3氷は額にお願いします。
目を開けたら、
「ひょ?!」
・・・氷が落ちて来ました。
え?何の嫌がらせ?
自分の置かれた状況が理解出来ず、思考を巡らせていると、
「・・・起きたのか?」
耳元から突然、声が聞こえた。
「え?あ、はい。」
「そうか。」
・・・・・・。
視界いっぱいの氷が邪魔でさ、なーんも見えん訳。・・・そもそもさ、何故あたしは目の上に氷を置かれてるのか。ココドコ、アナタダレ。聞きたいことは山ほどあるけど、周りの状況がわからんことにはなー、どーにもこーにも。
・・・また不思議な事に、腕が動かんのやな、これが。なんでやろ、まじで。と、いうことで。
「・・・あのー、すいません。氷、どかしてもらっても、いいですか?」
「・・・お前は熱がある。だから、冷やさなければならない。」
「はぁ。」
・・・・え?で?・・・てか、
「冷やすのって、額ちゃいます・・・?」
目の上は変やで、うん。
「・・・そうなのか?」
ひょい、と氷をどけられ、急に明るくなった視界に飛び込む、紫と銀。
「・・・あ。」
紫色の瞳に、銀色の短髪。あの時のーー。
「・・・無事、やったんですね。」
嬉しさに、自然と笑顔になる。
「もう、大丈夫なんですか?」
「・・・ああ。ありがとう。」
あ。笑った。かっこええなぁ。やっぱり悪い人ちゃうかったんや。殺されるかもーとか思ってごめんなさいねー・・・って、待て待て。
「・・・は?」
動かない腕を見てみると、包帯でぐるぐる巻になって、ベッドに括り付けられていた。
・・・ああ、そら動かんわな。
「・・・って、なんでやねん!え?なになに?罰ゲーム?罰ゲームなん?これ。」
パニックになるひなたを、青年は不思議そうに見た。
「どうした?」
「っ、どうしたもこうしたもあるかーいっ!起きて腕縛られとったら、焦るやろ⁉びっくりするやろー⁉なに不思議そうにしとんねーんっ‼‼」
興奮した様子で一気にまくし立てるひなたの口を、青年は手で塞いだ。
「む?!」
「落ち着け。傷が開く。」
おいこら、手、手離さんかい!・・・ん?傷?えーっと、・・・あ。
「体中切りつけられたような傷だらけ、特に脇腹の傷は少し深かった。しかも動き回ったのか、傷口が開いていた。・・・お前、血だらけで倒れたんだぞ?」
・・・それは、あなたもですけどね。
「だから、動いて傷が開かないようにベッドに括り付けた。」
・・・いやいやいや。なんか違う気がする。よくわからんけど、激しく何かが間違ってる気がするんですけどーー?
「よく寝なければ、よくならない。さあ、寝ろ。」
そう言った青年に、無理矢理意識を沈められました。
え?まじで?それ、絶対なんか間違ってるってーーー!!
あたしの抗議は、意識と共に闇へと沈んだ。