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日常  作者: 太郎
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姉弟

ものスゴく短いストーリー。


 

「姉さん、どこに行くんですか?」


 端正な顔から流れるように発せられた言葉はやはり美しかったけど、私を縛り付ける内容のものだった。


「どこ、だと思う?」


 逃げるかのように質問で返すと彼は端正な顔をぐしゃぐしゃに歪めて私の腰に抱きついた。私よりも年下な弟はいつの間にか力が強くなっていて、正直痛い。


「いなくならないで下さい」

 震える声で彼は言う。

「うん、分かったよ」

「分かってません」

 私の腰を抱く腕の力が強くなってくる。痛いってば、と言いたいのだが言うと彼を泣いて謝らせる結果になるから今は言わない。

「僕には姉さんしかいないのに、こうやって出ていこうとして酷いです。今度僕から離れようとしたら監禁して僕から離れられないようにしますよ?」


 ヤンデレな発言だなぁ。と呑気に聞いていたが自分に対する発言だということを思い出して少し冷静になった。

 こんな痛い発言なのに、彼は至って真面目に言うから本気で監禁されそうな気がする。


「うん。離れないよ」

「一生ですからね」

「うん、一生」

「そうです。一生僕の側にいて他人に触れあわないで僕だけを見てくれれば良いんです」


 私の人生はなんともつまらないものになりそうだ。でも彼ならヤンデレ的イベントをおこして面白いことになるかなって考えてから、面白いことになるのは私の身体だろうと気づいて少し身震い。


「姉さんは一生僕のモノですからね」


 念を押すように言った彼の言葉は少し震えていて、自信がないように感じられた。

 私は彼のモノ発言に慣れてしまって引くことすらしなくなった自分に恐怖を感じながら、腰に絡めつくかれの頭を撫でる。

 ゆっくりと赤子を癒すように。優しく、優しく。


「そうだよ」

 彼のモノという発言を肯定してあげると彼はとても綺麗な笑顔で私を見上げて頬にキスをした。

「姉さん、愛してる」


 愛の言葉のはずなのに呪詛に聞こえてしまう。

 ところで彼は世でいうイケメンっていう部類に配属される人間なのに中の下の私に依存するのかが、分からない。

 まあ、今更な疑問だけど。


「じゃあ、行ってくるね」

「他人と話をしないでね。視界にも入れないでね。守らなかったら……殺すよ?」


 彼の言う他人とは彼以外の人間ってことなんだけど、そう言うことを簡単に言える彼を改めてスゴいと思った。

 あはは。私ってすぐに殺されちゃうじゃん。てか、こんな条件をクリアできる人はいないと思うよ、とは彼には告げない。


「うん。行ってきます」


 バイバイ、と手を振って振り返ると彼は今生の別れのように泣いていた。自分の弟とは思えない綺麗な涙で少しみとれた。

 まあ、今生の別れじゃないんだけどね。

 だって私はただ高校に通学しに行くだけなんだもの。何故彼が私と一緒に来ないのかは、彼が中学生だからという至極当然な理由。

 それなのに毎朝毎朝、こんなやり取りを繰り返している。可愛いし、弟だから許してしまうんだけど。


 そんなヤンデレじみた弟との日常。



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