奴隷からの脱出?
「ここから先は行き止まりだぞ!」
「関係ないわよ! 私にはね! 『サニーデイ』!」
レインが目の前の有刺鉄線に向かって手をかざすと、彼女の広げた手のひらには巨大な剣が具現化していた。
「お、おっきいですぅ」
「よく持てるなあんなでけえの」
「はぁあああ!」
雄叫びとともに、彼女は鉄線を切り裂いた。
俺たちはそこから抜け出し、平原に繰り出した。
で? ここ平原で何もないけどどうすんだ? このままだと追いかけてくる監視兵に捕まるんだが。
「大丈夫よ。来たわ!」
来たって、何が……ってなんだありゃ? 馬車か。でもあれツノとか生えてるし馬って感じじゃないな。てかこいついつの間にか剣を消してやがった。
「レイン様! 早くお乗りに!」
「ええ! ほら! あんたたちも!」
馬車に乗っていたのはつばがある帽子を深くかぶっている人だった。どうやら逃げる時の協力者ってのはこの人のことらしい。
俺とヤミも大急ぎでその馬車に乗る。
「では飛ばしますよ! 何かに捕まっててください!」
そんなこと言われても馬車なんて初めてなんだ。ってもう進みだしたし、速いな。
おうおう、監視兵がみるみる遠ざかって行くぜ。ざまーみろってんだ。
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そうこうして数十分経つと、俺たちは途中で見かけた街らしきところから外れた場所にある一つの大きな屋敷についた。
「ふぅ、着きました。降りても大丈夫ですよ」
「ここは?」
「私の家よ! 上がって」
これが家か。こいつ、かなりのお嬢様じゃねーか。
「はい、これ報酬ね」
家に入るなりレインはさっき馬車を運転していた女の人に何かを囁いた。すると彼女が袋を持って来てそれを机に置いたのだ。
「中には宝石とかだいたい10万ギル相当のものが入ってるわ」
10万ギル? この世界の単位か。それって高いのか低いのか。日本円と同じで10万円くらいなのかな。
俺の沈黙をどう受け取ったのかレインは脚を組み、
「何よ、不服?」
いかにもお嬢様って感じで訊いてきた。
まぁよくわからんが貰っておこう。
「いやいや、ありがたく貰っておくよ」
「そう、良かったわ。じゃあ今日は泊まって行くといいわ」
「マジで? それはありがてえ!」
なんか嫌な奴だと思ってたけど意外とレインも悪い奴じゃないな!
「ではお嬢様、お風呂の準備をしてきますね」
「ええ」
「まさかまたゆっくりお風呂に入れる日が来るなんて……!」
ヤミは感激で泣きそうになっていた。というか少し泣いていた。
「これもタイガー様のおかげですっ。タイガー様は神様か何かなのでしょうか?」
「いやお風呂は私のおかげでしょっ!」
「タイガー様がいなければレインさんもあのまま奴隷だったんですから、タイガー様のおかげですっ!」
「何よ! あんただけ追い出してもいいのよ!」
なんでこいつら喧嘩してんだよ。あんだけ動いた後によくそんな体力あるな。
「まぁまぁまぁ、落ち着けよ」
「タイガー様は私の味方じゃないんですかっ」
「味方とかそういうんじゃなくてだな……あと俺はタイガーじゃなくて大河だ」
「大河は私の味方でしょう!?」
きーきー騒いだ二人が俺の腕を引っ張ってあーでもないこーでもないと論争している。
結局召使いの女の人が戻ってくることで一時休戦した。
なんか早くも俺が思ってた大河好き好きハーレムとちょっと違うんだが、大丈夫だろうか。