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破天荒ムスメと共犯者



「脱出ってなんだよ急に。それにお前知らないのか? 見ての通り俺は拘束を解かれて自由だ。ここからの移動も約束させたしな」


 すると女は俺を呆れを通り越して残念そうな奴を見るような目で見た上に魂が出てきそうなため息を吐いた。


「あんたバカ? そんなのその場限りの約束に決まってるじゃない。拘束を解かれてるのだってその場で暴れられないようにするためよ。たぶん今頃裏であんたを取り押さえる準備でもしてるんじゃない?」


 まさか……いや、ありえる、か? 確かに都合が良すぎるような気もしてたんだよな。

 にしてもこの女、よくもまぁ初対面でこうズケズケと人の事言えるな。


「お前はなんで俺に脱出を持ちかけてきたんだ」

「そんなのあんたが強いスキルを持ってるからに決まってるじゃない」


 やっぱりバカなの? とでも言いたげな目をしてやがる。今のは答えがわかってて訊いた質問だ。悪いがそこまで間抜けじゃない。


「俺がお前に協力するメリットは?」

「もちろんあるわ。まずここからの逃走経路の確保が私にはできる、外に協力者がいるからね。それと無事脱出できた時には報酬も用意するわ」

「ふーん、なるほどね。良いよ、乗ってやる」

「やけにあっさり信用してくれるのね。都合は良いけど」


 まぁこいつのあの監視兵に反抗の仕様からみても俺を騙してるってわけでもなさそうだしな。それに万が一嘘をつかれてても、この状況が続くよりはマシだろう。


「あー、それと脱出するならもう一人連れて行ってもいいか」

「まぁ、一人くらいなら構わないけど、誰?」

「あそこの椅子からずっとこっちをみてる女の子がいるだろ、ツインテールの。あれだ」


 ヤミは俺がこの女に連れて行かれる時に言った「待ってて」、という指示を律儀に守ってずっと椅子に座っているようだ。

 しかしこちらの様子が気になるのか目線をずっとこちらに向けている。


「何? あんたロリコンなの?」

「いや、そんな事は断じてないっ!」


 ような気もするし違う気もするが、ここでは断言しておこう。


「まぁいいわ。ならすぐにやるわよ。時間は早ければ早いほどいい」

「わかった」


 俺はヤミの元へといき、最小限の説明だけをしながらこちらへと連れてきた。


「タイガー様の行くところ、何処へでも参りますっ」

「献身的ね。ところであんたタイガーって名前だったの」

「タイガーじゃねえ、大河だ。お前こそなんて名前だよ」

「ああ、言ってなかったかしら。レインよ」


 レインか。なんとなくだが、あまり似合ってない名前だな。


「わ、私はヤミですっ。よろしくお願いしますっ」

「はいよろしく。じゃあ早速だけど大河。あんたこの手枷破壊してくれる?」


 そう言ってレインはずいっと両手を差し出してきた。なるほど、俺のさっき奪ったリトルボーイで破壊しろってことか。


「リトルボーイ!」


 ぼんっという音ともに両手を繋いでいた部分が破壊される。

 やってみてわかったが、やっぱり盗賊王じゃなくてリトルボーイって言っても発動できるみたいだな。


「よし、じゃあ次はヤミだな」

「は、はいですっ」

「リトルボーイ」


 再び発動させ手枷を破壊。

 二度に渡る結構大きめの音はやはり監視兵にバレた。つーか最初から俺のことをマークしてたみたいな動きだが。

 彼らは走って俺らの元へ向かってくる。


「逃げるわよっ!」


 レインの横顔をちらりと伺うと、まるでこの状況を愉しんでるかのように、にんまりと歯を見せ笑っていた。

 もしかして俺、とんでもない奴と共犯してる?


「ほら、ボサッとしないっ!」


 だけど振り回されるのも、嫌いじゃない。

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