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クレアとヘイリーの攻防は暫く続き
フィンは顔を青ざめレイブンはなぜか遠い目をしていた
「そうだ!クー僕の事リーって呼んでよ」
ヘイリーはニコっと微笑み
フィンが青ざめたままヘイリーに顔を向けた
「ヘイリー様!!」
「嫌です恐れ多い事です」
クレアの反応にフィンは胸を撫で下ろしため息をついた
「なぜこんな事に」
それはヘイリー以外がみな思うことであった
コンコン
「入ります」
スッと入ってきたのはピンクの髪をふわふわさせて蜂蜜色のくりっと可愛い目をした姉ソフィだった
「お初にお目にかかります、オルガナ・マクレーンの長女ソフィ・マクレーンと申します。以後お見知り置きを」
おせいじにもいいとは言えないお仕事着で登場しスカートを摘み淑女の礼をとった
「夕食のご用意が整いました」
王子御一行様が声を発する前にと大きい声を勢いよくあげた
「はい!お手伝いします!」
今行かなくていつ行くと言わんばかりかすぐにクレアは扉まで行き
「食堂にてお待ちしております」
淑女の礼をとりソフィの手をひいて慌てて共に退室した
「どうしたのクレア急がくても夕食は沢山用意したわよ」
「違うのソフィ姉様」
ん?とソフィは手を引かれたまま首を傾げていると
「やっぱり何でもない」
「あ!ヘイリー王太子に失礼をしたのね!大丈夫よ何せ急な宿泊だしね!言葉遣いや態度が悪いだけで責められやしないわ」
「う…うん」
言えないまさか婚約…いやしてないけど…断じて!してないけどそんな冗談を言い合ったなんて
クレアは疲れたと言ってまだ埃の残る部屋で庭師とともに夕食をとりそのまま先に1人ふて寝した
明くる日
晴天に恵まれ、ぬかるんだ道はみるみる乾いていった、大事を取り明日出発すると告げた王子御一行様はヘイリー以外、特にフィンとレイブンはずっとそわそわしていた
考え事があるとヘイリーはフィンとレイブンを部屋の外に出し、扉の前に2人は待機している
フィンは部屋にいる主を思いふーーーーと深い深いため息をはいた
「婚約の話しオルガナ様に言わなかったのは喜ぶべきなのか否か」
昨日の夕食時にクレアがいない事に落胆したヘイリーだったがフィンとレイブンにはそうそうに伝えた婚約の話しをマクレーン家の者には一切話していなかった
「フィン様は心配し過ぎでございます。子供の言った事です」
「レイブンも子供だ、疲れたなら休むといいヘイリー様は私が警護しているから」
「ご心配には及びません。こんな事であたふたしていたらヘイリー様のお供は出来ませんので」
「うっ…それは俺に言っているのか」
フィンは天を仰ぎこの事が王や王弟に知れたらと思うとゾッとした
「頼む!何事もなくおわってくれ!」
最後には神頼みをしたフィンだった
部屋にいるヘイリーは遠くから微かに聞こえる声に耳を傾け窓のそばまできた
外にはクレアと庭師が楽しそうに作業をしていた
ガチャ
「庭へでる」
足早に玄関へ向かうヘイリー
「ヘイリー様!お待ちください!」
慌ててフィンとレイブンはついていった
窓から見たクレアを目指し庭へでたヘイリーはすぐにクレアと庭師を捉えた
「クー!」
まさか!と振り返るクレア
クー?っと振り返る庭師
クレアは慌てて庭師に話しかけた
「えっとそのえっとここは私に任せて!!」
「?いや草むしり大変ですし王子御一行様の騎士様達がお屋敷を見回ってくれてますから今日ぐらいはクレアお嬢様に任せずちゃんとやりますよ!」
ニコリと笑顔を見せた優しい庭師
いやー違うのーこのままだと絶対ボロがでるわ
黙ってやり過ごしたいクレア、手伝ってあげたい庭師
クレアの気持ちを知ってか知らずかヘイリーはクレアと庭師の前までいき庭師に体を向けて
「昨日は良くしてありがとう少しクレアを借りていい?」
「へ?は!はい!畏まりました!」
と庭師はチラリと近くで控えているフィンとレイブンを見ながら今いる場所から反対側にある納屋へと向かった
畏まってどうすのよ!!と地団駄を踏んだクレアにヘイリーはニコっと笑い
「今日も可愛いねクー」
「ありがとうございます。ヘイリー様も素敵でございます。」
ガラの悪い人達から冗談を言われ慣れているクレアは目細めヘイリーから逸らしながら棒読みで返事をした
「す素敵…」
カーっとヘイリーの顔が赤くなり
「嬉しい、クーから言われるとすごく嬉しいよ」
とまんべんの笑顔になった
「へーそーですか」
大人びているクレアだか所詮8歳児だもうヘイリーを抑える事は出来なかった
「クー僕の事リーって呼んで」
「だめです!出来ません」
「呼んでくれないなら口にキスするよ」
「きっきっキス!?」
思わず大きくなってしまったキス発言の声を聞いたフィンとレイブンは目を見開いて勢いよくこちらを向いた
ヘイリーはフィンとレイブンを来るなよと人睨みしてクレアの両手をそっと包んで体を引き寄せた
「ちち近いですヘイリー様!」
「リーって呼ばないの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「クーキスしていいって事?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・リー・・・・・・様」
「リーだよクー」
「リー」
「嬉しいよクー僕との婚約改めて受けてくれたんだね」
「へ?」
「愛称は家族や婚約者同士で言い合うものだから…幸せにするねクー」
「え?あ?う?」
太陽の光を浴びたヘイリーの髪はキラキラと輝いて瞳は潤みを含み澄んでキレイな空色をしていたクレアは美しい瞳にうっとりし気持ちとは裏腹にヘイリーをじっと見つめてしまった。ヘイリーはクレアに1歩近づきクレアの額にチュッとキスをした
「ひぃ」
クレアは思わず両目を瞑り顔をしかめた
「ひどいな悲鳴をあげるなんて」
はにかんだ笑顔も眩しいヘイリーは握ったいたクレアの手の甲を自身の口にもっていきまたチュッとキスをした
開いた口が塞がらないクレアは文字通り口を開けたまま固まった
「驚いた顔も可愛いねクー」
ニヤっと笑い絡みつくような視線をクレアに向けたヘイリーだった
異性からキスをおでこだけどされた事も
狙いを定めたような男の顔も
背筋が凍るような恐ろしい感覚も
全てが初めてなクレアだった