1
愛を誓い合って?から七年の年月が経った
クレアは15歳になっていた
あの情熱的な態度は何処へやら、ヘイリーからは誕生日にはドレスやら宝石類、きっと二人が出会った時であろう日に合わせてお菓子やらお花を送ってくるものの、七年間一度も会いには来なかったのだ
二人が出会った年のクレアの誕生日、初めて宝石が送られてきた日にはマクレーン家は騒然となった、ヘイリー様付の近衛騎士が直接渡しに来たのだ、余りにも高価な品だった為、ヘイリーに手紙を添えつつ丁重に送り返した、それ以降は豪華さを抑えた、年相応の品のいい装飾品になった
何よりも、父オルガナや母マリアはヘイリーから高価な物がクレアに届いた意味を理解した。
そしてクレアがヘイリーを好いている事にも気づいた
贈り物も最後に届いたのは五年前
二年もヘイリーからは手紙一つ送られていない
もちろん毎年クレアからヘイリーに手作りの小物や、お菓子を送っていたが、二年前から返事はなくなっていた
姉ソフィとクレア、途中から妹ビクトリアと共にマッケンジー先生の元、勉強に励んでいたが、遂に姉ソフィが上級文官である王宮勤めの文官になれる事が決まった
長らくマクレーン家に居候していたマッケンジー先生だっが、一緒に王都へ行くと言い、王宮にコネのあるマッケンジー先生の計らいで、クレアを王宮の侍女見習いとして一緒に連れ、三人で王都へと向かう事が決まった
クレアはヘイリーと会えない日々を、殆ど屋敷内で過ごし、収穫祭へは一度も行っていない、ヘイリーが訪れるのは突然だったので、すれ違いたくないと屋敷に篭っていた。ヘイリーは忘れないでと言ってくれたのに対して、クレアはヘイリーに忘れないでとは言わなかった、酷く後悔し
クレアは会えないヘイリーを思い
寂しい日々を過ごしていた
家族や屋敷の皆には、元気のないクレアを見る毎日になっていたのでマッケンジー先生の提案には賛成だった。
クレアも一目みたら諦めて気持ちに整理をつけようとしていた
出発する当日、別れの挨拶をし馬車へ乗り込んだ
王都へ向かう途中ソフィはクレアが黙って居るのを心配して、喝をいれようとした
「クレア!ヘイリー様に会ったら蹴飛ばしてやりなさいよ!全く、ヘイリー様は思わせぶりな態度して!」
「まぁまぁ待てソフィ、ヘイリー様はクレアをまだ好いておられるやもしれんぞ」
「だったら手紙の一つでも送るはずよ?もし、気持ちが無いのなら、早いほうがいいわ」
「そう焦るでないソフィ、多方面から物事を見よと、教えたじゃろうが!」
むうとまだまだ未熟な自分を少し反省したが、クレアが心配で焦るソフィはまたすぐに口を開いた
「クレアはどうなの?どうしたいか決めたほうがいいわよ」
「うん...私は、一目見たいだけなの、それだけ」
「そんな元気のない声だして、昔のクレアはどこ行ったのよ、でもね、私やマッケンジー先生が近くにいるから、それだけは忘れないでね」
「忘れ.........もちろん、忘れるわけないわ」
クレアは覚悟を決めた、振られても気丈でいようと
王都とへ着いてからは慌ただしかった。
マッケンジー先生の屋敷へ向かって初めて気がついたが、なんとマッケンジー先生はヘイリーと一緒にマクレーン家に泊まったレイブンの祖父
マッケンジー・サミュエルソン
その人だった、さらに代々宰相に任せられる程、優秀な家計だったのだ。
そこでハッとして、ギギギとソフィとクレアは顔を見合わせた
「ねぇクレア、勉強したの覚えてる?」
「えっええ、もちろん、まさかマッケンジー先生が...」
「前任の宰相だったなんて」
「皇太后のご兄妹だなんて」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
前宰相発言は文官になるソフィが、ヘイリーの親族を気にしたのがクレア、二人同時に声を出した。
様々な思惑が交差する?中、馬車は高級住宅街を抜けて、遂に王宮に到着した
王宮の門はとても大きく、マクレーン家の屋敷よりも高い塀で囲まれており、何人もの門番が見えた。
門番は馬車に止まるように指示をした。立ち止まると門番が二人近づいてきた。
