第一話
高校三年生の夏休みだった。実質的には夏季補習がほぼ毎日のようにあったので、休みとは言えないものだったが。
「ツチノコを探しに行こう」
中島美奈が一枚の写真を見せながら、そう言った。彼女の持っている写真には一匹の奇妙な生き物が写っている。ほかの三人は、それを覗き込んだ。ほかの三人というのは、美奈のクラスメイトで、石川明、浮田瞬、西谷瞳の三人だ。彼らはよく四人で遊んでいる。
「その写真、本物?」
瞬が疑い深げな目で美奈の顔を見る。美奈は本物よ、と怒ったような声を出した。端正な顔が、わずかに赤みを帯びる。まずいことになったかも、明は心の中でつぶやいた。しかし、それは表情には出さない。
「まあまあ、二人とも落ち着いて。私はツチノコ探し、おもしろいと思うけど」
瞳が二人の間に入った。のんびりとした声だ。明も、瞳に同調して瞬と美奈の間に流れる険悪な空気の仲裁を買って出た。
「僕もせっかくだから、行ってみるのはいいと思うよ」
三対一、こうなっては瞬も美奈の意見に従わざるを得ない。こうして彼女の意見が多数決で通った。
「それじゃ、今度の日曜日、朝九時にいつもの公園で待ち合わせね」
美奈が意気高々と言う。いつもの公園というのは、彼ら四人がいつも遊んでいる、学校の近くの公園のことだ。