【オンライン】106話:イベント騒ぎは大騒ぎ
インベントリから解体する魔物を取り出すと、すぐにコフさんがロープを足に巻き付けて放血を開始する。
「狩ってすぐの状態だから良いが、普通だったらかなり質は落ちてるだろうな。すごい便利な能力を持ってんなスノーちゃんは」
そんな事を言いながらも、一匹一匹と手際良く魔物の血抜き作業をしていく。
『ねぇ、ケリアさん達にはどう見えてるの?』
「なんか、キラキラした魔物ぐらいしか分かんないね」
目がバッテンになって、可愛らしい魂がフヨフヨと死骸の周りを嬉しそうに飛び回っている。ちなみに魔物を血抜きする工程の前は、口から出ていた魂は青い顔をして落ち込んだ様子で漂っている感じだった。
「あぁ~、グロテスク表現に引っかかるから貴方達の場合はそうなるのね。私は普通に解体している様に見えてるわよ、ちゃんと血の表現もあるから、下の器に血が滴ってるわよ」
子供に優しい世界だね……あれ? ちょっと待って。
オレの設定って何歳設定なんだ? 身長的には小……いや、中学くらいかな。
ゲームが終わったらちゃんと調べないと。
「後はやっておくから、好きな所に行ってきなよ」
『え、見てちゃダメですか?』
「どうなるか見てみたいよね~」
このファンシーな表現で解体作業を見ていたらどうなるだろう。
物凄い興味がある。
「おいおい、魔物の解体なんて子供が見るもんじゃないだろう」
戸惑いながら後ろにいるケリアさんに助けを求めているようだ。
残念だがオレの興味は目の前の現象がどうなるのか、それが一番気になってしょうがないので、此処から動く事はないだろう。
「え~と、シュネーちゃん? スノーちゃん。あっちでティフォナスちゃん達と一緒にお馬さん達と遊ぶのも楽しいと思うわよ」
声的にケリアさんも戸惑っている感じがするけど、こっちが無性に気になるだ。
『お構いなく、命の尊さを学ぶ良い機会です』
デフォルメされていて、そんな事は良く解らないんだけどね。
「うんうん、ちゃんと知っとかないとね。幽霊ちゃんが可愛すぎる」
シュネーが興味あるのは魂の表現らしい。
「あ~そう……ごめんなさいね、私じゃあどうしようもないみたい」
「変な嬢ちゃん達だな」
何ともやり辛そうにしながらも、しっかりと吊るされた獲物を洗浄していく。
『内臓を取り出す前に洗うんですね』
「そうだな、綺麗にしてから本格的に解体場に運ぶんだ」
「ここで解体するんじゃないだ~」
「こんな所で解体したらせっかくの肉が食えなくなっちまうよ。最高に上手い肉にしてやらないと、折角の命が無駄になっちまう」
コフさんは何と言うか明るく、取っ付きやすい人柄の様だ。
オレ達の事を嫌な顔もせずにしっかりと説明してくれるし、大抵の事は笑って許してしまいそうなお人好しっぽい感じがする。
全て洗い終わると、吊るされた獲物を解体場まで運んでいく。
『流石にこれ以上はお仕事の邪魔になっちゃうかな』
コレだけ広い場所なら滑車とか付ければいいのにな。
一々手で持って運ぶのは大変そうだ。
「そう言えばティフォナンとガウっちは?」
「馬小屋よ。レースさんやトワと一緒に居るんじゃないかしら。もう、二人とも解体に夢中過ぎよ、そりゃあ大事な命のお勉強かもしれないけどね」
唇を尖らせて拗ねた感じでオレ達を見てくるケリアさん。
『ご、ごめんなさい』
「ごめんねケリアん」
「もうしょうがないわね、許してあげる」
全部の獲物を運び終わったコフさんが噴き出したように笑って出て来た。
「まぁ解体には半日は掛かるから、アイツ等と遊んで来ると良いよ。気に入られれば背に乗せてくれるだろうしな。レースやトワちゃんが居るんなら大丈夫だろう」
牧場地には裏手から出るのが近いとコフさんが指さして教えてくれる。
皆でそっちから出る前に、
『では、後はよろしくお願いします』
「よろしくお願いします」
皆で頭を少し下げて挨拶をした。
「おう、任せときな」
片手を振りながらニコやかにコフさんが送り出してくれる。




