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日常  作者: 太郎
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後輩

 

「せぇんぱぁぁぁぁあーい!!」


 ああ、今日もまたあいつがやって来る。休み時間になるとやって来て私の周りを彷徨く。


「うざい」

「そんなこと言わないで下さいよー! 先輩ったら照れ屋さんなんだから」


 がばっと後ろから抱きついてきた後輩(仮)を全力で払いながら、次の授業の準備をする。

 彼は私のことを先輩と言うが同学年だし同い年だから、先輩でも何でもない。だから私は彼のことを後輩(仮)と呼ぶ。

 何故なのか分からないけど入学した時から彼は私のことを先輩と呼んだ。それからは、こんな風になつかれてしまっている。


「死ね。触るな」

「ツンデレだねー」

 耳の後ろで楽しそうに笑う声が聞こえるが、彼は何か勘違いをしている。

「違うわ」


 払うことすら面倒になって取り合えず次の授業のチャイムまで彼をぶら下げておくことにした。

 全く、毎時間、毎時間ご苦労なこと。こうやって私を構いにきて何が楽しいのかしら。

 元々男子校で今年から共学になったけど私しか女子生徒がいないお陰で私は友達がいないから、こんな後輩(仮)でも嬉しいんだけど。

 他のクラスメートは私が話しかけようとすると顔を赤くして戸惑ったり、逃げ出したりするから私は嫌われているんだと思う。

 だから、こんな後輩(仮)でも暇潰しの相手にはなるから思いっきり突っぱねることが出来ない。

 正直このポジティブシンキング野郎のお守りはキツいけどね。


「照れ屋さんー」


 ぷよぷよと頬っぺたに指を差してくるのがウザい。小学、中学と女子校だったから男子との接し方は分からないんだけどこれで良いのかしら。

 他のクラスメートが私を睨んでいる様な気がする。ああ、やっぱり皆私のことが嫌いなのね。

 分かっていても、嫌われるのは悲しい。


「照れてないわ」

「えへへー。あ! もうすぐ授業だから教室帰るね」

「はいはい」


 後輩(仮)のことを見ようともせず適当に手を振ると、後輩(仮)はさっき抱きついたよりも強く私を抱き締めた。


「先輩は自分のこと理解してないから、ちゃんと気をつけるんだよ。僕以外の男の話は聞いちゃダメだからね。アイツ等は危険だから」


 後輩(仮)が私の耳元で囁く。

 私が嫌われていることを知っていてこうやって心配してくれる後輩(仮)の気持ちが嬉しい。いつもこうだったら良いのに。


「苦しい」

「ごめんね。じゃあね」


 ちゅっと頬にキスをして後輩(仮)は教室を出てった。私は後輩(仮)が口を付けた所を丁寧に拭うと、クラスメートの視線が私に向いていることに気が付いた。

 止めて。そんな目で見ないで。怖いよ、助けて。後輩(仮)なら私を助けに来なさいよ!


「な、んですか?」

 震える声でクラスメートに聞くと口々に声をあげた。


「あー、何でこんなに美人が俺等のクラスにいるっていうのにアイツに手をつけられてんだよ!」

「話しかけたくても、近づいただけでアイツに殺されそうになるし」

「そうそう、何か変なことを囁かれてるし。俺達のアイドルだっていうのに」

「アイツに目をつけられた人間は消えていくからな……俺は彼女を眺めておくだけにするぜ」

「そうだな。勿体ないが自分の命の為にもな……」


 何か分からないけど私と後輩(仮)のことを話題にあげていること位は分かった。


「へ、へ?」


 辺りをキョロキョロと見回すと隣の席の信吾ちゃんが小声で耳打ちした。

 信吾ちゃんはオカマさんだから、唯一の女友達みたいな感じで接することが出来るし、何でも話せる。他のクラスメートみたいに私のことを嫌ってないしね。


「アンタ、気づいてないでしょうけどあの犬っころに 助けられているんだからね。感謝しなさいよ」

「う、うん? ありがと。信吾ちゃん」

「止めてよ、本名だすの。今のアタシにはアリスっていう可愛い名前があるんだからぁ」

「そうだったね。ごめんね」

「もう、ぷんぷん」


 信吾ちゃん改めアリスちゃんは頬を膨らませて怒ったけど、その姿は私よりも女性らしかった。

 意味は分からないけど、私のこの生活を守っているのが後輩(仮)だってことが分かった。うぅん。仕方ないから次のお昼休みは一緒にご飯を食べてあげよう。


 そんな後輩じゃない後輩との日常。



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