変態
「パンツ、何色?」
久し振りになった電話の相手の第一声はこれだった。何かいろいろと悲しい。まさかこんな電話がかかってくるとは。
その前に僕は男だから色を聞いたとしても何も楽しくないだろ。
「はじめまして、僕は男ですよ」
「うーん。声可愛いから女性だと思っていた」
残念そうな相手の声。そりゃそうだ。相手が男なのだから。
「まあ、男でも良いや。何色?」
良いのかよ。と心でツッコミをいれながらため息をついた。
「聞いて何が楽しいんですか?」
「んー、暇潰し? 別に俺は男好きとかいう趣味はないよ」
「なのに、聞くんですね」
「てか、何故俺の話に付き合ってくれる訳? 今までのやつは大抵俺が話した瞬間に切ったけど。まさか、お前にはそういう趣味が!? 変態!!」
変態に変態と罵られた僕の気持ちを考えて欲しい。どれだけ虚しくなるかお分かりだろうか?
「変態に、変態言われたくないです」
「へへっ」
「何故照れてるんですか? 変態って言われて何が楽しいんですか?」
「え、そんなに俺の事が知りたいの?」
「恥ずかしそうな声をあげるのはやめてください」
何気に普通に会話できているのがおかしいな、と改めて思いながらも会話を続ける。
「切らないの?」
変態はしばしの沈黙の後、言った。
「僕はかかってきた身なのでどれだけ話しても良いので切りません。だから、変態が切らない限り通話料が増えていきます」
「くそっ! そんな嫌がらせがあるのか!?」
「あなたの存在事態が嫌がらせだってことに気づいてないんですね」
「ちょっと待って。そのつれない話し方誰かに似てるな」
「同意見です。あなたの変態発言誰かに似てます」
「お前の名字言ってみて」
「じゃあ、あなたも言ってくださいよ」
「せーので言うぞ。せーの…」
「「中村!!」」
隣の部屋から大きな声で中村と聞こえ、僕の電話の奥からも中村と聞こえた。
まさか、こんな広い世の中そんなことある訳ない。
僕の隣の部屋には実の兄が住んでいるが、まさか、僕の兄が僕にパンツの色を聞くはずもない。
そうだ、きっと友人が悪戯でもしたんだろう。
そんな思いが相手にもあったのだろう。
「きょ、今日のことは忘れてくれ!」
と一方的に告げられた後、通話は終了された。
しかし、僕らの関係はこんな電話のように簡単に切れるものじゃないから今後の対応が心配になった。
そんな変態な兄(ではないと思いたい)との日常。