売れない奴隷
なんてこった。転生したらまさか勇者でもなくチート持ちでもなく奴隷とは……。
てかよく見たら俺、裸じゃねーか。そういえば裸になってたけど、あのまま?
それにしてもどの段階で俺は奴隷になったんだ。異世界に来た瞬間は奴隷じゃなかったはずだが。
「貴様らは既に配属先の決まった奴隷だ。雇い主の元でよく働け。では貴様からだ、こっちへ来い」
呼ばれた奴隷が太ったおっさんの元へと連れて行かれる。なるほど、あれが彼の雇い主ってわけだ。
俺の雇い主様ってのはどれだ?
できれば超絶美人で色気ムンムンのお姉さんとかを所望するんだが。
「貴様はそっちではない。こっちだ」
「え?」
声をかけられた俺は金持ちどものいる方ではなく、誰もいない隅へと追いやられた。
なんで?
その後も定期的にこちら側へと送られてくる奴隷が現れる。なんだってんだ。
「ちょっと! 私がなんでこっち側なのよ!」
そう大声を出しているのは隣に整列された女の奴隷だ。
金色の髪を持ち、整った顔をしているかなりの美人だ。
「ど、どうも」
「うっさいわね。あんた誰よ、ちょっと黙ってなさい。だいたいなんで裸なのよ、ふ、服を着なさいよ」
話しかけたのに酷い女だ。俺の手が鎖というもので防がれていなければ襲いかかってやれたというのに。いや嘘です、そんな度胸ないです。
でもちょっと裸な俺に対して微妙に目線をずらして顔を赤くしてるのはポイント高いぜ。
「さて、こちら側に集められた貴様らは、雇い主が見つからなかった者だ!」
「ちょっと、なんで私が見つからないのよ! このスーパー美人の私が!」
またもや隣の女だ。こいつは鋼でできた心臓か何かを持ってんのか?
ほら見ろ、説明しようとしてた人もちょっとお困りじゃねーか。
「……貴様は扱いづらいとの意見が多かった、以上だ」
「なによー! わかってないわね貴族の奴らは!」
「さて、貴様ら外れ者は今から作業場へと移ってもらい、作業をしてもらう」
作業? なるほど、雇い主の見つからなかった俺たちはタダ働きさせられるってわけか。
「あ、あの。作業ってなにを作るんですか……?」
小ちゃい女の子が質問した。
あんな子も奴隷になるのか。
「貴様らには、この国のシンボルになるであろう世界一高い塔を作ってもらう!」