王宮特殊警護騎士団
「ど、どういう事だよヤミ。なんでそんな大金が?」
「賭けに勝ったからですよっ。五千万ギル全部タイガー様が勝つ方に賭けたんです!」
なるほど。こいつのことだ、特に何も考えずに全財産賭けたんだろうな。で、他の客はまさか俺が勝つとは思ってなかっただろうし……それで50億か。
「つーことは今の所持金は五〇億とんで十万ギルか。十万が小銭に思えるな……」
「あ、あのぅ?」
「あ?」
クリスが手を擦りわせながら腰を低くして近づいてきた。なんだこのあからさまな媚の売り方は。
「あ、あたし……実はあなたの事が、好きになっちゃったの!」
「へー」
「反応薄っ! もうちょっと動揺したりしなさいよね!」
「わざとらし過ぎるわ! 嘘なのがバレバレじゃい!」
「まさかクリス様がタイガー様の事を……あなたにタイガー様は渡しませんよっ!」
ちょっとヤミは黙ってて。
「ちえっ……ちょっと気になってるのは本当なのに」
「クリスは何ボソボソ言ってんだよ」
「なんでもないわよ」
なんでちょっと怒ってんだよこいつ。意味わからん。
それにしても五〇億か。桁がデカすぎて何すりゃいいかわからん。
「タイガー様タイガー様、私役に立ちましたか⁉︎」
「ああ、もうそりゃお前のおかげで何も悩む事がなくなったよ。ありがとな! マジで!」
「やったーっ! ふふん、見ましたかクリスさん。あなたと違って私はこんなにも役に立つのですよっ」
「べ、別に張り合ってないわよ」
「本当ですかぁあ?」
ヤミが今までにないほど煽っている。
あんなチビに煽られたら俺は耐えられん。よく我慢できるなクリス。
「それよりもあなた、もしあれなら……その、私たちと一緒に仕事どう? あなたとなら絶対上手く仕事が出来るわ!」
「そうだぜ大河アニキ! 一緒にやろうぜ!」
「ヤミちゃんもこいよ!」
誰がアニキだ。いつの間にこいつらは俺をそんな感じに扱い始めてたんだ。
「悪いがそれは無理だ。俺は盗賊ってガラじゃねえよ」
まぁスキルはバリバリ盗賊向きなんだが。つーか盗賊の王なんだが。
「てかお前ら望みの宝石は手に入れたんだからもう盗賊やる必要なくね?」
「まだこれが本物と決まったわけじゃないし……けどそうね、確かめるためにも行くところが出来たわ」
「そっか、本物だといいな。生き返らせたい人がいるんだろ?」
あのぱっと見ただの赤い宝石にそこまでの力があるとは思えんが、だからと言って否定する必要もない。
「……ええ。あなたたちはこれからどうするの?」
「そうだな……そうだ、な…………やべ、やる事なくね?」
「何言ってるんですか! レインさんに頼まれた手紙があるじゃないですか」
レインからの頼まれごと? 頼まれ、ごと……。
「あーっ! 忘れてた! そういやそうじゃん、結局全然探せてねえし!」
「あら、誰かをお探しなの? 一応あたしは顔が広いから名前がわかればたぶん居場所もわかるわよ」
「ああ、えーとシェパードって人を探してんだけど」
「シェ、シェパード⁉︎」
ざざっと後ずさりを始めたクリス。その顔には焦りが見えていた。ちなみに手下どもに至っては二人で抱き合っている。気持ち悪いぞ。
「な、なんだよ。そのシェパードって人、なんかまずいのか?」
「ま、まずいも何もあたしたちにとっては天敵よ!」
「天敵? どういう事だよ」
「あ、あなた知らないの? 特警のエース、ライトニング=サウザンド=シェパードを!」
ラ、ライトニング、サウザンド? どれが名前だよ。
てか前も聞いたな特警っての。一体なんなんだ?
「特警ってなんだ?」
「はぁ⁉︎ 特警を知らないってどういう事⁉︎ あなたどこから来たの? ジャングル育ち?」
どうやらこちらの世界の常識的なものを知らないようだ。こういう齟齬が積み重なっていくと面倒だな。
「特警ってのは、『王宮特殊警護騎士団』の略よ。王宮と言えば聞こえはいいけど要は犯罪者を取り締まってるの」
なるほど、警察ってことね。そりゃ知らなきゃおかしいわな。
「なるほどー。『こっち』ではそういう言い方してるのかー。俺のいた国では言い方が違かったからなー」
秘技、なんか別の呼び方だったら知ってたよ感を出す技!
微妙に棒読みになってしまったが、まぁこれで誤魔化せたはずだ。
「あなたのいた国っていったいどこなの?」
「まぁそれはともかく、そのシェパードって人はどこにいるんだ?」
俺の内情は話すとボロが出そうだから言わないぞ。
「シェパードは普段は王都で勤務してるはずだけれど……確かVIPの警護でこっちに来てるって噂があったわね。まだこの街にいるのだとしたら、たぶん最高級宿舎にでも泊まってるんじゃないかしら」
最高級宿舎か……普段なら100パーセント入れないだろうが今の俺は違う。なんたって五〇億十万ギル持ってる男だからな。ふふん。
「そこはお金じゃ入れないわよ。身分がちゃんとしたものじゃないと。あなた身分的にはまだ奴隷なんでしょう?」
そういえば奴隷でした。




