イントロ
とある作家とアシスタントは、小説執筆のための資料集めをするために文学フリマの会場を訪れた。そこで出会う出店者と作品を前に、2人の行動は……?
秋―—それは様々な形容方法がある。読書の秋、芸術の秋、スポーツの秋と言ったりする。読書といえば、芸術といえば、連想されるのは「文芸」。「文芸の秋」なんてフレーズもあっては良いのかもしれない―—という持論を常に持っている人物がいる。
例の、とある中堅作家である。彼は、例の若い女性アシスタントと一緒に東京ビッグサイトを訪れていた。なぜか、それは今後の創作において大切な資料集めをするためだ。
2025年11月23日―—この日は文学フリマ東京41の開催日である。東京ビッグサイトにて12~17時の5時間に渡って開かれる。このイベントが作家は楽しみで楽しみで堪らなかった。
イベント開催前。1キロほど続く長蛇の列に混じっている作家とアシスタント。
「我が愛しのレディよ」
作家はアシスタントに向けて言った。
「寒いんですけど」
アシスタントは率直に言った。
「寒いならもっと厚着してくれば良かっただろう」
寒いといってもまだ本格的に寒いわけではない上に、2人とも時期に相応しい秋服で来ている。
「あなた本当にうざったいですね!」
アシスタントは言葉を荒げた。続けて、
「人の発言の意図をここまで分からない人は初めて見ました」
「言いたいことは分かるよ。流石に『愛しのレディは』は冗談がきつ過ぎた」
「ていうか、周囲に人がいる中でその言葉を複数回言わないでもらえます? 傍にいるこっちが恥ずかしいんで」
「じゃあ、こう言おう。君は『シャーロック・ホームズ』におけるワトソンだ」
「山田って名前があるんでそう呼んでください。言うまでもないですが、私の名前は山田怜です!」
「分かったよ、ツンデレな山ピー」
「…………」
アシスタントは押し黙った。数秒後、溜息を吐いた。
「で、何ですか?」
アシスタントは諦めて内容を聞くことにした。
「開場まで、あと何分だ?」
「…………」
アシスタントは再び数秒間黙った。続けて、
「自分でスマホの時計見てくださいよ!」
と作家を睨みつつ声を荒げて言った。
「冗談だよ。やっぱり君はからかいがいがあるな」
作家は楽しく思いつつもスマホの時計で現在時刻を確認した。
「あと10分か。山田君、心構えはいいかい?」
「何の心構えですか?」
「開場のアナウンスと同時に、我先へと会場へダッシュで飛び込む心構えだよ」
「…………」
何回この沈黙が訪れたのだろう。アシスタントは最早作家の考えにどう対応したら良いか分からなくなっている。だが、ここで何も言わないのも気まずい。
「常識的に終わってます」
「そうだな、終わってるよな」
開場までの無駄話は、ここで終止した。




