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プロローグ 始まりの日の朝

 


「998…999…1000…!」

 俺は日課の筋トレを終えると、手ぬぐいで額を伝う汗を拭った。

 5年前から毎朝続けている筋トレ。腕立てと腹筋、スクワットを各千回やるだけだが、終わる頃には床は汗で小さな水溜りができており、いち早く水を頭から被りたい衝動が襲ってくる。

 それでもトレーニングはまだ終わらない。このまま国の城壁を一周することで俺の日課は終わるのだ。

 コップ一杯分の水分を摂り、自室から出るとまだ日の登りきっていない暗い道を走り出す。汗ばんだ肌に冷たい空気が触れ、身体の温度が下がっていくのを感じながら、風邪を引きたくないので、体を温めるため、ペースを上げようと、力強く地面を踏み込んだ。


「だーっ、疲れた!」

 城壁一周を走りきり、俺は自室の前で上半身に思い切り水をかけ汗を流した。本当なら全裸になって水を浴びたいが、流石に外でそこまではできない。ズボンを膝上まで捲りあげ、そこに水をかけるだけに留めながら、ようやく日が昇り明るくなってきた空を見上げた。

 視界の端から徐々に水色に染まり、暗い闇の中に映えた星々は透き通るように消えていく。いつもと変わらない朝の始まりに、つい笑顔が溢れてしまう。

「雲もない、いい天気だ」

 1人、輝く空に呟きながら俺は自室へ戻ろうと扉を開いた。


「おーい、ノラ! 今日もトレーニングかい?」

 その時背後から声を掛けられた。振り向くとトトさんが窓から屈託のない明るい笑顔を浮かべながらこちらを見ていた。

「はい、そうです」

「はは、毎日よくやるね。それで、今日はどこか安売りのところはあったかい?」

「ええっと…」

 そう尋ねられて俺は今日走った城壁周りに連なる商店を思い出した。

「確か、雑貨屋フルルと魚屋の魚人島は一割引。肉屋マルハチは二割引引きでしたよ」

「なんだってぇ? それじゃあうちは三割引にしなくっちゃねぇ。お肉のトトんは国で1番安いがモットーだからね」

 そう言うとトトさんは紙袋を俺に放り投げた。何が入っているかわからないため優しく受け止めれば、トトさんは大きな声で笑う。

「はっはっは、あんがとね。ベーコンの切れっ端と豚の内臓さ、鍛えた分、よく食いなっ」

「あ、ありがとうございます!」

「いいのいいの、それと後でクエストカウンターの方にも仕事出しとくからよろしくね!」

 そう言うとトトさんは窓の奥へと引っ込んで行ってしまった。

 思いがけない嬉しい貰い物と舞い込んできた仕事に、俺はホクホク顔で自室へと入って行った。




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