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白銀皇女の覇道譚 ~侵略国家の皇女は覇道を歩む~  作者: YUU
第三章 婚約破棄騒動編

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58 第三章エピローグ

今日は二話投稿しております。

前話を未読の方は先にそちらからどうぞ。

 アクトレイテ侯爵邸の襲撃未遂事件の翌日、アルメリアの姿はその侯爵邸にあった。


「皇女殿下、昨晩はありがとうございました」


 開口一番、そう言うのはアクトレイテ侯爵家の当主であるルドガーだ。

 既に昨晩の暗殺騒動の事は彼の耳にも伝わっている。


 余談だが、流石のルドガーも今回の件はアルメリアが自身の子飼いの部下辺りを使って暗殺者を撃退したと思っており、彼女が自らの手で暗殺者達を全滅させたとは全く思ってもいなかったりする。


「皇女殿下はこの暗殺を計画したと思われるウィリアム皇子に対してなんらかの行動を起こされるのですか?」


 ルドガーはこの暗殺依頼を出したのがウィリアムだと考えていた。

 だが、アルメリアは彼の言葉に首を横に振る。


「いえ、今は何もするつもりはありませんわ。お兄様がナターシャの暗殺を依頼した証拠が手に入りませんでしたもの」


 そう、今回の暗殺では厄介な事にウィリアムがナターシャの暗殺を依頼したという証拠が手に入らなかったのだ。

 その為、アルメリアにはウィリアムを糾弾する材料を持ち合わせていなかった。

 だが、彼女にはそれ以上にこの件でウィリアムを糾弾するべきではないと思う理由があった。


「それに今回の暗殺者達の襲撃にはどうにも違和感がありますもの」


 そう、それは彼女の中にある違和感だった。

 気になったのはあの決闘の場でのウィリアムの態度だった。リリアの調べによれば、例の暗殺ギルドに匿名での依頼が持ち込まれたのは、ナターシャが決闘を申し込まれた二日後だ。普通に考えれば、決闘に負けた場合に備えて依頼を出したのだと考える事が出来るだろう。

 だが、決闘の場ではウィリアムは負ける事は考えていない態度だった。


 また、決闘に負けた際の態度にも気になる所がある。もし、彼が予め依頼を出していたのであれば、あの時にはもう少し余裕がある態度をする筈だろう。

 しかし、あの時の彼からはその様な余裕は見られなかった。更に言うなら、決闘の日の夜中を狙っての襲撃というのも気になる。

 ウィリアムが決闘で負けた腹いせに暗殺ギルドに依頼を出したという流れにしたい様にも見受けられたのだ。

 まるで、別の誰かがこの混乱に乗じてアクトレイテ侯爵家を消した上で、ウィリアムに疑惑の目を向けさせる事が目的の様に思えた。

 アクトレイテ侯爵家の暗殺を依頼したのは本当にウィリアムなのだろうか。

 その確証が持てない以上、彼女はウィリアムを糾弾するつもりはなかった。


 そして、彼女はそれをルドガーに説明する。


「ですので、今回の件は今は静観していただけるかしら?」

「……畏まりました」


 彼にとってもウィリアムは憎い相手だが、ありもしない疑惑を向けて自分達の立場を不利にするつもりはなかった。


「では、今後とも娘共々よろしくお願いいたします」

「ええ、分かっていますわ」


 そして、アルメリアは今後の話し合いを続けるのだった。




 アルメリアがアクトレイテ侯爵邸でそんな会話をしている頃、帝都にあるスラムに目立たない様な黒いローブを身に着けた少女が歩いていたら。その少女はスラムの一角にある、とある家の前に辿り着くと、扉をコンコンとノックする。


「来ました」

「そうか、入れ」


 家の中にいる人物の声でローブの少女はその家の中へと入る。

 そして、家の中にいたのはスラムには似つかわしくない身なりの整った男性だった。


「待っていたぞ」


 そして、ローブの少女はローブを脱ぐ。そこにいたのはあの婚約破棄劇の参加者の一人であるアイリスだった。

 しかし、彼女が身につけている腕輪の宝石部は薄黒くくすんでいる。


「進捗は聞いている。婚約破棄に漕ぎ着けた様だな」

「はい」

「よくやった。これで、計画は次の段階に入る事が出来る」


 男は自分達の計画が順調な事に満足した様子を見せているが、その言葉にアイリスは少しだけ苦々しい表情を浮かべる。


「では、早く例の物を」

「分かっている。これが今回の分だ」


 そして、その男は懐から木箱を取り出すと、それをアイリスへと手渡した。

 アイリスがその木箱を開けると、そこに入っていたのは彼女が今まで身につけていた腕輪と全く同じ意匠の腕輪だった。


「ありがとうございます」


 そして、アイリスは今まで身に着けていた腕輪を外す。

 すると、その瞬間、その腕輪は砂と化してしまった。

 だが、彼女はそれに驚いた様子もなく、慣れた様に新しい腕輪を身に着ける。 


「では、これが次の計画だ」


 そして、男は計画書をアイリスへ手渡した。だが、その計画書を目にした彼女はその内容に思わず顔を上げ、男の方を向いた。


「これ、は……」

「無理だとは言わせんぞ。お前のそれがあれば難しい話では無い筈だ」


 そう言いながら、男はアイリスの腕に着けられた腕輪へと視線を向けた。

 男のその視線にアイリスは苦々しい表情を浮かべる。


「それとも、足抜けしたいとでも言うつもりか?

 あの時、我々の手を取ったのはお前自身だ。そうである以上、我々と手を切る事など出来ない事はお前が一番よく知っているだろう?」

「それ、は……」


 そう、彼等とアイリスは一蓮托生の間柄だ。ここまで来た以上、彼女は彼等から離れる選択肢はなかった。


「これで、我々の計画も最終段階に入った。やっと、ここまで漕ぎ着けたのだ。今更、足抜け出来るとは思わぬ事だ」

「……はい」


 そして、アイリスは計画書の内容の全てを頭の中へと叩き込んでいく。

 その後、内容を覚えたアイリスは計画書を蝋燭の火へと焚べた。


「覚えたな。先程も言った通り、失敗は許されん。必ず計画通りに進めるのだ」

「……分かりました」


 そして、アイリスは再びローブを着た後、この家から出ていくのだった。

これで第三章は終了です。

続けて、第四章学園襲撃編へと入ります。

また、書き溜めが完全に尽きたので、ここからは不定期更新になります。



この作品が面白いと思っていただければブクマや評価、感想、レビュー等を頂けると本当にありがたいです。

最近はモチベーションもかなり落ちてきておりますので、この機会に本当によろしくお願いします。

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