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食話店 夢遊の店  作者: 食物名団.鯖
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一皿目

いらっしゃいませ。当店、夢遊の店へようこそおいでなされました…

(わたくし)、店のオーナーと店長を担当しております夢遊(むゆう)と申します…以後、お見知り置きを。

さてお客様、貴方様は当店を始めてお越しいただいたのでしょう?分かります分かります。私まぁなんというか、仕事柄というか、分かってしまうんですよ。

まぁとにかく空いている席にお座り下さい。ご注文はそこのボタンを押していただければ係りの者がご注文を承ります。では、ごゆっくり…






お待たせしました。ご注文は…

おや、貴方様でしたか。ご注文を承りますが、どれになさいますか?

え?当店の今日のオススメ?承知いたしました。ではごゆっくりお楽しみください…











とある高校での事……

「志乃ー!!もうそろそろ学校に行ったらどうなの?!」

うるさいなぁ。ほっといてくれたらいいのに。

私、高崎志乃(たかさきしの)は高校をずっと休んでいる…自分でも悪い事だと思ってる…

けどさ、クラスの雰囲気が私には合わない。だから学校に行きたくない。それがどうかしたの??

「志乃ー!!」

「うるせぇな!黙ってろよくそがぁ!」

私はそう言ってパソコンがある自分の机に座り、パソコンの電源を入れる。

デスクトップを見て私はため息をつく。はぁ…私もこんな女の子になりたいな、と思う。いつからこんなオタクまがいな事になったんだっけ。

私はまたいつものようにネットをサーフィンする。

そして私は驚くものを見つけた。

「なにこれ……えっと…死神スイッチ??」

正確には死神を呼び出してそのスイッチを貰う、というらしいものだった。呼び方も詳しく書いてあった。

「えっと…足を肩幅に開き、首を左に捻りながら膝をついて三回「サモン・ザ・リッチ」と呼ぶ…??」

馬鹿馬鹿しいと思った。だが私はとても興味があった。何しろ死神だ。

「こうかな?サモンザリッチ!サモンザリッチ!サモンザリッチ!」

呪文らしきものを唱え終わったが、何も起こらない。やれやれでまかせか…

「はじめまして。私は死神でございます…以後お見知りおきを。」

「きゃああああああああああああ!!!」

黒いローブに骸骨頭。おまけに右手には鎌。絵に書いたような死神がそこにいた。

「おやおやぁ??貴女が私を呼び出したのですか。んで要件はなんでしょうか?」

とっさに声が出なくなったが、私は恐怖を押し殺して自分の願いを言った。

「し……ししし死神スイッチをわた、私に下さい!!」

死神は「?」という顔をしていたが、すぐに理解し、そして嘲笑った。

「あぁあぁ、死神スイッチですね…いいでしょう。ただし条件が一つ。私は定期的に貴女の所へお邪魔します…勿論他人に姿は見えていない状態で。宜しいですか?」

私は二つ返事で、首が取れるほど縦に振った。

「ウクク…さぁ、これが死神スイッチです。対象の顔を思い浮かべながら押すと、その人の存在ごと『抹殺』されます。ああそれと一つ、私ら死神は消そうとしても消せませんからね。ではまたお会いしましょう。」

死神はそう言うと、私の窓から飛び去っていった。

私はとにかく試してみたかった。しかし身近な人にすると危険だ。

だが、実験が終わればそれでもいい。

「志乃ー!!あんたさっきから何やってんの!!」

ああ煩い。そうだ、あいつにしよう。

「えっと…こうかな?」

死神スイッチを右手の人差し指で押す。すると「ピー」という音がした。それだけだった。

「…何も起こらないじゃん。あっ、確認しなきゃいけないんだっけ」

私は部屋のドアを開けて下に降りる。母を探してもどこにもいない。

「…本物だ!死神スイッチは本物だったんだ!」

私は生まれて初めて、胸の奥から熱い何かがこみ上げる感覚にたちまち虜になった。

その日は学校など頭になく、私はこの感覚をもっと楽しむために都会に行く事にした。

その日はいつもより寒く、雪が降っていた。私はコート、手袋、マフラー、財布を持って出かける。

勿論コートのポケットには、死神スイッチ。

「都会って人がゴミみたいに沢山いるから、何百人居なくなったって別に関係ないよね…ふふ」

私は都会より少し離れた場所だったので、電車で行く。

途中に痴漢が沢山いたが、全て『消して』きた。

人を助けたという達成感と、同時に人を殺したという事実と喜び。

私は命を超越していた。この世の誰よりも、という自信があった。

電車特有のガタン、ゴトンという音が、私に安らぎをくれる。人を消して疲れている私に電車が語りかけてくれるようだった。

久しぶりに清々しい気持ちになったから、私自身が疲れたのだろう。

都会までまだまだ時間がある。私は静かに目を閉じて、ぐっすりと寝た。

都会に着くと私は手当たり次第に人を見ては死神スイッチを押していった。私だけが知っている事実。どんどん通行人が消えていくことに、私は昔の小さい頃のことを思い出した。

