表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
日常  作者: 太郎
10/59

変態

 

「パンツ、何色?」


 久し振りになった電話の相手の第一声はこれだった。何かいろいろと悲しい。まさかこんな電話がかかってくるとは。

 その前に僕は男だから色を聞いたとしても何も楽しくないだろ。


「はじめまして、僕は男ですよ」

「うーん。声可愛いから女性だと思っていた」

 残念そうな相手の声。そりゃそうだ。相手が男なのだから。

「まあ、男でも良いや。何色?」

 良いのかよ。と心でツッコミをいれながらため息をついた。

「聞いて何が楽しいんですか?」

「んー、暇潰し? 別に俺は男好きとかいう趣味はないよ」

「なのに、聞くんですね」

「てか、何故俺の話に付き合ってくれる訳? 今までのやつは大抵俺が話した瞬間に切ったけど。まさか、お前にはそういう趣味が!? 変態!!」


 変態に変態と罵られた僕の気持ちを考えて欲しい。どれだけ虚しくなるかお分かりだろうか?


「変態に、変態言われたくないです」

「へへっ」

「何故照れてるんですか? 変態って言われて何が楽しいんですか?」

「え、そんなに俺の事が知りたいの?」

「恥ずかしそうな声をあげるのはやめてください」


 何気に普通に会話できているのがおかしいな、と改めて思いながらも会話を続ける。


「切らないの?」


 変態はしばしの沈黙の後、言った。


「僕はかかってきた身なのでどれだけ話しても良いので切りません。だから、変態が切らない限り通話料が増えていきます」

「くそっ! そんな嫌がらせがあるのか!?」

「あなたの存在事態が嫌がらせだってことに気づいてないんですね」

「ちょっと待って。そのつれない話し方誰かに似てるな」

「同意見です。あなたの変態発言誰かに似てます」

「お前の名字言ってみて」

「じゃあ、あなたも言ってくださいよ」

「せーので言うぞ。せーの…」


「「中村!!」」


 隣の部屋から大きな声で中村と聞こえ、僕の電話の奥からも中村と聞こえた。

 まさか、こんな広い世の中そんなことある訳ない。

 僕の隣の部屋には実の兄が住んでいるが、まさか、僕の兄が僕にパンツの色を聞くはずもない。

 そうだ、きっと友人が悪戯でもしたんだろう。

 そんな思いが相手にもあったのだろう。


「きょ、今日のことは忘れてくれ!」


 と一方的に告げられた後、通話は終了された。

 しかし、僕らの関係はこんな電話のように簡単に切れるものじゃないから今後の対応が心配になった。


 そんな変態な兄(ではないと思いたい)との日常。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