異世界転生の仕方(笑)かっこわらい
「こ、これが異世界転生の順序か」
目の前のモニターを見ながら手がわなわなと震えている。
俺こと佐藤大河二十七歳は人生に絶望している。
全ての始まりは大学受験に失敗したあの時からだ……いや思い出すのも辛い。何度こんな人生をやめて、天へと羽ばたこうと思ったことか。
そんな中、ネットで知り合った闇深そうな仲間から教えてもらった謎のサイト『異世界転生備忘録』にはなんと異世界転生の仕方がつらつらと書かれているのだ。
そう、今俺はそのやり方を見て手が震えているのであった。
「えーと、まずは……全裸になってください……なんでっ!?」
思わずツッコんでしまったが仕方ない。従うとしよう。
パパッと服を脱ぎ、全裸へとチェンジ。おおう……部屋での全裸、開放感バツグンだぜ。
えと、次は……塩を身体に塗りたくり、「異世界転生☆レボリューション」と叫ぶ、だと。
仕方ない、塩を塗って……と。
「異世界転生っ☆レボリューションっ!」
はい。いや、はいじゃないが。
次だ次。え、これで最後?
『こんなくだらないことに付き合えるあなたはまだやり直しが効きます。人生をやり直しましょう』
「アホかぁ! いやアホは俺かっ!」
こんなサイト信じた俺が馬鹿だったぜ。
もう、服着よ……ん?
PCモニターの下の方に文字の続きがあったので思わずスクロールする。
『それでも転生したいですか。転生した後が今より大変でも』
「あれ? さっきまでこんなの書いてあったっけ……」
その文字の下にはYESとNOの文字が書かれていた。
こんなもんYESに決まってんだろ。今より嫌な世界なんてあるわけねえ!
俺はYESの文字の上にカーソルを持っていった。そしてクリックを……。
嫌な予感がした。何か言いようのない不穏な空気を感じたのだ。押してはいけないと俺の中の潜在意識が言っているようなそんな気が。
「関係あるかっ。転生して異世界ハーレムうはうはじゃあっ!」
気がしたけど煩悩に負けてすぐクリックを押した。
「っ!?」
瞬間、目の前の景色がぐにゃりと曲がる。
頭がぐわんぐわんと回り始め、強烈な酔いが襲いかかる。
やべ、吐きそう。
そんな事を思いながら俺の意識は途絶えた。
―――
――
―
「おいっ、起きろっ」
「ん……」
野太い誰かの声で俺は目を覚ます。
周りを見ると、そこはさっきまでいた俺の部屋ではなく、人の行き交う街の中だった。
「やった……! 成功したんだ、異世界転生!」
多くの人がこっちを見ている。これはもしかして俺のチート級の能力が発覚し、お披露目する機会か?
思わず手を動かそうとするとじゃらりと金属製の音がした。
「ん? じゃらり?」
見ると、手には枷がはめられ、鎖が繋がれていた。なにこれ。
「奴隷が動くんじゃない」
さっきの野太い声の持ち主のようだ。見るといかにも兵士っぽく甲冑を着てやがる。
それにしても奴隷? 誰が?
手足についた枷と鎖。
…………もしかして奴隷って。
「俺ぇ!?」