「許可証はあるか?」
「はい、こちらです」
「こちらもご確認ください」
ソフィとクレアは王宮から届いた許可証を、門番に見せた。
「孫に用があるのでな」
門番は許可証を見る為に下を向いていた顔をあげた
「孫?」
「マッマッマッケンジー様!!」
「マッケンジー様?」
マッケンジーが馬車から顔を出すと、門番達はザワザワと騒ぎだし、門番達や近くにいた人達までも騒然となり、マッケンジーを尊敬の眼差しで見た。
「ちょっとすごい注目されない?」
「やっぱりマッケンジー先生ってすごい人だったのね」
ソフィとクレアは上品な笑を崩さすに口の開きを最小限に抑えながらヒソヒソと話した
マッケンジーの注目と共にソフィとクレアも注目を浴びてしまい、そそくさと馬車を走らせた。
「そこに荷物を置いて中へ運ぶといい」
馬車から降り荷物を整えると、使用人寮と文官の住まいは別になるため、ここでお別れとなった。
「マッケンジー先生、何から何までお世話になりました」
「ソフィは何も心配はいらん、その力を存分に発揮するのだ」
「はい、ご指導賜り......本当に...ありがとうございました」
ソフィは昔を思い出し少し涙ぐんでしまった
「マッケンジー先生、不出来な生徒でしたが、良くして頂き大変お世話になりました」
「クレアは自分の気持ちに正直になるのだ、今のクレアは、周りに気をつかい過ぎている」
「そんな......私はわがままです。皆には心配ばかりかけて」
「ふぉふぉふぉ、そう深く考えず、周りに任せてみるのも一案じゃぞ」
「はい先生」
「二人とも、これが最後の別れでもあるまい、会いたい時はワシを呼べばいいのじゃぞ」
はいと二人は返事をし、笑顔で三人はそれぞれの道へ別れた
初日は移動日として予定通りの休暇をもらい、明日からは業務がはじまる、束の間の休息をレンガ造りの立派で冷たい王宮の片隅からヘイリーを思うクレアだった
クレアの担当は王宮の奥、白を基調とした上品な家具が並び可愛らしいテラスがあるとても広い部屋。人の気配は感じられず、長年人が入っていない雰囲気があった。
テラスを出れば色とりどりの花が咲き、白い家具はそんな花達をより一層華やかにした
よし!っと気合いを入れて先ずはお部屋の掃除かしらっと考えを走らせているクレアは後ろからくる人に全く気付いていなかった
「この部屋の担当の方ですか?」
ドキっとして振り返るクレアは声を掛けた主を見て、目を見開いた
声の主は、身長はとても高く、体つきは程よく筋肉がついてガッシリとしていた、剣を腰にさしていたので一目で騎士だと分かった。髪が金糸のようにキラキラと輝いて、少し垂れ目の優しく愛嬌のある顔つきながら目は燃えるように赤く、意思の強さを伺わせた。ヘイリーとは別の、まるで大きい犬のような美丈夫にクレアは王宮の恐ろしさを改めて感じた
「はい、騎士様。クレア・マクレーンと申します。」
スカートを摘み、淑女の礼をとるクレア、マッケンジー先生と何度も練習した礼は優雅で完璧だった
「ご苦労様、私はティム、少しいいかな?」
「はい、ティム様いかがなさいましたか?」
「実は三日後にヘイリー様がこちらの部屋に入られる事が決まったんだよ、庭の花と家具を変えるらしい」
「三日後で御座いますか?」
たった三日なんて!こんな広い部屋を!?一人で!?
クレアは広い部屋と少し整えているとはいえ、伸びっぱなしの庭を見て顔を青くした
「大丈夫、庭は庭師を呼ぶよ!時間がないからね」
ティムせいではないのに、申し訳なさそうに話した
それから庭師の人数と、と言いながらクレアとティムは打ち合わせをした。庭師には三人呼び室内はクレア一人と空いてる時間をみてティムが手を貸してくれる事となった
「それにしても、侍女が少ないのですね」
「まぁ色々とあって、辞めてしまったんだ」
「そうでしたの、でしたら頑張って見違えるくらい綺麗に致しますわ!」
「そんなに気合い入れなくても、ヘイリー様は部屋が汚いくらいでは、お怒りにはなられないよ」
くすくすと笑うティムだったが、クレアはもしかしたら会える機会がきたのかもしれないと、胸をドキドキさせていた