小さい虫をむやみに踏み潰したり、ハエを叩いて殺したりする感覚。悪意などない、純粋な殺戮。

「…とっても感覚が似ている!ふふふ…みんな死んじゃえ。」

一旦休憩だ。私はトイレに駆け込み、用をたす。

するとさっきの死神が出てきた。

「ち、ちょっと!ここは女子便所よ?!」

死神はそんなことお構い無しに私に報告してきた。

「まぁまぁ…あの世に行けばそんなの関係ありませんよ…それよりおめでとうございます!貴女は先程死神スイッチで人を『抹殺』した回数が百回を超えました…なので少し、死神スイッチをパワーアップしましょう。対象の半径50m範囲の人間も『抹殺』出来るようにね。」

死神はそう言うと、私の目の前で何やら不思議な暗号を唱えた…どこの国の言語とも似て似つかない不思議な感じがした。

「はい!オーケーです!ではまたお会いしましょう…次は千人ですかねぇ…」

そう言ってまた私の目の前から死神は消えた。

そして用を足した私は、少しとても大胆なことを思いついた。

それはとても最高に気持ちが良くて、体が震える様な感覚だ。

私は服と下着をすべて脱いで、一矢まとわぬ姿になり死神スイッチだけを持って都会を歩くことにした。

私を見たほとんどの人たちを消していく。

「おい君!!とにかく署までご同行願おう!」

いつの間にかお巡りさんが来ていた。とにかく消す。

「いやー最高に気持ちが良い……ゾクゾクするよ…もうやばい、こんなの人間の知っていい気持ちよさじゃないよぉ!」

私はラブホテルの近くに行き、そこの近くに座り込む。勿論股は全開で、だ。

(おいみろよ…あの少女、全裸で股開いてやがる…)

(とんだ露出狂ね…やば…)

(ちょっと声かけて犯そうか)

私の耳は結構いい方だ。とりあえずひそひそ話をしていた人達を全員消す。この調子だと千人はものの数分で済みそうで楽しい。

おまけに私の隠し持っていた性の悦びが分かってきた。

悦びに浸りつつスイッチを押していると、死神が報告してきた。

「おお!!ものの数分で千人殺すとは…素晴らしいですっ!!しかし…なぜすっぽんぽんなのです??」

そんなことどうだっていい。さっさとパワーアップしてもらいたい一心で私はスイッチを押してきたのだから。

「とにかく!パワーアップしてよ死神!!」

死神は高笑いしながら、私を見た。

「では…最終段階です。パワーアップしたあとスイッチを押せば、日本国民が貴女を残して消えます。まぁ最終決定は貴女に任せますがね。」

死神はまた暗号を唱えた。するとスイッチが光った。

「ではまたお会いしましょう…おそらくは、ですが」

死神は空に飛んでいった。

私は迷わずスイッチを押した。だって、面白いんだもん。

すると急にあたりが静まり返り、全く人がいない。

大きい声で卑猥な単語を叫んでも、誰も反応しない。

わたしを犯してと叫んでも誰も来ない。日本は私だけのものになった。

するとすぐに死神がやってきた。

「いやー最高です貴女は!日本は貴女様の物です!私は最後の仕事をお伝えに参ったのです。それは…」

そこまで死神は言ったのに、じれったい。私はすぐに聞き返す。

「どうしたの??早く言ってよ!」

死神は重い口を開いた。

「……それは、言えませんね。まぁ押してみてください。どうにかなります。おそらくは」

そう言うと死神は帰っていった。

「まぁいいや。押してみよっと」

次の瞬間、私自身が消えた。もう何も感じられない。

そしてこの地球には、人類がいなくなった。












「押しちゃいましたね…やっぱり人間は愚かな者です。人間の祖先は禁断の果実に手を出すくらい欲にまみれていましたからね…やっぱり馬鹿ですね。彼女も同じ結末を送ってしまった。さて次は…」


「三千万光年先の銀河にでも行って、死神スイッチを渡しますか」













ありがとうございました。死神スイッチ、お口に合いましたでしょうか。お客様はどうしますか?死神スイッチがもしあったら。

一つ余談ですが、そこのスイッチ。死神スイッチによく似ているそうです。ふふふ…

あれ、もうお帰りになりますか?わかりました。

それでは、またのお越しをお待ちしております…

ありがとうございました…

私、鯖からも、またの来店をお待ちしております…

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