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ちょろいヒロイン

 


 砂漠の街? ハサラ? サハラじゃなくて? 微妙に覚えにくいな……。


「知らんな」

「そう。ここから南西に行った先にあるんだけど、あなたには伝言を頼みたいの。もちろん報酬は出すわよ」

「伝言ね。別にそんなん自分で行けばよくね?」


 わざわざ昨日今日会った俺に頼むようなことか?


「いや、それは出来ないのよ。さっき話したけど私はある人を探しててね、どうしてもそっちを優先しないといけないの」

「ふーん、まぁいいよ」

「助かるわ。とりあえず交通費と宿泊費は今渡すから」


 渡された紙幣は一万ギルと書かれたもの五枚。どうやら一万円と一万ギルはほぼ等価って考えていいみたいだな。


「じゃあこの封筒を街にいるシェパードって人に渡してちょうだい。当たり前だけど中身は見ちゃダメよ。封切ったらわかるからね!」

「それくらいわかってるよ」


 紙一枚くらいの厚みの封筒。手紙か何かか?

 郵便屋的なものは流石にこの世界にもあるだろうから、わざわざ俺に渡してきたって事は……。


 なんか嫌な予感がするぞ。変なことに巻き込まれてないだろうな俺。


「なぁ。これ、やばい手紙だったりしないよな」

「な、何言ってんのよ! そ、そそそんなわけないでしょ! とりあえずあんたはもう引き受けたんだからちゃんと仕事しなさいよね!」


 こいつ明らかに動揺しているんだが? あれ、もしかしてこれ既に手遅れ?


 ―――

 ――

 ―


「じゃあ頼んだわよ」

「……わーったよ」

「行ってらっしゃいませ」


 レインと召使いさん(グレープさんというらしい)に見送られつつ、俺とヤミはその場を後にした。


「いよいよ私とタイガー様によるラブロマンスが始まるのですねっ」

「いや、それがね。もしかすると面倒ごとに巻き込まれるかもしれん」

「へっ?」


 ヤミの素っ頓狂な声を聞いて少し笑いつつも、俺は言いようのない不安にかられていた。大丈夫なんだろうか?




 家を出て、街の方へ降りていくとそこにはタクシー的な感じで馬車が並んでいた。

 俺はその中で一番初めに目が合った馬の元へといき、馬主に声をかけた。


「すみません。ハサラまで行きたいんですけど」

「ハサラかい。あいわかった。けどあんちゃんたち、その格好は砂漠じゃつらいよ? もっと肌を隠すような服買ってきな」


 なるほど、確かに直射日光はやばいか。


「お洋服ですかっ? やった! 買いましょう買いましょう」


 こういうところで食いついてくるあたりやはり女の子なんだなぁと思いつつ、俺たちはレインに貰ったお金で服を買い揃えた。


「どうですかタイガー様! 似合ってますか?」


 ヤミがくるくる回りながら訊いてくる。肌は隠れているがどことなく派手な服なので小さいヤミは少し存在感が服に食われていたが言うまい。


「似合ってるぞ」

「やったっ。もちろんタイガー様はこの世のお人とは思えないほど似合ってますね!」


 俺は俺でなんかどこぞの民族衣装みたいにターバン巻いてるけど、いいなこれ。前から一度つけてみたかったんだ。


 そんなこんなで馬車の元へと戻り、再びおっちゃんに話しかける。


「お、ちゃんと服は買ってきたようだなっ。ははっ、お嬢ちゃん、服に着られちまってんな。もうちょい小さいサイズでもよかったんじゃないか?」


 あーあ、俺がせっかく言わんでおいたのに。

 ヤミの頬がぷくぅっとむくれてる。あれは怒ってんのか?


「これ以下のサイズがなかったんですっ! もうっ、早く出発してくださいっ」

「おや、怒らせちゃったか。ごめんよ、ほら飴さんあげるから」

「こんなもので私を慰められると思ったら大間違いですっ……一応貰っておきますけどっ」


 ヤミはまんざらでもなさそうだ。

 ちょろいなー、こいつ。飴玉で許すのかよ。



「じゃっ、行くよ! 目的地はハサラだね!」


 おっちゃんは手綱を引き、馬車を出発させた。

 さて……どんな人が待ち受けてるやら。

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