生徒
「先生は最低です」
僕の受け持つクラスの生徒が言った。
彼女は全体的に地味で、僕が高校生だった時に彼女と同学年だったとしても友達になりたくないタイプだ。
容姿はその性格とは裏腹に学年でも1位、2位を争うレベルなのだがモテることがないのはきっと性格のせいだろう。
それに、彼女は頭が良い。
しかし容姿に頭に(性格は除いて)全て揃った彼女なのに、何故か僕の側にいることが多い。
毎日昼休みは僕のいる科学準備室に来ては食事を共にする。特に話すことはないが嫌がって追い返す理由もないから拒まずに入れていた。
なのに、何故だ。
今の僕は彼女に最低呼ばわりされている。
確かに僕はTHE平均な男で特に秀でる所もなく、側にいて楽しいと感じさせることも出来ないだろうが……何故だ。
僕が眼鏡だからか? 僕が地味だからか? 僕が平凡だからか? 僕が……
「先生は先生だからです」
僕の心を読んだかの様に、彼女は答えてくれた。
が、『先生は先生だからです』……意味が分からない。彼女が頭が良い女子高生だという点を差し引いたとしても分からない。理解できない。
僕が最低なのか、それとも先生という職業が最低なのかも分からない。
「……君の言葉は意味が分からない」
「そういう点が最低なんですよ。少し位は私の言葉を理解出来る様な柔軟な頭を作れば良いと思いますが」
ぐさり、彼女は力強くタコさんウィンナーを箸で貫いた。そのタコを僕とリンクして見てしまい、思わずお腹が痛くなった。
彼女はタコを咀嚼させながらも、上目使いで僕を見る。
その眼差しは僕に何かを訴えているということだけは伝わるのだが……肝心の内容は全くこない。
今日も静かだ。だが、いつもの沈黙の中での昼ごはんとは違った重々しさがここにはある。
おかしいな。僕は今まで平凡に生きてきたはずなのに。こんな環境とは無縁のところを生きてきたはずなのに。
「具体的に言うと?」
「全てを語ると高校生活全ての昼休みを無駄にする程の長さになるのですがそれでも宜しいと言うのですか?」
「やっぱりいいです」
「だと思いました。現実的に言ってそんなにも無駄な時間を過ごすのはアレですものね」
もにゅもにゅと口を動かしながらも彼女は僕への視線を外さない。何だろう。この執念。
でも僕は彼女とは目を合わせたくない。別に照れてるとか緊張してるとかじゃなくて……怖い、から?
「でも、最低な点も嫌いじゃないと言いますか…むしろ、好意的に思ってると言いますか……なんか、そんな感じです」
プイッという効果音がつきそうな動きでやっと僕から視線を外してくれた。
微妙に頬が赤く染まっている、気がする。
うぅむ。よく分からない生徒だ。
そんな分からない生徒との日常(?)。
一応これで終わりということにしますが、再び短編が集まった時に連載を再開する予定です。




