらスノーちゃん」
〈うん、何か理由があるみたいだし〉
「ふふ、よろしくね~。可愛らしいお兄さん」
〈可愛らしい?〉
いや、どう見ても強面な感じだけれども。
「だってこの人ってば、ボク等にどうやって話しかけようかずっとオロオロしてたよ。怖がらせない様に花を摘もうとしては、何か気付いたのか首を振って落ち込んだりしてたよ」
シュネーがそう説明してくれると、目の前の人は怒るどころか恥ずかしそうに顔を俯いて手をモジモジとさせてしまう。
その姿を見てか、周囲の人達全員が温かい目で、
(コミュ障の人なんだね)
という感想を抱いたと思う。
「こほ、え~、ちょっとしたクエストを自分らは受けているんですが、場所も無いし無理な条件が多くって放置してたんですよ」
《火薬職人の苦悩》クエストを可視化したウィンドウに開いて見せてくれる。
長ったらしい説明文を省くと、火薬を造り活かした生活をしたいが、住む場所も頑丈な建物なく洞窟で暮らす日々にも嫌気が指している。このままじゃあ夢が叶わないから、助けてほしいという内容だ。
「ヴォルマインの人達に相談すれば良いじゃない」
「一度、話しは持ちかけたんですがね。あそこはもうプレイヤーの人達が火薬を大量生産してしまってるんです。ヴォルマインに住み着いている小鬼を倒せば手に入るとかで、必要ないと断られました」
他の場所でも似た様な反応を返されたそうだ。その上、製作所の場所を用意してあげないといけないし、一定以上の頑丈さと設備がそろっていないと駄目らしい。
フォレストヒルは、魔法の有用性が高くコストも安い事から火薬なんて使わないと言われたらしい。
ジャンシーズでは門前払いだったという。理由は住める場所も限られているのに、頑丈で重い建物を建てる様な重要な場所はもう無いという。
〈此処では色々な用途に使えますし、良いと思いますよ。建物もパニアに協力してもらって皆で建てれば時間も掛からないと思うし〉
「そうね、確かに色々と使えそうね……トラップとかね」
「スノーさ、アレ以上に物騒なモノを造る気でいるの?」
何かケリアさんとシュネーから変な視線を向けられる。
〈変な目を向けないでよ。僕は別に戦いに使いたいって訳じゃないよ〉
「じゃあ何に使うのさ」
〈そりゃあ、花火とかで楽しもうって感じかな〉
「あら、それは良いわね~」
ケリアさんが急に手の平を返した。急にテンションを上げて両手を組んで体をくねくねさせている。夏の思い出にでも浸っているかのように。
〈そんな訳で、誘っても構いませんよ。場所の確保はしておきますから〉
「そうかい、ありがとうよ。あぁ、そうだ一度だけ皆を集めてパーティーを組もう、それでクエスト共有をすることで、一緒にクリアーしたことになるから」
実は、隠し限定クエストというモノらしい。
クリアー報酬が分からないから皆でクエストを共有しておく必要がある。
ケリアさんには花火とか言ったが、罠に火薬を使う事を考えていない訳じゃない。
それにミカさんに協力してもらえば、面白いモノが出来るかも。
此処はファンタジーの世界で錬金術というモノがあるんだから、水花火とか作れたりしないかな。
火薬の性質を持った魔法薬だってあってもおかしくないはずだ。




