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【資料2】これはZINE?

 若い女性のブースを去った作家とアシスタントは、次こそ目当てのブースに向かった。事前会議で目星を付けていた30代男性のブースに向かった。この男性は、作家と相互にX(SNS)をフォローし合っており、たまにDMでやり取りするなどの交流がある。

「よお、ジェイム」

 作家が挨拶した。男性は「ジェイム」というペンネームを使って創作活動をしている。縁の薄い眼鏡にやや長めの黒髪、身長170㎝くらいのスラっとした体格である。見た感じ、優しげな雰囲気がある。

「先生、ご無沙汰しております」

 ジェイムは作家に笑顔で挨拶した。

「Xで言っていた『自信作』見せて貰おうかな」

「どうぞ、こちらです」

 ジェイムは、その「自信作」と称されるZINEを紹介した。A5サイズのZINEで、表紙が女子中学生らしき可愛い女の子が描かれている。

「イラストは外注したのかい?」

 作家は単刀直入に聞いた。それに対して、ジェイムは首を縦に振った。

 続けて作家は、そのZINEをパラパラと捲って読み始めた。表紙に描かれていた主人公の女の子が学校において新たな部活を立ち上げるといった話の小説だった。

「ジェイムも中二病なのかな?」

 作家は唐突にジェイムを冷やかした。

「そう言われても仕方ないですね」

 ジェイムも認めた。

「だって、そうじゃないか。こんな中二病と思われる女の子の描写をこれ程までに上手くやるなんて、作者のジェイム自身も中二病の証だよ」

「すいません先生、論拠がやや滅茶苦茶だと思われます」

 これまで傍聴していたアシスタントが指摘したが、作家は聞く耳を持たなかった。

「ところでだけど、これも販売のZINEかな?」

 作家は、先程の女子中学生のZINEの付近にあった別のZINEを見て気に留めた。これもパラパラと内容を見る。中には女の子や車といったイラストが何枚も描かれていた。どうやらイラストレーション・ブックのようだ。

 ここで作家はジェイムの目を真っ直ぐ見て聞いた。

「これもZINEに入るのかい?」

 場の空気が少し重くなった。ジェイムは少し黙った後、

「ZINEですよ」

 とはっきり言い切った。

「なるほどね、こういう文学フリマの場でも、多種多様な物が販売されるようになったんだね」

 作家は納得した。続けて、

「これは自分で描いたのかい?」

「はい、全部自分で描きました」

「なるほど、道理で先程のZINEの表紙とは違って下手くそに見えたわけだ」

「先生、言い方を少し……」

 アシスタントが口を挟むが、そんな彼女には構わず、

「それじゃ、この中二病くさいZINEを買おうかな」

「ありがとうございます。ついでにこのポストカードと併せて買うと、200円引きの1000円。ややお得!」

 ジェイムはそう言って、得意げにブースの前面に並べられたポストカードを見せ付けた。このポストカードも彼の自作なのだろう。絵柄が先程のイラスト・ブックと似ている。

「商売上手だな。んじゃ、これを」

 作家は、先程の女子中学生の話のZINEの、主人公とは違った女子中学生のキャラクターが描かれたポストカードを併せて購入した。

「また、よろしくお願いします」

「ああ」

 ジェイムと作家は互いに笑顔で挨拶し合った。その後、作家とアシスタントはブースを去った。


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