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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

その望みは誰のもの

作者: 如月
掲載日:2026/03/20

よくある異世界召喚の、よくあるバッドエンド。

初創作です。お手柔らかに。

それはゲームやラノベでよくある異世界召喚だった。どうか魔王を倒してくださいっていうテンプレ。

問題はそれに呼ばれてしまったのが、自分だった事だ。

最初は盛大にごねた。

当然だろう。平和ボケした日本人に戦闘なんか出来ない。戦えないからお荷物にしかならない。だから帰して欲しい、と。

けど、向こうは何がなんでも自分に旅に出て欲しかったようだ。戦いは勇者がするからあなたは戦わなくていい、結界による保護と治療魔法による援助だけでいい。旅の間に帰還方法を調べておく、と。そう言われ帰還方法をたてに取られればこちらは言うことを聞くしか無かった。

旅に出て同行者も増えた。連携のため会話に参加する事もあった。この戦いが終わったら何をしたいか、なんて雑談にも乗った。

当然自分の希望は帰ること、一択。少し寂しそうな表情もされたし、行ったことのない街の話や、食べ物、祭りの話なんかもされたが、心が動くことは無かった。

辛く苦しい旅も魔王討伐で終わりを告げた。

王宮に戻り国王から報酬の話が出た。他の人達がそれぞれ望みを叶えてもらい、最後に自分の番が来た。

「元の世界へ帰してください。」

この言葉に国王側も同行者達も硬直した。

約束通り魔王は倒した、だから帰して。

それに対して、他の望みはないのか、だの。まだ一緒にいて欲しい、だの。色々言われたがこちらの返答は「帰して」のみ。


そんな押し問答を終わらせたのは、国王の謝罪だった。

「様々な文献を探したが、帰還方法はない、ということしか分からなかった。今後の生活は保証する、働かなくても生活できるように取り図ろう。申し訳ないがこの世界で過ごしてくれ。」

何かが壊れる音がした。

気分が優れないから部屋に戻る、と告げ広間を後にし自分に宛てがわれた部屋に戻った。

元々帰るつもりで私物の増えていない部屋。

それでも旅に必要になった服や装備を木箱に詰める。同行者達から貰った物も。

部屋自体にも結界を貼った。動力の供給源を寿命とし、術者自身が解除するまで効果を発揮する。

誰にも邪魔をさせず準備するために。

木箱を魔法で燃やし尽くし、元の世界の服に着替える。この後への対策として、手紙も最期の魔法も準備は終わった。

あとはもういい。



あの子が部屋に戻った後、謁見の間の空気は最悪だった。

帰りたがってはいたけれど、いつかは此処で生きていくことを選んでくれると思っていた。

仲間である自分たちも居るし、旅の間も穏やかに微笑んでいる事が多かったから。

きっと別れを惜しんでくれると信じていた。

まずは仲間達で話し合いをさせて欲しい、と国王陛下に進言し退出許可をもらう。


部屋に駆けつけるも警備の騎士から、誰も通すなと言われている。結界も貼られてしまっているので入室できない。と言われてしまった。

なら入れるようになるまで待とう、と椅子を準備してもらい廊下で待っていた。

旅の間あの子が楽しそうだった場所に誘おう、美味しそうにしていた料理も食べに行こう、自分達仲間がずっとそばに居る、そう伝えようと思っていた。

部屋を覆う結界が解け、扉に触れられるようになった。

ノックをし入室していいか声をかけるが返答がない。眠っているのかとも思ったが、胸騒ぎがして顔を見るだけでもいいから確認しよう、と扉をあける。


そこに居たのは見慣れるぬ服を着て、ベッドに夥しい血痕を残し横たわっているあの子の姿だった。

悲鳴を上げる者、へたり込む者も居た。

血痕の量を見ても分かっていたが、あの子の脈を取らずには居られない。

鼓動は止まり、既に冷たくなっていた。もう生きてはいない。

その場でとうとう力が抜け座り込んでいるのにも気が付かなかった。

なんで、どうして。それだけが頭を回る。

警備兵が呼んだのか、陛下達もやってきて騒然となっている。

1度落ち着いた方がいい、と部屋を出るよう促されあの子から手を離した瞬間。

あの子の身体を白い炎が包み、燃え上がった。呆然としている間にあの子は燃え尽き、血痕だけを残し消え失せた。



あの子の死から数日、ようやく動けるようになった俺たちはあの子の部屋に集合した。如何に王族とはいえあの子の部屋には入れない、その権利はない、そう憔悴しきった顔で陛下に言われた。

何か残っていれば遺体の代わりに棺に入れ埋葬する事ができる。死を、悼む事ができる。

その思いで部屋を探すも、暖炉にある灰とベッドにある血痕。それしか残っていなかった。

「あった」

小さな声がした。部屋の隅にあったテーブル、その上に一通の手紙が置いてあった。

震える手で手紙を開く。そこにあるのはきっと絶望だとわかっていながら。


【帰りたい、それだけが望みで希望でした。

それは叶わない。

ならもう生きる理由もありません。】


実はこの世界の魔王は人の負の感情から生れ落ちる。

数十年から百年のスパンで誕生するけど、次の魔王はより早くより強く産まれてくる。

だって異世界人と勇者パーティの絶望を持って産まれてくるから。

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