大河 対 シェパード
「待て」
そう言ってきたのはロン毛のやろうだった。
「貴様なんぞが参加できる試合だとは思えないな」
お、なんだか知らんがありがたい。俺は出る気なんてさらさらないんだ。このままてきとうに断っておこう。
「じゃあ辞め――」
「な、何を言ってるんですか! タイガー様は伝説のスキルも持ってるんですよ?」
おいヤミ。またお前は余計な事を。
「ふん、その伝説のスキルだって怪しいものだ。嘘をついてるんじゃないのか?」
「な、なら見てみればいいじゃないですかっ」
「それに、それだけが問題じゃない。たとえ貴様がそのスキルを使えたとして、強いとは限らん」
「ごちゃごちゃとうるさいですね。結局何が言いたいんですか?」
あ、ヤミがちょっといらついてる。
まぁなんでもいいけど俺の出場取りやめにかんねえかな。
「ふ、それもそうだな。では単刀直入に言うぞ。僕と戦え」
は? 何を言ってんだこいつは。
「ライト、流石にそれは酷ですわ。特警創設以来の天才の貴方に勝てるものなんて国中探しても中々いませんもの」
「別に僕に勝てとは言ってませんよ。勝てるわけないのですから当たり前です。僕は実力がみたいのです」
「……そうですわね。伝説という言葉に釣られてしまいましたがこの大河という方が強いかはわかりませんものね」
勝手に話を進めやがって。
ちらとレインを見るとニヤニヤと楽しげな顔でこっちを見ている。「勝負しなさいよ」と言いたげだ。ちなみにグレープさんはオロオロと落ち着きがない。
「さてどうだ、タイガとやら。この勝負、受けるか?」
まぁ普段ならこんな試合めんどくさくて絶対受けないんだが、絶対勝てないとか言われちゃうとやりたくなっちゃうよな。人間だもの。
「……いいよ。やろうぜ」
場所を移し、俺たちは人通りが少ない草原に来た。ここでやろうってことか。
「どこからでもかかってきていいぞ」
ロン毛の野郎は構えを取り、そういってきた。余裕だなぁ。
「やっちゃってくださいタイガー様ーっ!」
ヤミの声援が聞こえる。よし、頑張ろう。
けどどうしようか。
なんだかんだであいつは強いはずだ。一回だけあいつが戦うのをみたがかなり速かった。
俺が今使えるのは両手を巨大化させるビッグハンズ二発分のみ。ううむ。
「なんだ、こないのか?」
めんどくせえ、考えても仕方ねえか。とりあえず突っ込んでみよ。
「きたか」
俺は走り奴の元へといくと、顔面めがけて拳を繰り出した。奴はそれをかわすと、逆に俺の腹めがけて殴ってきたので、俺はそれを左手で受け止める。
「ほう……」
「いって! 馬鹿力かよ!」
受け止めた左手がヒリヒリする。俺はいったん下がり、態勢を整える。
「剣は抜かないのかよ」
「僕が貴様程度に抜くとでも?」
「嫌味な野郎だ」
俺は再びロン毛に殴りかかる。奴はそれを避け、反撃し、それを俺が避ける。しばらくの間それを繰り返した。
そうすること数十分。ずっと探し続けていた奴の隙が現れた。
呼吸の乱れから起きた一瞬の隙。ここしかない。
「ビッグハンズ!」
「なっ⁉︎」
捉えた!
そう思ったが巨大化した俺の拳が明らかに相手の身体とは思えない感覚の物を殴っていた。
剣を引き抜いたらしい。ビッグハンズは硬化能力もあるから切れてないけど生身だったら俺の手血だらけだぞ。
「ぐっ……!」
「あれ? 俺程度に剣は抜かないんだったんじゃあなかったっけ?」
「生意気な……!」
奴が剣を身構え、雰囲気を変える。
どうやらようやくスキルを使ってくれるようだな。
ここからが本番か。と思ったのだが、
「そこまでね」
レインが間に入ってきて試合を止めてきた。
「リル、大河の実力はこれでわかったでしょ?」
「そうですわね。わたくしが間違っていたようですわ。大河さん、貴方お強いのね。いいですわ、やはり参加していただきましょう」
王女様もそう言ってきた。
なんかいつの間にかロン毛も剣を納めてるし、これでおしまいか。
「ライトもそれでいいでしょう?」
「はい。まぁ僕にはまだ及びませんが、伝説のスキルを持つだけの実力はあるようです」
相変わらず上から目線の野郎だな。
「で? 貴方の身分はなんですの?」
「身分?」
身分っていうと……貴族とか平民とか?
俺はこっちの世界だと何になるんだ?
「こいつは奴隷よ」
レインがそう言った。そうか、まだ俺の身分って奴隷のままなのか。
「奴隷⁉︎」
王女様は心底驚いたようだが、少しして何かを企むようにニヤリと笑った。
ああ、また面倒ごとか。




