表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/36

舞姫

 

「アネゴ……な、なんでこの時間に……?」

「なんでって、さっき仕事終わったからね。今日は珍しく早い日だったのよ。言わなかったかしら?」

「そういえば言ってたような気も……」


 な、何が起きてる。この女がアネゴだと? こいつらが恐れてるってことはこいつらの上司って事だよな。てことはつまり、この女も盗賊?


「で? あなたたちが渡してるその袋、あたしの目に狂いがなければ盗んだものじゃないの?」

「そ、その通りです……」

「じゃあなんでその袋をその男に渡してるのかしら? 簡潔に答えなさい」

「そ、それはその……同情して」

「へぇ……同情、ねぇ?」


 女はこちらを見てきた。

 ちくしょう、無駄にエロい格好しやがって。そんな格好で俺を動揺させようとはいい度胸だ。そして大成功してるぜ。


「あなた、どうやらこいつらを追いかけてこのアジトまで来れたようだけど、何者なのかしら? まだ特警とくけいには嗅ぎつけられてなかったと思うのだけれど」


 とくけい? なんだそりゃ。

 よくわからないが俺は袋さえ返してもらえればお前らなんかどうでもいいぞ。


「俺は盗まれたものを取り返しに来ただけだ」

「ふぅん……? この犯罪多発地域は盗まれて諦める人も多いというのに。機関にも任せず個人でくるなんて、なかなか勇気があるじゃない」


 女は何かを観察するような眼差しで俺をジロジロと見てくる。

 くそ、そんなに見られると照れるぞ。


「そっちの子は娘さんかしら?」

「娘じゃないですぅ! 奴隷ですっ!」

「ど、奴隷……? あなた見かけによらず、なかなかやるわね……」


 ヤミは頬を膨らませ怒っている。やっぱり誰だってそう思うよな。

 それにしても、うーむ。同じやりとりをさっきもやったぞ。


「とにかく、俺は返してもらえたからこれで失礼しますよ」

舞姫まいひめ

「なっ!?」


 踵を返して、帰ろうとしたところ女がいきなり殴りかかってきた。俺はそれを咄嗟に避ける。


「あ、あぶねぇ。何すんだ!」

「あら、惜しい。ふふ、盗賊としてはねタダで返すわけにはいかないでしょう? 勝負しましょう」

「勝負だぁ? なんで俺がそんな事をしなくちゃならないんだよ」

「ま、理由としては顔を見られたから、とでもしておきましょうか。つべこべ言ってると、死ぬわよ?」

「うおっ」


 くるくるとその場で回ったかと思いきや急な横蹴り。避けきれない!

 俺は腕でガードを作り、それをくらった。


「ぐがっ!」


 俺はガードの姿勢のまま、壁に吹き飛ばされた。

 な、なんだこの威力は!? ただの蹴りであの威力はありえない。スキルか!


「はぁああっ!」

「なんつー跳躍力だよ!」


 彼女はさっきの場所から一気に数メートル離れた俺の場所まで跳び、そして殴って来た。俺はそれを右にかわすが、代わりに殴られる事になった壁が大きく破壊されていた。


 足だけでなく手まであの威力。そしてあの跳躍力。おそらく身体能力を底上げする系統のスキルだな。


「よく避けるわね……」


 さっきからあの女、攻撃する前にずっと動き続けてる。いや動いてるってよりは……踊ってる?

 まさか踊りが好きすぎるってわけでもないだろうから……あれはスキルの条件か何かか。


「タイガー様! 今助けますっ」

「おっとお嬢ちゃん! アネゴには手を出させねぇ! どうしてもってんなら俺らが相手になるぜ」


 ヤミの方は動けないみたいだな。まぁそれはいい。今はこっちだ。

 スキルを盗むにしても、これはどうすればいいんだ? こういう常時発動型のスキルも触れればいいんだろうか。


 触れるにしても、かなり難易度が高い。やるなら、かなり危険だがあの手をやるしかないか。


「ほらっ、あなたのスキルは見せてくれないのかしらっ? それともスキル無し?」

「ふん、あんた程度には使うまでもないって事だ」

「な、なんですって!?」


 よし、もっとイラつけ。

 繰り出された拳をギリギリでかわす。この時に触れればいいんだけど、すかさず繰り出される攻撃の対処でそんな暇はないな。


「避けてばっかりじゃなくてっ! 攻撃、してきなさい、よっ!」

「ふふふ」

「何笑ってるのよっ!」


 だんだんと攻撃が雑になってきた。よし、ここら辺で、


「うわっ」


 俺はつまづいたふりをして尻餅をついて仰向けに倒れた。


「馬鹿ね! 終わりよ!」


 彼女は仰向けになった俺めがけて思い切り殴ってきた。かなり速いが……これを避ける!

 俺は顔面ギリギリで拳を避け、彼女の拳は地面に大きくめり込んでいた。


 ここだ!

 俺は咄嗟にめり込んだ彼女の右腕を掴み、そして勝ちを確信した声で囁く。


「終わったのはあなたの方だ。いくぞ、盗賊王」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