54 暗殺
ナターシャの今後を賭けた決闘が行われた日の深夜、帝都ではアクトレイテ侯爵家の屋敷へと向かっている一団の姿があった。
彼等の正体は帝都を拠点とする暗殺ギルドのメンバーだった。
そして、彼等が引き受けた依頼、それはアクトレイテ侯爵家の当主であるルドガーと侯爵令嬢であるナターシャの暗殺だ。
大貴族であるアクトレイテ侯爵家の当主とその令嬢を暗殺するとなればかなりのリスクがある。
しかし、提示された報酬の金額はそのリスクを補って余りある程に莫大なものである為、今日の依頼はまさに彼等の今後を左右するものであり、絶対に失敗出来ないものであった。
「目標が見えてきた。準備はいいな」
「「「はっ」」」
そして、彼等は目標となるアクトレイテ侯爵家の屋敷を目前にする。
しかし、その直後だった。彼等の前に突然二人の女性が現れたのだ。
「はぁ、自分の思う様に事が進まなければすぐに暗殺、考える事は皆同じなのですわね」
「それは仕方がない事かと。暗殺は最も楽に敵を排除出来ますので」
そう呟きながら彼等の前に立ちはだかるのはアルメリアとリリアの二人だった。
「まぁ、その考えのお陰でわたくしはあなたと出会えたのですから、そこだけは感謝しておりますけれどもね」
アルメリアはそう言うと、クスクスと笑う。そして、彼女は改めて暗殺者達の方へと向き直った。
だが、その一方で暗殺者達は突然現れた二人に訝し気な表情を向けた。
「お前達は、何者だ?」
「ああ、そう言えばまだ名乗っていませんでしたわね。わたくしの名前はアルメリア、隣にいるのはわたくしの侍女のリリアですわ。
わたくしの目的はただ一つ、あなた達のアクトレイテ侯爵家暗殺の依頼を阻止する事ですわ」
「……っ」
アルメリアのその言葉を聞いた暗殺者達は思わず動揺する。まさか自分達が受けた依頼やその後の動きが誰かに筒抜けだとは思わなかったからだ。
「一体、どうして……」
「どうして自分達の居場所が分かったのか、かしら? それとも、どうして暗殺の事を知っているのか、かしら?」
アルメリアの言葉を聞いた彼等は次の言葉が紡げなくなってしまう。
「ふふっ、わたくしの侍女はとても優秀ですのよ。あなた達が受けた暗殺の依頼の事は既にこの子が掴んでいますわ」
「恐縮です」
そう言いながら、リリアは恭しく頭を下げる。
そして、アルメリアは自身の影から女帝の裁剣を抜き放った。
「さて、先程も言いました通り、あなた達の暗殺はここで止めさせて頂きますわね。あの子は既にわたくしの臣下、故にあの子を害させる訳にはいきませんもの」
すると、その直後、彼等はある一つの決断をした。
「っ、お前達は行けっ!! ここは俺達で止める!!」
「「「っ、はっ!!」」」
そして、この場にいた暗殺者の半分が散り散りになり、それぞれが侯爵邸へと向かっていった。
だが、それを見たアルメリアは隣にいたリリアの方に向き直る。
「リリア、あなたには侯爵邸に向かった半分の相手を任せますわ。万が一にでもナターシャの身に危害が及ばない様に必ず殲滅なさい」
「畏まりました。姫様、ご武運を」
「ええ、あなたもね」
リリアは暗殺者達を追うべくこの場から去っていった。
そして、アルメリアは改めて女帝の裁剣の切っ先を暗殺者達へと向ける。
「さて、と。わたくしがあなた達のお相手を務めさせて頂きますわ。光栄に思いなさいな。
さぁ、わたくしと思う存分、命の奪い合いを楽しみましょうか」
そして、アルメリアと暗殺者達の戦いが始まるのだった。




