第七話
「あなたがたが来るのをお待ちしておりました」
ツチノコの声だろうか。機械的な声だ。
「コイツ、しゃべれるのか?」
瞬が言う。
「はい、まあ一応」
やはりツチノコだ。
「説明はあとにして、こっちに来てください」
明たち四人は、ツチノコに先導されて穴の中を歩いた。
「ねえ、なんかコイツ、怪しくない?」
ツチノコ探しを最も強く主張していたはずの美奈が、瞳に話しかける。先ほどまでの嬉しそうな声が嘘のような口調だ。
「どこまで行くの?」
明がツチノコに尋ねる。どんなときも状況をあっさりと飲み込んでしまうのが、良くも悪くも彼の特徴だ。今回もそれが現れた。
「はい、まずトゥリスト湖に行きます」
「どこそれ?」
今度は瞳だ。
「どこって言われても困るのですが・・・。でも、湖です。いつも深い霧に覆われているところです」
「そこに行って、どうするんだ?」
瞬が会話に割り込む。
「その霧を晴らしてもらいます」
そんなことできるのか、明は不審に思った。しかし、あまりにもあっけなくツチノコが言うので、訊くのもはばかられた。
「ねえ、そんなことできるの?」
美奈はなぜか明に訊いてきた。ツチノコに言えよ、明は思ったが口には出さない。その代わりに、分からないとだけ答えた。
「どうやったら、そんなことできるんだ?俺たちは普通の高校生なんだぞ」
ややあって、瞬が疑問を口にする。美奈とは違って、彼の場合はツチノコに直接尋ねる。
「あなたたちの世界では普通だったかもしれません。しかし、この世界では、あなた方は普通ではないのです」
ツチノコは妙なことを言う。あれやこれや話しているうちに、明たち一行は目的の湖に到着してしまった。本当に、湖はすっかり霧に覆われている。何も見えない。